第28話 土器を焼こう
【異世界生活 13日目 8:00】
「おはよう、りゅう君」
「ああ、おはよう、
俺と
少しだけいちゃいちゃして、
「おはよう、
「おはよう、
俺と
「特に何もなかったわ」
そう言って、黙々となにかを作っている。
「何作っているんだ?」
俺は
「くしね。石で少しずつ削るのが面倒臭いけど、時間かければ作れそうね」
そう言って、俺に竹細工の串を見せてくれる。
まだ、くしの歯? は数本しかできていないが丁寧な作業で確かにくしに見える。
「のこぎりみたいな物があればもっと早く作れるんだろうけど。あと、石をヤスリにして削っているからどうしてもくしの歯の幅が大きくなっちゃうのが難点よね」
こういう、細かい作業を黙々とできるのは
「すごいよ、
「
そう言ってくしのようなものを
くしというより竹製の爪楊枝を竹の棒にたくさん並べて樹液と麻糸で固定した感じの物?
多分、今作っているのは自分のこだわりというか趣味で作っているくしなのかもしれない。
「ああ、これならみんなで頑張れば作れそうね。後で作り方教えてね」
「おはよう。お、いい物持っているな。私にも終わったら貸して」
やっぱりみんな女の子だし、美容には興味あるようだ。
黒曜石が手に入ったので、竹を縦に割ったり形を整えたりするのが比較的容易になったからくしや竹串みたいなものが作れるようになったみたいだ。ただ、黒曜石は欠けるのも早いみたいで刃こぼれを修復するのにまた時間がかかってしまうそうだ。
やっぱりナイフが欲しいよな。
そんな感じで雑談しながら朝食を作り始める。イノシシ肉の干し肉を茹でて戻し、山菜と炒めた野菜炒めっぽいなにか。
「
俺は気になって聞いてみる。
「ああ、薄くはがれた黒曜石があってね。それを磨いたら、透明度はそんなにないけど、サングラスのレンズみたいな物ができそうだから、竹と動物の皮を使って水中眼鏡を作ろうと思ってね」
そう言って磨いている手のひらサイズの黒曜石を見せてくれる。
なるほど。確かに向こう側がなんとか透けて見えるくらい半透明のガラス片ができている。
「いいな、魚捕りが楽になりそうだ」
俺がそう褒めると、「そうだろ?」って嬉しそうに答える
レンズができたら竹の筒に樹液で固定して竹の筒を目の周りに合わせて削って獣の皮に樹液で固定するらしい。
樹液接着剤万能だな。樹液を溶かして細かくひいた灰を混ぜるといい感じでパテみたいになることを秘書子さんに教えてもらったので試したら万能接着剤に大化けしたのだ。
なんか、何もないなりに、みんな工夫して生活をよくしようとみんな頑張っているようだ。
そんな感じで、俺と、
「おはよう」
眠そうな顔で起きてくる麗美さん。この人は、本当に駄目姉さんだな。
俺の顔を見て俺が言いたいことに気づいたのか、
「昨日は見張りの順番が真ん中だったから熟睡できなかったのよ」
麗美さんが聞いてもいないのに言い訳をする。まあ、確かに、見張り番の真ん中は前後に分けて寝ないといけないので後半寝付けない感じはあるけどな。
そんな感じで全員揃い、朝食を食べながら今日の予定を決める。
今日は、午前中薪集めをして、土器を焼く。焼いている間は暇なので、たき火で乾かした麻の繊維を叩いて麻糸にする作業をすることになった。
「
「お、
俺は気になって聞き返す。
「簡単な物ならね。本格的な物も作れるとは思うけど、それはまだ先の話かな」
裁縫や手芸がらみのことは
俺は気になって、布を織る織機の仕組みを聞いたが、下糸と上糸の切り替えの構造案を教えてもらったところ本当にすごいなと思った。そして時間はかかるだろうけど竹を根気よく削って組み合わせれば確かにできそうな構造ではあった。
「はた織機を作るときは俺に言ってくれ。俺も手伝うから」
俺は
「それと、竹がいっぱいあるみたいだし、落ち着いたら、ツリーハウスみたいに木の上に家を作った方がいいかもね。虫とか獣対策になるし」
麗美さんがそう言う。
「だったら、もう少し、黒曜石を拾った川に近いところに家を作った方がいいか? ここらへんの木はツリーハウスに向かなそうだしな」
俺は周りを見渡しそう言う。
ここ、キャンプの付近はバナナの木やヤシの木が多いし、その先の森は幹が細い、背の低い木が多い気がする。この間行った黒曜石が落ちていた川の手前に結構立派な木が生えた森があったのでそこを新拠点にするといいかもな。
「あんまり川に近いところはダメだよ。黒曜石が流れてきていたってことはたまに洪水がある川の可能性があるし」
そうだな。川沿いは一見便利そうだが洪水には要注意だ。
そんな話をしながら朝食を終え、いつもの剣道(槍術?)の特訓をしてから、俺と
なんか、みんなに必要とされて、円の中心にいる
なんか、神様もそういう事を考えて、現実世界で不完全燃焼な俺達を選んだんじゃないかって気がしてきた。
お互い好き合っていたのにもう一歩が踏み出せなかった、俺と
医学への興味と父親の死に対する使命感が極端すぎて、生活能力ゼロで生活破綻しかけていた俺の家庭教師の麗美さん。
ギャルのふりをしているけど、本当は地味な性格で人との付き合いが苦手だけど、人一倍寂しがり屋で、本当は人一倍構って欲しがり屋で孤独だった
なんだかんだ言って、この世界に来て、みんなで助け合って、救われている気がしてきた。
「どうしたの? りゅう君」
一緒に薪を集めていた
「いや、この世界に無理やり連れてこられて、最初は戸惑ったけど、結果的には良かったんじゃないかなって思ってね。多分、向こうの世界じゃ、俺と
俺はそう言う。
「そうだね。りゅう君も私もこっちの世界に来て、急に積極的になったし、りゅう君、なんか男らしくなった。こっちに来てからのりゅう君も好きだよ」
確かに向こうの世界じゃ、俺、なんかうじうじしていたもんな。
俺もそう思って
「はいはい、新婚さん達、いちゃいちゃしてないで薪を集める。いちゃいちゃしていると、お姉さん邪魔しちゃうぞ。そろそろ
麗美さんがからかうように俺達に言う。
「そうだね。たまには、りゅう君と
「いいのか?」
俺は
「正妻の余裕? というか、やっぱり、みんなにも幸せになって欲しいかなって。ここはそういう世界なのかもなって、自分と折り合いがついたというか、りゅう君が私の事一番好きって言ってくれれば
折り合いをつけた。難しい言葉だな。納得したわけじゃないけど仕方ないみたいな心境か?
神様が男同士で喧嘩しないようにと男を一人だけ召喚、俺を中心にハーレム化したこの異世界。女の子たちはそれぞれ納得できない部分はあるだろうな。俺がそれを理解しようとする努力をして、謙虚にしなければ、だれか女の子の心に負担がかかってしまう。特に
そんなことを考えながら何度か森とキャンプを往復して薪を集める。なるべく乾いた、倒木や折れた枝をかき集める。それと、
薪が集まったので、早速土器を焼いてみる。
藁の様な枯れ草を山にしてその周りに土器を並べてさらに枯草をかぶせる。その上に薪を積み重ねて着火。薪にぶつかったり、土器同士がぶつかったりして割れないように気をつけて並べた。
初めは、弱火で焼き、だんだん強火に、半日焼いたら出来上がりだ。
土器を焼き始めたころに、ちょうどお昼の時間になったのでお昼ご飯を食べる。
「土器、ちゃんとできるかな? ちょっと楽しみだね」
「そうだな。まあ、初めてだし、ダメもとでやった感じだし、何割か残ればいいかなって感じでいいんじゃないか? 将来的には陶器みたいな本格的な器とかもつくりたいな」
俺はそう言う。将来的には
とりあえず、俺も土器がちゃんとできるか楽しみだ。
次話に続く。
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