第14話 お鍋(縄文式土器)を作ろう

【異世界生活 3日目 20;00】


「もう夜の8時か。結構時間ないな」

俺はステータスウインドウの時計を確認してそう言う。


「少しだけ作って、残りの粘土は葉っぱに包んで日陰にでも埋めておけば大丈夫じゃないかな?」

そう言う、明日乃あすの

 

「そうだな。今日は急ぎ必要な鍋になりそうな土器だけ作ってさっさと寝よう」

そう言って俺は明日乃あすのに土器の作り方を聞く。

 一角いずみも作るらしい。


 とりあえず、1日でも早くお湯を沸かせる鍋のようなものが欲しい。そんな気持ちが3人の気持ちを焦らせ、たき火の周りで薄暗い明かりに目を凝らせながらの土器づくりを強行する。粘土が渇いて使い物にならなくなる怖さもあったし。


 そして、何故かはわからないが、夜でも結構目が見える。夜目っていうのか? 多分だが、俺は獅子の耳、明日乃あすのは兎の耳、一角いずみは狼の耳が生えて、夜行性の動物のせいか暗い中でも物が見やすくなったようだ。

  

「とりあえず、粘土と砂を同じ量ぐらいで混ぜてよくこねるの。砂を入れると見かけはよくないけど焼くときに割れにくくなるらしいよ」

明日乃あすのがそう言って、粘土と、俺がもう一度地層のある崖まで行って集めてきた砂を同量混ぜてハンドボールくらいの粘土を作り作業台のような平らな岩の上でこねだす。

 俺も一角いずみも見よう見まねで砂と粘土を混ぜて同じような粘土の塊を作りよくこねる。

 3人でたき火の周りに集まり、薄暗い中で粘土をこねる。なかなかシュールな夜の光景だ。しかもガチの自然界で電気の光もないので本当に周りは真っ暗で、けもみみ効果で夜目が強化されていなかったら本当に何も見えないかもしれない。


「で、よくこねたら、空気を抜く作業。回しながら空気を押し出すように伸ばして回して伸ばして、なんて言ったらいいのかな? 手揉み洗いの洗濯とピザの生地作りを混ぜたような感じ?」

そう言って明日乃あすのは器用に粘土のたまをつぶして伸ばし、少しずらして伸ばし、を繰り返し、真ん中がへこんだフリスビーというかお盆というか何かよく分からないものを作っている。イメージは、粘土の塊を内側から外側に押し出しながら体重をかけて、まさに空気を抜く気持ちで押して伸ばして少し回転させて伸ばすという作業を繰り返し、ドーナツのようなわっかのようなよく分からない粘土の塊を作る。

 そして、空気が入らないように一度まとめで同じことを繰り返す。空気が抜けるように意識して。

 なんかこれをやらないと焼いた時に粘土の中に残った空気が膨張して土器が割れてしまうらしい。

 明日乃あすのの見よう見まねで粘土の空気を抜く俺と、一角いずみ。俺の場合、頭の中で秘書子さんがやり方やコツを教えてくれるのでそれに従ってこねていく。一角いずみ明日乃あすのにもアドバイスしながら。


「そろそろいいかな?」

明日乃あすのがそう言い、何度か空気抜きの作業を繰り返し、しっかりこねて空気を抜いた粘土に満足する。秘書子さんも多分大丈夫だろうと太鼓判を押してくれた。


「次は、作業するところに大きな葉っぱを引いて、その上で土器を作るの。土器を回せるように、葉っぱがろくろの役割だね。で、一握りの粘土を取って平らに丸く伸ばして土器の底作り。で、残りの粘土は、紐状にして、準備完了。あとはこの紐状の粘土を底になる粘土に押し付けるように圧着させて、ヘビがとぐろを巻くように、巻いていって、紐状の粘土同士をつなげるように圧着、平らになるように引き伸ばしながら器のような形にして出来上がりだよ」

そう言って紐杖の粘土をくるくると円形に重ねていき、なんとなくお皿っぽいお鍋っぽい形を作っていく明日乃あすの

 なるほど。なんか昔テレビで見た陶器の作り方みたいな感じか。俺も真似て、とぐろのように巻きながら、底の粘土と圧着、終わったら紐状の粘土同士を圧着、平らにする。その繰り返しでどんどん鍋の高さを高くしていく。


「で、時々平らな木とか石で叩いて平らにすると空気が抜けるし割れにくくなるらしいよ」

そう言って明日乃あすのはできた土器をぺしぺし叩いて表面や内側を平らにしていく。最後に水を手につけながら内側と外側の粘土表面を滑らかにする。これをやらないと水漏れする土器になってしまうそうだ。

 2時間半くらいで3人とも土器が出来上がるバケツのような形の、上が少し広くあいた土器が3つ出来上がる。


「これを日陰で2週間以上かけて乾燥させて、乾燥したら、焼いて出来上がりだよ」

明日乃あすのがそう言って壊さないように低い木の木陰になりそうなところに土器を移動させる。

 俺達もそれに従い、移動させる。


「これ、雨とか降ったらだめになりそうだから、水はけ良さそうな岩の上にのせて、屋根とかも作った方が良いかもしれないな」

俺がそう言うと、


「そうだね。私たちが寝ている草と木で作ったシェルター(家)の少し小さい版を作っておくといいかもね。少し屋根をしっかり作って雨漏りしない感じの奴?」

明日乃あすのも賛成したので俺は低い木の木陰で岩があるところに低い木自身も利用して枝と葉っぱで小さいシェルター(家)を作る。そして雨漏りがしないように大きくて丈夫なはっぱを少し多めに重ねて屋根にする。

 雨が降らないにしても、湿度が高くなって夜露で朝起きたら土器がドロドロに溶けてたなんてことになっても悲しいしな。この南国みたいな無人島で夜露が降りるかわからんけど。

 とりあえず、万全を期して屋根の下で土器を乾かすことにした。


「うん、いい感じ。あとは2週間後に焼いて割れなかったら大成功」

明日乃あすのが嬉しそうにそう言う。俺もなんか達成感を味わう。


「時間があったらコップとかお皿とかも作りたいな。あと、飲み水運ぶ壺みたいなのも欲しいな」

俺は思いついたことを言う。


「そうだね。残った粘土と砂で、明日の午前中は土器づくりかな? お鍋も、今日作ったのが全部割れちゃったらガッカリしそうだからもう3個くらい鍋っぽい土器作って、残りの粘土で壺とかお皿とかコップも作るといいかもね」

明日乃あすのが明日の予定を決める。

 そして土器づくりが終わったら午後は一角いずみ明日乃あすのの二人で水浴びに行って帰りに山菜を取って帰ってくるらしい。

 俺の明日の予定は石のなたの研ぎ直しや竹の加工かな? 竹の水筒はいくらあっても足りなそうだしな。


 そして時計を見ると、夜の10時。


「もう10時か。昨日と同じ感じでいいか? 明日も朝8時起きで10時間を3交代で見張りしながら睡眠をとる感じで。今日は俺が真ん中の時間の見張りをやるよ」

俺はそう言って順番を決めていく。

 今夜は最初に一角いずみが見張りをして、2番目が俺、3番目が明日乃あすので3人とも6~7時間寝られる計算だ。


「そう言えば昨日も今日も動物こなかったね」

明日乃あすのがそう言う。


「多分、この間倒したオオカミの群れのテリトリーがこのあたりなんじゃないか? で、群れを半壊させたから静かにしている感じで他の動物も近寄りがたいみたいな感じか?」

一角いずみがそう言う。


「まあ、残りのオオカミが仕返しに来るかもしれないから警戒は必要だろうな。各自、見張りの時に何かあったらすぐにみんな起こせよ。あと、雨降りそうになったら干し肉も回収してシェルターで雨に濡れないようにしてくれ」

俺がそう言いい、2人も頷く。

 そして、水筒の水と噛んで歯ブラシ状にした枝で歯磨きをして寝る準備。やっぱりこのあたりは現代人の名残だよな。歯磨きしないとなんか不安になるのは。あと、飲める水があるっていうのは本当にありがたい。明日、明日乃あすの一角いずみが水浴びに行くときに飲み水も汲んでもらってこないとな。


「りゅう君、一角いずみちゃん、神様にお祈り忘れてるよ!」

寝る気満々だった俺に明日乃あすのが慌てて声をかける。

 ああ、すっかり、忘れていたよ。まあ、頭の隅には薄っすら残ってはいたが。


「ああ、そんなのもあったな」

一角いずみは頭の隅にも残ってなかったようだ。


 俺は心の中で、仲間が無病息災、怪我もせずに過ごせますように。と神様にお祈りする。

 あと、戦闘出来そうな仲間をもう1人ください。とお願いしておく。

 2人組が2つなら大分行動範囲も広がるし、安心感も違うもんな。

 まあ、神様、エネルギー切れらしいから、当分先っぽいけどね。


 最初の3時間は一角いずみが見張りをするので明日乃あすのと俺が寝る。

 3時間寝たら、俺と一角いずみが交代。一角いずみは見張りをしている間に石で作ったフライパンモドキのくぼみを削ってさらに深くしていい感じにしていた。

 俺は俺で、たき火の番をしながら、竹を切る為の石のなたを研ぎ直す。二本のなたを研いで、石斧も砥いだところで明日乃あすのが起きてくる。

 そして明日乃あすのと交代だ。


 自分のシェルター(家)に入って雑草のベッドに横になり眠る。すでに前半で3時間寝ているので目が冴えて眠れない。

 

 そして、ごそごそと、入口のドア代わりの葉っぱが揺れると、


「りゅう君、今日も寂しくなっちゃった」

明日乃あすのが恥ずかしそうな顔で、そして何かを期待する顔で俺のシェルターに潜り込んでくる。


 俺も仕方ないな、って顔をしながら仰向けで、両手を広げてやると、嬉しそうに俺の胸に飛び込んでくる明日乃あすの

 もう、何回もキスをして、何回も抱き合っているのだけれど、これに関してはいくらやっても飽きる気がしない。

 俺はそう思いながら明日乃あすのの柔らかい体を抱きしめ、明日乃あすのを堪能する。明日乃あすのも嬉しそうに抱きつき、唇をせがむ。


 この1時間が毎晩の日課、そしてお互いの楽しみになりつつあるな。


 次話に続く。


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