第27話 黒曜石の試し切りと真望の気持ち
【異世界生活 12日目 15:00】
獲物を探して進む俺と
とりあえず、飲み水を汲むために泉に向かう。
「結局、槍も弓矢も使わないまま、泉に着いちまったな」
俺は
「まあ、帰りもあるから」
「それじゃ、とりあえず、水を汲んで、粘土を採り行って、さっさと帰り道に獲物をさがさないと。それとも、粘土を先に取り行くか? 汚れてから水浴びの方がいい気もするし」
俺は
「ああ、粘土は今から私が採りに行ってくるよ。1時間くらいかかるから、その間、
「は? 何言っているんだ?」
「そうよ、私と
俺と
「二人とも、そして私も気づいているんだよ。この世界に呼ばれたってことはお互い無意識でも好き合っているってね。そのあたりは、早めに認めてしまった方が楽だぞ。だから、今日のこの時間を作る為に麗美さんも協力してくれたって事。まあ、
「そ、そうなのか?」
俺はおそるおそる聞く
「っぅぅ!! そ、そうよ、悪い? 好きでもない男の子と彼氏彼女のふりとかする訳ないじゃない!! 頭が悪いのに頑張って、偏差値足りない高校受ける訳ないじゃない!! 好きな男の子を振り向かせるために高校入ったらお化粧とかファッションとか髪型とか考えていっぱい努力した事、気づいて欲しかったの!!
そして徐々にいかり肩だった肩を下ろし、小さく縮んでいく
「好きになっちゃったんだから仕方ないじゃない。私を見てくれていたのが
まるで、中学生のころの
「
俺はそう言って
「そう、変わってないの。地味で、人と話すのが苦手で、教室の隅に埋もれてしまうような女の子。それでも私を見てくれていたのが
俺は、中学生の時、同級生の
「同じ高校に入れなくて、
そう言って自分を自嘲するように笑う
「俺は今の
俺はなんて声をかけていいか分からず、そう言うしかなかった。
「それって、友達として好き。だよね?」
「ごめん。俺にとっての一番は
俺はそういうしかなかった。
「
「そうだな、
俺はそう答えるしかなかった。
その答えを聞き、
「あんたの気持ちは分かったわ。それに私の気持ちも整理できた。そしてこの世界のルールも」
突然口調の変わる
「私は
いつもの高飛車で勘違い系なギャルの
「
俺はそう言ってもう一度、無理やり抱きしめる。
「じゃあ、今だけ、今だけでいいから、嘘でもいいから、相思相愛な彼氏のふりをして。多分それで、明日からも頑張れると思うの」
弱々しく、素直な
俺も吸い寄せられるように
そして、
☆☆☆☆☆☆
「
二人で泉に浸かりながら、
「なんか、すまない」
俺はなんて答えていいか分からず謝る。
「いいの。私が
「それに、
SNS上の嘘の彼氏という立場よりはマシになったかもしれないがセックスフレンドは厳しいな。
「あと、普段、尻尾と耳を触るの、絶対禁止だからね!」
尻尾を撫でたり耳を噛んだり耳の中を触っただけで、気持ちよさそうに何度もイッていたくせに。まあ、俺も触っていて気持ちよかったけど。
【異世界生活 12日目 17:00】
俺達が水浴びをして着替え終わるころ、
「
俺はそう声をかける。
「なんだ、それは、私も誘っているのか? 私ともイチャイチャしたくなったか?」
「違う、違う、そう言う意味じゃない。純粋に粘土掘ってきて汚れただろって話なだけだ」
俺は全否定する。
「分かっている。とりあえず、水汲みとイノシシの毛皮を洗ってからな」
「
俺は、何も言い返せなかった。
とりあえず、イノシシの毛皮を下流の皮で洗っている間に
「結局、獲物がいなかったな」
「まあ、時間も遅かったし。これ以上粘ると暗闇の中で猛獣と戦うことになるしな」
俺はそう言って周りを見渡す。
キャンプのそばまで帰ってきたが結局、イノシシはおろか、鳥の1匹も見つからなかった。
まあ、昨日、イノシシ肉も補充できているし、
「
突然、叫ぶ
そして、俺のすぐそばの茂みから何か大きなものが飛び掛かってくる。
俺は反射的に持っていた槍で大きな動物らしきものから身を庇う。そしてその重さと勢いで地面に倒される。
「
俺の上に覆いかぶさってきたのは、大きなオオカミ。2日目に襲ってきたオオカミの生き残りか?
風下から音を立てずにやってきて潜んでいたってことか? 3人とも耳が生えて五感が研ぎ澄まされたはずなのに誰も気が付かなかった。
「
傷が浅いが、オオカミは警戒して俺から飛び退く。俺も急いで立ち上がり槍を構える。
そして状況判断すると、オオカミは2匹。
「これじゃあ、弓矢の出番がないじゃないか」
何故かはわからない。レベルが上がったせいなのか、オオカミの数が少ないせいか、最初に会った時よりなぜか心に余裕はある。
「
俺は
オオカミは俺に襲い掛かるか、
俺はバックステップをし、距離をとりながら槍の柄の方を大きく横に薙ぐ。
オオカミの横っ面を槍の柄で殴り付けオオカミが一瞬怯む。
その隙を逃さず、矢の柄の方、元々黒曜石をつける前は槍の先であった尖った木の先でそのままオオカミの首のあたりを刺す。
「
俺がそう言うと、
そして
俺に2匹で同時に襲い掛かろうとして
「あー、俺、黒曜石の切れ味確認できなかったよ」
俺は槍の反対側で突いてしまったことを後悔する。
「なかなかいい切れ味だったぞ」
慌てる
「ああ、大丈夫だ。今から毛皮剥ぐからその時に取り出すから」
俺はそう言って首に一突き、致命傷を与え様子を見る。
「え~、毛皮剥ぐの?」
「オオカミは食べられるらしいぞ。犬を食べる国もあるくらいだからな」
「食べるのか?」
「あくまでも、食べられるってだけだ。さすがに食べないだろ?」
俺はそう言って、オオカミが動かないことを確認すると毛皮を剥ぎだす。
「なんかちょっと可哀想」
「まあ、サバイバルだから仕方ないと納得してくれ。それに、この島、今は温かいけど、冬もあるらしいからな。備えは重要だぞ。」
俺は
毛皮以外の部分を全能神様にお祈りしてマナに還す。4分の1が経験値として帰ってくる。魔物だと2分の1、動物だと4分の1ルールが意味不明だ。
そして、俺の経験値が貯まり、レベル9にレベルアップした。
キャンプのすぐそばだったので、そのまま帰り。
昨日捕ったイノシシもいい感じに干し肉として乾かされているし、あれから一生懸命塩を作ってくれたらしい。しかも煮詰めた海水をろ過する為に、繊維にした麻で簡単な麻布も作ったらしい。
「やっぱり、麻布と土器は早急に必要だな」
俺がそう言う。
「土器と言えば、たき火で乾かしてみた土器を焼いてみたらどうかな? 結構乾いていると思うけど」
この数日、麻の繊維と土器の一部をたき火で乾燥させているのを思い出す。
「そうだな。明日あたり焼いてみるか?」
俺はそう答える。天日で1週間ちょい、たき火で2日ほど乾かしたので行けるかもしれないな。
「それと、たき火用の薪もだいぶ減ってきたし、明日は薪集めをしてから土器を焼こう」
俺がそう言い、明日の作業も決まって、夕食をとる。
イノシシ肉の脂身が多い部分、干し肉にならない部分を食べきる。
食後は各自思い思いの作業をして、歯磨きをして、日課の神様へのお祈りをして交代で寝ることにする。今日の見張りは、
「りゅう君、
「知っていたのか。
俺は
「りゅう君にとって私が一番ならいいよ。神様の思惑を考えると、私だけって訳にはいかなそうだし、他の女の子もりゅう君のことが好きだってなんとなくわかるし。ちょっと寂しいけどね」
なんか、
「りゅう君は女の子に興味ないような顔して、女たらしだからね」
「でも、こんな世界に来ちゃったせいか、他の女の子にも幸せになって欲しいかなって気持ちも出てきちゃって難しいよね」
俺も
俺も何も言えないまま、
こんな世界に、変な神様のせいで理不尽に連れてこられてしまった女の子達。ちゃんと心のケアも考えないといけない時期なのかもしれない。
次話に続く。
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