第9話 とりあえず、安全なキャンプができた? そして焼肉パーティ!?
「まあ、規模は小さいけど、比較的安全にはなったかな?」
俺はそう言って俺たちの家の周りにできた柵を見渡す。
棒を地面に打ち込み立てて、棒の間に横に枝を3~4本、荒縄で縛って固定した感じの牧場の牛や馬を囲う柵の簡易版みたいな柵だ。
まあ、相手は野生の動物なので、一瞬怯ませたり、警戒させたりするくらいの効果はあるだろうが、完全な防備とはほど遠い。あくまでも時間稼ぎの柵だ。隙間をくぐられたり、飛び越えられたりする可能性も高い。
まあ、無いよりは断然マシで、四方八方から迫られて包囲されて一斉に襲われるみたいな危険性は軽減できるとは思う。
「できれば木の板で防壁みたいなものが作れればいいんだけどな」
俺はそう言う。
「まあ、そこまで作れるような材料や労働力がそろったら、ツリーハウスみたいな木の上に家を作る感じの方が速いし安全かもね」
「そうだな。あくまでも、人手不足の苦肉の策。将来的にはもっと安全で家らしい家を作りたいもんな」
俺は
まあ、今の3人と道具では作れる家のレベルもたかが知れているが。
今のところは、簡易的な家でしのぎながら素材探しと、島の探索、後は道具の充実だろうな。とにかく、水と水を沸騰させられるような器が欲しい。
「予想通り、柵づくりまでで1日終わってしまったな」
「静かに、何かいるよ」
突然、
耳は
ガサッ、ガサッ
大きなものが藪をかき分けるような嫌な音がする。
「オオカミではなさそうだな」
そして3人とも自衛用に作った槍を構える。槍と言っても昨日同様、先をとがらせただけの長い木の棒だが。
「元の世界で使っていた弓と矢が欲しいな」
「
俺は
そして、一応、
「鑑定」
俺は
名前:いずみ
職業:弓使い見習い
レベル 7(ステータス合計49)
ちから 12
すばやさ 10
ちりょく 4
たいりょく 13
きようさ 10
信仰心 低
HP 13
マナ/レベルアップに必要なマナ 9/49
スキル使用枠/スキル習得可能枠(0/49)
スキル
①生活級 初歩弓術(0) 初歩格闘術(0)
初歩剣術(0) 初歩杖術(0)
初歩短剣術(0)
こいつ俺よりレベル高いし、強いな。
そして弓矢がないのに弓使いって。将来的には弓矢を作ってやらないとな。
しかも、色々スキルもってやがる。現実世界の特技を引き継いだ感じか?
槍の使い方がやたらうまかったのはこの杖術のスキルって事か。
それに比べて俺はスキルゼロとは・・・。確かにバスケットボールなんて異世界じゃ役に立たないもんな。
「スキルは訓練などをすることで身につけることができます」
突然、解説役の秘書子さんが声をかけてくる。
「そうなのか?」
俺は頭の中で秘書子さんと会話する。
「剣術の訓練をして一定の技術や体さばきが身に付けばスキルとして習得されます。また、動物たちとの戦闘を繰り返すことで戦闘のスキルを習得する可能性があります。ただし、スキルを習得する能力があっても本人が認識していない場合スキル表示されません。たとえば、バスケットボールも投擲スキルになります」
秘書子さんがさもバスケットボールを知っているような口調でそう教えてくれる。
「もちろんバスケットボールの知識は持っています。
秘書子さんが俺の考えを読んで返事をする。
バスケットボール知っているのか? というか、どこの世界出身の神様なんだ? この神様達? 元の世界出身なのか?
俺は神様達がやたら元の世界に詳しそうなので存在自体を少し疑ったが、まあ、俺達をみつけて転生させたくらいなんだから向こうの世界の知識があったもおかしくないか。勝手にそう解釈する俺。
とりあえず、投擲スキルというものを手に入れたので、早速活用させてもらおう。
そう思い、槍を地面に突き刺し、代わりに、足元にあった手ごろな大きさの石を抱える。
「どうした?」
急に槍を手放したので
「なんか、秘書子さんの話だと、バスケットボールの技術が投擲スキルになっているらしい。槍で突くより石を投げた方が初手は強そうだからな」
俺はそう言って片手でもギリギリ投げられるくらいの大きさと重さの石で投げる構えをしてみる。
「当たるといいけどな」
ちくしょう、今に見ていろよ。
「出てくるよ。二人とも」
俺も音の方を睨みつけるように集中して見ると、茶色い大きな生き物。
「イノシシだ!」
俺は声を上げる。
イノシシも藪からでて、視界が開け、こちらを始めて認識できたのか、急に驚き、興奮しだす。
「二人とも気を付けて。イノシシは体重もあるし、突進力もあるから、人間くらいの体重だと簡単に跳ね飛ばされるよ。しかも牙があるからそれだけで大けがする危険性があるからね。あと、結構知恵もあるから、柵とか潜り抜ける危険性あるからね」
俺もイノシシを観察するが、想像していたより牙が小さいというかほとんどない。そしてめちゃくちゃ気が立っているようだ。
「メスだね。私たちの家を見て、みたことない物に興奮しちゃったかも?」
一応、動物相手に鑑定できるか試してみると簡単なステータスはでた。
なまえ レッサーボア(メス)
レベル 8
イノシシでも弱い方
力が強く足も速く毛皮が厚く防御力も高い
特に突進には注意が必要
知恵も少しある
なんか無難な鑑定結果が出たな。
そしてレッサーボア? 弱いイノシシ? もっと強いイノシシとかいるってことか?
「メスでも突進力はすごいから跳ね飛ばされて骨折とかしちゃうから気を付けて」
俺はそんなことを考えながら対策を考えるが思いつかない。思いついたことと言えばさっき手に入れたスキル『投擲』で石を投げて倒す事くらいか。
そして、悠長に考えている時間もないようだ。興奮したイノシシが突進してくる。しかも、かなり知恵があるのか柵の隙間、自分がギリギリくぐれそうな隙間を狙って突っ込んでくる。
俺も手に持った石を構え振りかぶり、イノシシが柵を潜ろうと一瞬足を止めたところで、イノシシの脳天めがけて大きな石を投げ付ける。
ガツッ、っと大きな音がして大きな石がイノシシの脳天に見事にあたる。そして、倒れる。
「ナイスだ。
イノシシの毛皮もその下の皮や肉も厚く硬いようでかなり苦戦してそうだ。
俺は別の、もっと大きい石を探し拾い上げると、イノシシに駆け寄り近い場所から石を投げるというより上からたたきつける。
グシャッ、っとさっきよりさらに大きな音を立ててイノシシの頭が割れ絶命する。
「倒したな」
「ああ」
俺がそう言うと
「これって、もしかして、動物のお肉が食べられるんじゃない? 癖や匂いはあるかもしれないけど、豚肉だよ。多分豚肉だよ」
「そういえば、秘書子さん、俺達、石包丁作ったんだけど、イノシシ上手く解体すること出来るかな?」
俺は前回オオカミの毛皮を解体できなかったことを思い出し秘書子さんに聞いてみる。
「時間はかかると思いますが可能だと思います。私の指示に従っていただければ毛皮や肉を解体するスキルも身につくと思います」
秘書子さんが無感情だが自信のありそうな口調でそう言う。
「二人とも、秘書子さんがレクチャーしてくれるらしいからイノシシ解体できるぞ。毛皮は毛布替わりや服の代わりになりそうだし、慎重に解体しよう」
俺はそう言って秘書子さんにイノシシの解体法を聞きながら解体していく。
「なんか、ゲームとか異世界物小説だと、魔物が消えて素材だけが残るみたいに簡単なのにね」
「そうなるとまさにゲームだな。残念ながら秘書子さんの話だと、解体しないと全部神様のところに行って経験値にされちゃうらしいからな」
俺はそう言って笑う。
「毛皮とか使えそうだし、お肉も食べたいし、3人で頑張って解体しよ?」
とりあえず、水を沢山使って洗わないとダメっぽいので太い木の棒にイノシシをくくり付けて、俺と
俺はそんなことを考えつつ重いイノシシを担ぎ、海岸をめざす。
海岸に着き、まずは血抜き。秘書子さんに指示されながら、イノシシの胸のあたりに石包丁で穴を開け、肋骨の間から石包丁を差し込み心臓に穴を開ける。
そして、
俺たち二人がイノシシと格闘している間、
その後、イノシシの外側を綺麗に洗う。毛皮も素材として残したいので綺麗に洗う。面倒臭いので、海に放り込んで、ヤシの実の殻をたわし代わりに、わしわし、洗う。ノミとかいるらしいので何度か洗わないとダメだろうな。
とりあえずきれいになったところで、さっき血抜きの為に開けた胸の穴から皮と脂肪だけ、内臓まで貫通しないように気を付けながら、腹を開く。肋骨は石斧などで無理やり開いて肋骨の中、腹の中の内臓を破らないように丁寧に取り除く。肉や骨とつながった筋を丁寧に切りながら腹の中から内臓を取り出す。取り出せたらお腹に残った血を海水で洗って、内臓の取り出し完了。
汚染とか食中毒とか怖いので内臓は捨てる。というか、後で全能神様にマナとして返して経験値に換えてもらうので、海岸に放置しておく。プロの狩人とか料理人だったら色々使えるのかもしれないけどあいにく俺は素人だ。
とりあえず、ここまで石斧と石包丁でよく頑張ったw まあ、ほとんどプロの狩人みたいな知識を持った秘書子さんの指示のおかげなんだけど。
あと、俺が親父に魚のさばき方を仕込まれていたのも生かされた。
仕込まれたというより、親父と二人で魚を釣りに行って、魚を持って帰ってきても、魚を触るのと台所を汚されるのが嫌なお袋に家から追い出されて、庭の水道で親父と二人で魚を捌く。それを何度もやったから覚えてしまったというのが正解なのだが。まあ、魚捌くと魚臭くなるし、鱗は飛び散るし、お袋の気持ちも分からなくもない。
内臓を取ったところで、次は毛皮を剥ぐ。秘書子さんに言われるまま石包丁で皮を剥いでいく。魚の場合、大抵、骨から身を外してから皮を剥ぐので逆で、なんか違和感があるが秘書子さんに言われるまま毛皮を剥ぐ。
日も暮れて、真っ暗になってしまった。
3時間以上か? 結構時間がかかってしまったが何とか毛皮も剥ぎ終わり、もう一度海水でイノシシの身の部分を洗い、
今回、俺たちは素人なので、肉を骨から綺麗に外すというより、食べられそうな部分を外していく感じだ。実際、全部綺麗に外したとしても、冷蔵庫の無いこの世界では腐らせてしまうだけなので頭の近くとかよく分からない部分や骨から外しにくい部分は触らずにそのまま捨てる。いや、経験値に換える。
とりあえず分かりやすい後ろ足を外し、もも肉を確保、似たような前足の肩の部分も確保。前足、後ろ足を外した。
そのあと、背骨や肋骨から肉外しをする。首の方から肩ロース、背中のロース、ヒレを外し、最後にバラと肋骨の周りの肉を外す。
「すごいね。いっぱいお肉とれたね」
「でも、冷蔵庫とかないからな。海水で洗いながら全部焼いて、食べきらなかった肉は海水の塩で乾燥肉モドキを作る感じかな?」
俺はそう言う。海水の塩分で乾燥肉が作れるか怪しいけどな。
「やっぱり塩、しかもできるだけたくさん欲しいよね。実はいま、くぼんだ石をお鍋代わりに海水をたき火の熱で蒸発させて塩作っていたんだけど、お肉にちょっと振って食べるくらいの量しかできなかったよ」
そう言って、ヤシの木の殻のお皿に少しだけ集まった塩らしき調味料を見せてくれる。
なるほど、
「まあ、今日は海水何度もつけて焼く感じかな。海水味みたいな? 竹と川の水と土器を作る粘土が確保できて鍋代わりの土器がつくれるようになったら塩づくりもしよう」
俺はそう言って、今日はとりあえずイノシシの肉を木に突き刺して海の水をかけてたき火の周りに刺していく。大きい肉塊は3人で協力して、石でかまどを作ったり、木の枝を組んで丸焼き用の三脚のようなものを作ったりして上手く肉を焼いていく。
時々味付け代わりと、じっくり中まで焼くために、海水を潜らせてたき火で焼く。肉の量が多すぎて気づいたらたき火が4つになっていた。
「なんかすごい量だね。やっぱり余った肉は干し肉かな? 脂身は干し肉にすると不味いらしいから、脂身多い肉は今日明日で食べちゃって、赤身を干し肉にしようね」
「
俺はそう言って串に刺して地面に突き刺して焼いていた豚バラ串を
「そろそろ良さそうだね。豚バラとロース、肩やモモの脂の多いところは今日明日で食べちゃわないとね。ヒレ、モモ、肩ロースの赤身の部分は食べきらないから干し肉かな?」
今夜は焼き肉パーティだな。次いつ食べられるか分からないから食べられるだけ食べておかないと。
イノシシの解体に時間がかかり、深夜近くなってしまったが、3人とも、特に俺と
次話に続く。
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