第10話 焼肉食べたら明日は探索だ(明日乃の告白)
「お塩、少しだけど、よかったら使ってね」
イノシシのバラ肉で作った串焼きに少しだけ塩をかけて頬張る。
「豚バラ串みたいで美味ええ〜」
思わず感動で叫んでしまう。
「久しぶりのお肉、美味しいね」
「少し臭みがあるし、硬いが、美味いな。あと、できれば塩味がもう少し欲しい」
「
俺は
「
そうだよな。窪んだ石をフライパンがわりに手間はかかるけど塩は作れるようになったし、余った赤身の部分を干し肉にしたいし、明日もやることいっぱいだな。くぼんだ石を石で擦って削って簡易お鍋作るのもいいかもしれないな。
「
俺はイノシシ肉を頬張りながらそう提案する。
だが、
「だ、だめだよ。明日は、絶対、川探すの! これ以上、お風呂入れないのは無理! りゅう君に臭いとか思われたらやだもん」
少しおこり気味に却下の意思を示された。
「お水飲みたいし、竹があれは水筒作れるし、お湯も沸かせるし、粘土も川の近くにあるんでしょ?」
「だったら私が、ここで干し肉作りと塩作りをするから、2人で川と竹を探しに行けばいい」
「3人しかいないのにバラバラに行動するのは不味くないか?」
俺は
「陽が高いうちは大丈夫じゃない? ヤバくなったら魔法のチャット機能もあるんでしょ? ヤシの木にでも登って助けを待つわ。もちろん、
「
「まあ、干し肉作ってくれるのはありがたいけどな。本当に危なくなったら魔法で連絡しろよ」
俺はそう言って
せめて、もう一人、戦える仲間がいると2人ペアで活動できる。できれば安全性も考えると、3人組を2組で活動したいよな。
そしてツリーハウスは難しいかもしれないけど『避難やぐら』みたいな緊急時に木の上の台に逃げる見張り台っぽいものはあるといいかもしれないな。
そんなことを考えながら和気あいあいと焼き肉を食べる。美味しいものがあるとやっぱりみんな幸せな気持ちになるな。
「うーん、もう食べられない」
「俺も無理だ」
そう言って地面に寝転ぶ
「残った肉はどうする?」
俺は寝転びながら顔だけ
「少し休憩して落ち着いたら深めの穴を掘って葉っぱでくるんで埋めておこう。匂いでクマとかオオカミとか集まったら嫌だしな。で、脂身が多い肉は明日の朝ご飯と昼ご飯かな?」
俺はそう答える。というか、満腹で幸せ過ぎて何も考えたくない。
「赤身はどうする?」
「そうだな、今夜はもう時間がないから、一緒に土に埋めておいて、明日掘り起こして干し肉にしよう。川探しに出かける前に干し肉用の網というか籠みたいなものを作ってバナナの木にでも吊るしておけばいいんじゃないか? 鳥に食べられないように籠の目は小さくしておきたいな」
俺がそう言う。
「そうだね。明日の朝、干し肉用の籠を作る人、肉を切る人、手分けして干し終わったら、りゅう君と私で川を探しに行く感じ? お弁当にお肉を持ってね」
「で、私は二人を待っている間、干し肉の番と塩づくりって感じか」
「まあ、できたら煮詰めた海水で干し肉を塩漬けしてくれると保存がより完璧になるな」
俺は付け足す。まあ、その為にはもう少し深めのくぼんだ石が欲しいか。
俺と
穴は家から少し離れたところにしておく。もしも熊とか出たとき家に近すぎると大変だからな。見える範囲で、逃げられる距離に保存庫を作る。
「冷蔵庫が欲しいね」
肉を葉っぱでくるみ終わった
「高望み過ぎだ。第一、電気がないだろ?」
俺は笑いながらそう言う。
「そうだね。でも、神様が山もあるとか言っていたから山の上の方には雪があったり、氷室になるような洞窟があったりするかもよ?」
「そうなると食糧の保存とかもできていいかもしれないな」
俺はあまり期待していない口調でそう返事する。
「あ、神様といえば、お祈りまだだったね。あと、イノシシの骨とか内臓も経験値にしないともったいないね」
とりあえず、3人で穴に肉を埋めて、海岸に戻りイノシシの廃棄する部分を全能神様にお祈りしてマナに還してもらい半分の経験値を貰う。
というか、お肉としてほとんど解体してしまったので手に入った経験値はわずかだった。
全能神様から返ってきた経験値
りゅうじ 1
あすの 1
いずみ 1
焼き肉を食べて得た経験値
りゅうじ 2
あすの 2
いずみ 2
イノシシ解体で得られた経験値
りゅうじ 2
あすの 2
いずみ 2
秘書子さんの説明だと経験値の分配はこんな感じだ。食べられる動物はなるべく食べた方が少しだけ効率よく経験値が得られるそうだ。そして頭や体を使って作業すると経験値が少し増えるらしい。昨日の荒縄作りだと経験値1、今日のイノシシ解体だと2という感じ、あと、ご飯を食べたり睡眠をとったりすると少しだけ経験値が増えるそうだ。
経験値加算結果(経験値/レベルアップに必要な経験値)
りゅうじ 18/36
あすの 9/16
いずみ 14/42
うーん、レベル8のイノシシ1匹だもんな。ほとんど経験値になってない。というか、ご飯や睡眠の加算の方が多いくらいだ。
「なんか、経験値の入手難易度高いね」
確かにゲームバランスが悪いというかレベルが上がらなすぎる。
「魔物を倒せるようになるとレベルの上りも早くなります」
秘書子さんが俺の不満に対し答える。
「秘書子さんがレベルを早く上げたかったら魔物倒せ、だってさ」
俺はおどけたしぐさで二人にそう言う。秘書子さんの声は二人に聞こえないからな。
「魔物退治は、まだ、先の話だね。まずは衣食住の充実と道具の充実かな?」
「だいぶ遅くなっちゃったけど、交代で寝よ?」
「おーい、
「あー、そうだったね」
それに合わせて俺も
「明日は美味しい水と、道具として使えそうないい竹と、土器作りに向いた粘土がありますように。後、みんなが怪我をしないように」
俺はそう頭の中で念じて祈る。
そして、海岸からキャンプに戻る。たき火の火、持てそうな薪を2本ずつ松明のようにして持ち帰りながら。
焼き肉パーティに夢中で、キャンプのたき火が消えてしまったので、松明6本をもとにたき火を起こし直す。
「火が消えたら付け直すのが大変だからなるべく維持していこうな」
俺は二人にそう言い、二人もうなずく。
ステータスウインドウの時計を見ると時間は夜の22時
「だいぶ遅くなっちゃったな。明日は8時起きくらいでいいか? そうすれば2交代で5時間ずつ、一人は丸々寝られるし。
俺はそう言う。
「ダメだよ3人でちゃんと交代するの」
「じゃあ、明日の夜頑張ってくれ。変に3交代にすると、3時間、3時間とか分けて寝ないといけない人が出るしな。そして、多分それは俺だ」
俺がそう言い、
「それもダメ。私がその役やるから3交代にしよ? みんな6時間寝られるし、私はどうせ戦闘じゃ役に立たないから睡眠不足でも大丈夫でしょ?」
そう言って、3交代を譲らない
「
とりあえず、俺が最初に起きてたき火の番をしながら見張り。
俺は、ただ、ぼおっ、とたき火を見つめているのも、なんなので、近場で薪を集めつつ軽く見回り、その後は石包丁づくりで時間をつぶす。
明日は竹を切りに行くのでちょっと作ってみたいものがあったのだ。
イメージ的にはなたっぽい石包丁というか石斧? 石斧を少し小さくして刃を真っ直ぐにした感じかな? そして石斧より少し薄めの石で刃が鋭い感じで。それをできれば二つ作っておきたい。竹を綺麗に切るのに苦戦しそうと感じたからだ。
二人の女の子達の眠りを邪魔しないようになるべく二人の家から離れたところで石斧(石なた?)を研磨していく。石を石で削るので時間がかかる。
2時間かけていい感じに石が砥げたので、枝二本で挟んで荒縄で固定する。
うーん、なたというより、華奢な石斧って感じかな?
それを1本作って時間オーバーになってしまった。
「りゅう君、何作ってたの?」
「ああ、竹を綺麗に切る為のなたが欲しいなって思って、石斧より少し石が薄くて、刃が真っ直ぐで、石斧より刃が少し鋭い感じのものが欲しいなって試しに作ってみた。できれば2本、予備も作りたかったんだけどね」
俺は竹を切るなたが欲しかったことを説明する。
「なるほどね。それじゃあ、私も多分、暇だから見様見真似で似たようなもの、作ってみるよ」
「あんまり無理するなよ」
俺はそう言って、自分のシェルターに入り横になる。オオカミにイノシシ。結構疲れたな。俺はそんなことを考えながら目を閉じる。
かさかさ、
シェルターの入り口の扉代わりの葉っぱをかき分ける音。
俺が首を起こして目を開けると、
「どうした?」
俺が聞くと、
「また、寂しくなっちゃった」
そう言って俺に抱きつく
「それに、昼間、約束したでしょ。夜にキスの続きしよ。って」
そう言って、キスをする
ちょっとしょっぱい味がするのは、寝る前に海水と枝で歯磨きをしたからかな?
「それと、こっちに来て生えちゃった兎の耳の答え合わせ。『七つの大罪』の兎の正体は、ね」
そう言ってもう一度キスをする
そして唇を放し、
「兎に例えられる『七つの大罪』、悪魔に例えると、アスモデウス。ずばり『色欲』だよ」
そう言って、体を絡めて、俺の上に乗り、美味しそうにキスをせがむ
「りゅう君、私、元の世界で男の子にからかわれていたのを知ってた? 小学校5年生くらいから急に胸が大きくなってきて、お母さんが女性下着の会社の社長だから『エッチな下着を付けているんだろ?』って冷やかされたり、お父さんの恋愛小説を知っている男の子が『お前のお父さんはエロ小説書いている』って冷やかされたりしていたの。だから私、好きでもない男の子にそんな目で見られるのが嫌だから、エッチなことに興味ない、清楚な女の子になろうって躍起になっていたの」
「でもね、本当は、エッチな女の子で、りゅう君に、りゅう君とだけは凄くエッチなことがしたいなってずっと頭の中で妄想していたの。りゅう君、家の事、お母さんやお父さんの事や仕事の事、よく知っていたのに、他の男の子みたいな悪口言わないでしょ? しかも私の事エッチな目で見なかったでしょ? だから、私にとって、りゅう君は子供のころからずっと特別だったの。りゅう君にだけはエッチな私を見て欲しい。そんなことばっかり考えていた、清楚な女の子とは名ばかりのエッチな女の子だったの」
「俺はそんな
俺は
「ふふっ、こっちに来てからのりゅう君はちょっと男らしくなって、結構好きかも。前以上に大好きになっちゃった」
☆☆☆☆☆☆
「じゃあ、おやすみ、りゅう君。なんか、全部話せて、りゅう君も変わらず好きって言ってくれて、私、りゅう君をもっと好きになっちゃった」
そう言ってにっこり笑うと、振り返り見張りに戻る
俺も、その流れだと、元の世界に『謙虚』さを忘れてきたから、
ま、そんなことないか。多分神様の戯言だ。俺に生えた尻尾と耳、獅子のそれと、獅子の象徴する『傲慢』という『七つの大罪』と対となる美徳『謙虚』の話を思い出しつつ鼻で笑う。
俺は自嘲しながら目を閉じる。二人はお互い好き同士、自然な関係になれた。それだけだ。
そして、疲れに身を任せるように眠りについた。
次話に続く。
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