第50話【神様目線】神様と秘書子さんの作戦会議

※裏設定とかどうでもいい話なので読み飛ばしても問題ないです。

※あと、この小説の前に書いた小説のネタも含まれますがあまり必要ない情報なので無視してください。

※あと、あくまでもフィクションで、実在する地球によく似た同じような歴史をもつ神様が存在するパラレルワールドです。実際に神様がいるかどうかなんて、私も知りません。


【異世界生活 45日目ごろ】


「どうだ? みんな元気にしているか?」

俺は眠りから目を覚まし、側に控えていた秘書子さんに聞く。


「聞かなくても見えていますよね?」

秘書子さんが無感情でそう言う。


「いや、まあ、神様だから見えているけどさ、第三者からの意見も聞きたくなるだろ?」

俺は秘書子さんともコミュニケーションが取りたいんだよ。


「とりあえず、落ち着いてはいますが、異世界転生への不満は皆持っていると思います。それと、魔物の存在に違和感があるようです。とりあえず、ルールがあって仕方なく神様が降臨させたことまでは説明しました。それ以上は、他の異世界の状況なども考え、公言しておりません」

秘書子さんが事務的に報告してくる。


「そうだよな。彼らにしてみれば、理由もなく異世界転生された感じだもんな」

俺は彼らに同情する。


「しかし、獣の本能の分霊は、地球の人類の多くが受ける神の儀式であり、地球における戦争再発の防止として最善の方法と位置付けられています」

秘書子さんが当たり前のようにそう言う。


 そもそも、この、魂の分霊というのは、地球の神様の眷属? 秘書子さんみたいな『書き割りの神様』が考案した、地球人が戦争で全滅しない為の最善の方法らしい。

 人の魂から、闘争心の根源である獣の本能、遺伝子的に古代から持っている動物としての闘争心を獣の魂や遺伝子ごと引き抜いてしまい、地球では、闘争心を減らされた10分の9の魂が、異世界では兵器や大量殺りく兵器を製造することを物理的に不可能にした異世界で獣の本能である10分の1が暮らすことにより、両方の人類から、神々のエネルギーとなる『信仰心』を効率よく回収するシステムらしい。


 これが、例えば、魂を『善』と『悪』で分けてしまうと『善』だけの人類は潔癖過ぎて、生きることを放棄してしまい、全滅。『悪』だけの人類は殺し合いを始めてしまい、全滅。唯一戦争を回避し、分霊した両者とも生き残る分霊方法というのが、獣の本能の分離だったらしい。

 

「その割には地球上で戦争は続いている気がするけどな」

俺は呆れるようにそう言う。


「真祖の神、『GOD』を間接的にでも信仰している人類はどうしても後回しになってしまうのです。『書き割りの神』の存在がある地域では、分霊が積極的に進みますが、『GOD』直轄の地域ではどうしても『GOD』自身が眠りについてしまっているため、分霊の効率が悪いのです」

秘書子さんがそう言って理由を教えてくれる。

 地球で有名な宗教のうち、二つがそれらしい。『GOD』を崇める代表者が救世主か預言者かだけの違いらしく、同じ神様を崇めているらしい。まあ、そんな話を地球で人間だった時に聞いたことはあるな。

 

 で、秘書子さんみたいな『書き割りの神様』というのは、逆に『GOD』が人類の想像力に神の力を加えて作った神様のコピーで子神様や孫神様みたいな物らしい。魂がないので、無感情で『GOD』の言う通り、設定した通りにしか動けないらしい。


 要は、魂の分霊は主に『書き割りの神様の仕事』で各地域、各国の地場の神様みたいなのが、分霊作業をしていて、それがいない国は『GOD』が眠りで動けない為、秘書子さんみたいな神の秘書が頑張って魂の分霊作業をしているが遅れがちらしい。


「地球の神様は信仰心の食べ過ぎで万年食あたり中ってか?」

俺は少し馬鹿にするように言う。


「あの人口と世界の広さでは仕方ありません。宇宙の広さまで考えたら、起きられる方がおかしい世界の大きさです。そして信仰心が多ければ、神の格もどんどん上がり、神の格が上がれば神が感じる時間の流れがどんどん遅くなってしまいますから」

秘書子さんが直属の上司を弁護するようにそう言う。

 そうなんだよな。神様って仕事は、人口が多くなって、祈ってもらえる信仰心が増えると、力は貯まるけど、その分、神の格というものも上がってしまうらしくて、格が上がると神の体感時間がどんどん遅くなる。ちょっと居眠りすると何百年も過ぎているみたいなことになるらしい。地球の神様は今はもう、寝っぱなしの状態だそうだ。

 

「おっと、話が逸れたな。まあ、7人の俺の信徒たちには、疑問を持ちつつも頑張ってもらうしかないんだよな。結局、魂の10分の1は必然的に抜かれる訳だったし、この世界に転生するか、他の異世界に記憶を消されて誰かの赤子として生まれるか、その違いだけだったんだしな。まあ、記憶があるかないかはものすごく大きいか」

俺は独り言のようにそう言う。


「ああ、それと、分霊のこともあまり詳しく説明するなよ。考え方によっては、『彼らは魂の要らない部分だった』と勘違いしかねない。分霊したら、どっちもうまくいく。どっちも大事な魂だってことは理解してもらえないだろうからな」

俺はそう言って秘書子さんに笑いかける。

 こういう優しさとかも秘書子さんには覚えて欲しいんだけどな。


「一生分かってもらえない親心。みたいなものですか?」

秘書子さんがそう言う。

 この人は感情や頭で分かってないのにこういう難しい言い回しはするんだよな。そんなことを考えてもう一度笑う。


「それと、魔物の件はどうしますか? といってもどうしようもないのですが」

秘書子さんがそう聞いてくる。 


「魔物はなあ~、俺も前の世界で全能神やってた時も納得いかなかったし、勇者やってた時なんて、魔物がなんでいるの? って、感じだったもんな。全能神いるなら、全能神が魔物倒せばいいじゃん。みたいな?」

俺は過去の記憶を懐かしむようにそう言う。


「勇者ユウタ様ですか。懐かしいですね」

秘書子さんが笑ってそう言う。

 秘書子さんも最近では頭で考えて笑い顔を作ることはできるようになったんだよな。


流司りゅうじ様もそんな気持ちみたいです。魔物は神様で倒してくれよ。みたいに」

秘書子さんがそう付け加える。

 俺が初めて会った時もそんなこと言っていたな。まあ、みんなそう思うよな。


「魔物の配置については以前から言っているように、人間同士が殺し合わない為に、人間同士が戦争を起こさないようにする為のストレス装置であると何度も説明しましたし、魔物は地球で罪を犯した人間の魂や、希望を持たない信仰心を全く回収できない人間の魂、粗悪な魂を有効活用するためのシステムであり、地球の治安を維持するためにも有効な手段なのです」

秘書子さんがそう言う。


「まあ、けもみみ同士で殺し合う『聖戦』とか、神と人類で殺し合う『神の黄昏ラグナロク』とかやらされるよりはマシだけどな」

俺はそう言って懐かしむように笑う。

 ようは、別の異世界では、戦争が起きそうになる前に、神様が率先してけもみみ達を殺し合わせて闘争心を発散させたり、神様が闘争心の強すぎる人類を英雄として天国ヴァルハラに集めて神様や神様の敵という設定の存在に蹴散らさせて反省させるイベントみたいのをやっていたりする。

 日本の地獄という制度も分霊や異世界のシステムとは別に、闘争心が強すぎて悪事をした悪人を鬼という眷属神で痛めつけて魂レベルで反省させるシステムだそうだ。

 ただ、そういうイベントをすると、神様のメンタルがやられたり眷属神のメンタルがやられて廃棄処分にしなくちゃいけなくなったりして信仰心を無駄遣い、効率も悪いらしい。

 そういう理由からも神の作為的なイベントをなるべく回避する為に、戦争を起こさせる余裕をなくすために魔物を放つ。それが異世界の暗黙のルールになりつつある。


「そうはいっても魔物の元の魂も、犯罪者とはいえ、人なんだよな」

俺はそう言って、はあ、とため息を吐く。


「信仰心を捧げてくれる信徒を害し、自分たちは信仰心を理解しない。そんな存在は地球にも『GOD』にとって必要ありません。むしろ有効活用だと思いますが?」

秘書子さんがそう言う。

 この人は本当に感情がないし、上司の『GOD』の言う事がすべてだからな。

 そして信仰心の回収と俺みたいな神の格を上げることが生きがいのすべてだからな。


「感情的にも可哀想だって話だよ」

俺は秘書子さんに何度も言って理解されなかった言葉をもう一度言う。


「それと、魔法が使いづらい事にも不満を持っているようです」

秘書子さんが次の議題を出してくれる。


「ああ、あれな。俺も勇者やっていた時は本当にクソゲーだなって思ってたんだよ。この世のすべてがマナで構成されているだっけ? 人の体も、木も、石も、土も、そして火の燃えるエネルギーもマナが循環して行っている。だから、体を成長させるマナ=経験値、魔法を使う時の原動力もマナ、スキルを覚えるときの脳の成長や体の成長にもマナ。『経験値=MP=スキルポイント=マナ』あれはゲームだったらクソすぎるぞ」

俺はそう言って笑う。

 このシステムだと、本当にレベルカンストするまで魔法が使えないんだよな。


「しかし、それがマナですし、この世のすべてはマナで構成されているのですから仕方ないです」

秘書子さんが無感情にそう言う。


「たしか、『信仰心』、要は『人の願いのエネルギー』もエネルギーなんだよな? 変換すればマナになったり、マナをさらに分子や原子、物質にすることができたりできるわけだし、マナの代わりには使えないのか?」

俺は、この異世界のもう一つのエネルギー『信仰心』について考える。


「『信仰心』をエネルギーやマナに変換できるのは神のみです。人間はあくまでも信仰心を生む心を持っているだけで、有効活用する能力はありません」

秘書子さんがそう言う。

 ちなみに、人間が神になると、信仰心さえあればなんでもできてしまい、実質、不老不死なので人間だったころの願いや夢みたいなものへの渇望が欠損してしまうようで自分で信仰心を生み出すことはできなくなる。


「神様しか使えないエネルギーか。だったらさあ、魔法自体を神様が力を貸すことで発動するみたいにしたらどうだ? 銀行の口座みたいに信仰心を俺に貯金させておいて、その貯めておいた『信仰心』を俺に払うことで魔法が発動する。要はMP=マナだったものをMP=信仰心っていうステータスも作って、成長中でマナが足りない間は信仰心で補う。毎日お祈りしてもらった力を貯金として、MPとして貯めておけるシステムにしたらどうだ? まあ、欲しいものリストの商品を貰う為に信仰心を貯蓄する分からMPに分けるわけだから魔法使っちゃうと、欲しいものがもらえる日が先になっちゃうけどな」

俺は秘書子さんにそう提案する。

 まあ、ぶっちゃけ、考え方を変えるだけなんだけどな。人の祈りを神が聞いて叶えることは変わらないので、魔法という概念を中間に介すか介さないかの違いだけだ。


「確かに、マナをMPにするよりは魔法を使いやすくなるかもしれませんね。毎日の祈りを貯金=MPの回復に回して、しかも、貯められるMPに上限を作れば貯め過ぎておかしな魔法を使うなんてこともできないだろうし、MPが満タンになったら、欲しいものリストの交換のための信仰心に回るようにする。いいかもしれないですね」

秘書子さんがそういう。


すずだっけ? 鍛冶師の子? あの子だって、祈りでMPが貯まるようになれば、自分で鍛冶スキルに魔法を組み合わせて無理やり鋼を作る事だってできるようになるだろ? 俺が直接鋼を作るのを手伝ってやるより、なんか健全な気がするしな。まあ、レベルに応じて貯金できる信仰心の量を変えるっていうのはいいかもな。一生分信仰心を貯めて、神様みたいな魔法使っちゃった。世界を壊しちゃった。みたいな歴史は避けたいしな」

俺はそう言って、満足げな顔をする。


「信仰心がMPになるというシステムにすればもっと真剣に祈ってくれて、ガス欠解消になるかもしれませんし」

秘書子さんが何か悪いことを考えてそうな顔をする。


「まあ、お祈りしてもらった時の信仰心の何割かは、俺の力の回復と世界の維持にも使わせてもらってるしな」

俺は秘書子さんの悪事に乗るように笑ってそう言う。


「新しい方法での魔法の件ですが、人口が7人ならば、私が世界を管理する片手間で魔法を手伝うのは造作もないことですし、人口が増えたら、魔法を担当する眷属神とか作ればいいわけですし、不可能ではないですね」

秘書子さんがそう言う。


「人口といえば、人口を増やすためにも、子作りもっと頑張って欲しいんですけどね」

秘書子さんがぼそっともらす。

 まあ、あいつらは高校生が多いしな。生活も落ち着かないし、もう少し時間は必要だろう。


「それと、俺がガス欠で寝ているせいで、世界の管理を秘書子さんに丸投げしちゃって、悪いな。めちゃくちゃ感謝しているよ」

俺はそう言って秘書子さんに謝り、感謝する。


「もともと、そういう仕事をする為に作られた眷属神ですし、結構、あなたのような神様の手伝いができる事自体は気に入っているんですよ。おかしな発想をする割には安定した思考を持った神様。いままで、神になった勇者でもそうそういない逸材ですよ。ついてきてよかったと思っています」

秘書子さんがそう言って笑う。

 感情を理解していないんだろうけど、やっぱり笑ってくれると嬉しいな。


「とりあえず、魔物のことは内緒にして、とにかく『ルールだからごめん』で言い通すしかないな。で、みんな集まった時に、魔法のルール改訂を説明して世界ルールに加えよう。少しは暮らしやすくなるといいけどな」

俺はそう言って、力の無駄遣いを抑えるために、眠りにつく。


 秘書子さんに任せっきりで悪いなと思いつつ、お嫁さんと永遠に一緒に暮らせるようにと世界を大きく作り過ぎた俺の馬鹿さ加減を反省しつつ眠りにつくのだった。


 次話に続く

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