第5話 とりあえず魔法抜きで家を作ろう(with明日乃)
「とりあえず、魔法は使えないみたいだし、魔法抜きで衣食住を整えないとな」
「そだね」
とりあえず、
「
俺は
「うーん、洞窟とかあれば洞窟? 雨風避けられるし、何より簡単。ただ、崖の壁面とか落下物に注意が必要だし、崩落したら生き埋めだし、海や川が近いと浸水したりする危険もあるんだよね。あと、そう都合よく、洞窟自体がない?」
確かに生き埋めは嫌だし、そもそも、この辺りは平地と森しか見当たらず、洞窟を探すとなると気合い入れて探索しなければならなそうだ。
「まあ、森が近くにあって木材や屋根にする葉っぱもいっぱいあるから、とりあえず落ちている倒木や枝を組んで葉っぱで屋根を作る簡易テントみたいなものでいいんじゃない? 場所はこの辺で良いと思うよ。水辺は洪水や津波の危険性があるし、崖とかは落下物の危険性がある。あと、実のなる木の下は落下物があるから避けた方がいいかな?」
「確かに寝ている間に溺れたくはないし、寝ている間にヤシの実が当たって死亡とか洒落にならないしな」
俺がそう言うと
「とりあえず、
そう言ってさっき集めたものを見せる。
「即席のテントみたいなものならいけそうだね。Aフレームシェルターってやつかな?」
そこから、
まずは太めの枝を二本、まさにAの字に組んでつるで縛る。
そして同じく太めの、さらに長い枝をAの形に組んだ枝の頂点に組んで更につるで縛る。
これで三角錐の骨組みができる。
「地面に杭が撃ち込めるようなら骨組みと地面の設置部分に杭を打ってそれに固定すれば風で飛ばされたり自重でつぶれたりしちゃう可能性は減るかも?」
俺は言われた通り、少し太い枝を杭代わりに地面に刺し、石で打ち付ける。下が土だったので場所さえ選べば何とか木が打ち込めるようで、3か所に杭を打ち込み骨組みも少し地面に押し込んでから杭にそれぞれつるで固定した。
「やっぱり、つるよりひもが欲しいな。つるは固いし、物によっては結んでいる途中で折れるし」
俺は、つるの使いづらさにそう言う。
「そうだね、時間があるときに藁みたいな雑草をねじって荒縄みたいなものを作った方がいいかもね。あと、もっと簡単なものでいいなら、繊維が長めの枝の皮? 木の皮を細くはいで、二本を綯うと紐ができるわね。まあ、木の皮の場合、長い物が作りにくいから、短い物を何本も結んでつなげることになるけど」
と
「なるほど。木の皮はいいかもしれないな」
俺はそんな話をしながら家づくりを続ける。
そして、三角錐の骨組みができたら、一番長い骨組みに斜めに枝を立てかけていき、三角錐の面を作る。面を2面作ったら、雨が防げるように葉っぱを載せていく。
「バナナやヤシの木の大きな葉っぱがたくさんあるから、こういう時に楽だな」
俺は大きな葉っぱを載せていき、葉っぱを上手く重ねて、屋根が雨漏りしないようにする。あと、風で飛ばされないように、枝同士をつるで縛ったり、枝に葉っぱを縛ったりして強度を上げていく。
「大きな葉っぱは便利だね。今のところ洋服代わりにもなってるし」
屋根ができあがったら最後は、残った一面に枝や葉っぱをうまく使って入口と扉代わりの葉っぱをつける。
入口を小さくして塞げるものを作るだけで、風の吹き込みも防げるし、安全性も、プライバシーの保護も格段に上がるそうだ。
「
俺はそう言って同じようなものをもう一つ作る為に足りない材料を補充に行く。
「そうだね、親しき仲にも礼儀あり? あんまりベタベタし過ぎもダメだよね」
なんだかんだ言っても長く暮らすならプライベートスぺースは大事だもんな。
俺は同じような材料を集めて同じ手順でもう一つ家を作る。
そして、家ができたら、中に乾いた雑草を藁代わりにひいてベッドやクッション代わりにする。
「とりあえず、こんな感じでいいか?」
俺は、
「すごい、完璧だよ。りゅう君。これで雨風はしのげそうだね。でも、将来的にはツリーハウスみたいに木の上に家ができたらいいかな? 害虫対策とか、猛獣対策になるから」
明日乃がそう言う。
「そうだな。神様も、動物がいるとか言っていたから熊とかオオカミとかいたらこんな家じゃ寝られないもんな」
俺も将来的には木の上の方が安全な気がする。
「まあ、熊は木も登れるけどね」
「とりあえずは、明日以降、柵を立てたり、とか掘りとかを掘ったりした方がいいかもな。いきなりツリーハウスは無理だろうし、本格的に家を作り始めるなら、道具、せめてナイフみたいに鋭い石とか欲しいよな」
俺は家づくりですっかり日が暮れてしまった空を見上げて明日の作業を考える。やっぱり動物避けの柵は必要だよな。明日以降の作業かな?
「そうだね。ナイフ欲しいよね。ナイフや金属製品がダメでも、せめて黒曜石、原始人が石器として使っていた石とか欲しいよね」
「黒曜石か。そういうのも探しに行かないといけないんだろうな。石槍とか、石斧? 身を守る武器とかも作らないとな」
俺は自衛手段も考えないといけないなと、再確認させられた。
「木の棒とかは武器として持っておいた方がいいかもね」
俺は暗くなる前に、長い枝をうまく折り、先端を鋭くしたものを二本用意する。
「まあ、何もないよりはマシだろ?」
そう言って1本を
「竹とかも欲しいね。竹やりとか、食器にもなるし、家づくりがもっと楽になるし」
「そうだな」
とりあえず、今欲しいのは
・荒縄や紐
・黒曜石のナイフ、石器みたいなもの
・竹
「将来的には麻みたいな植物探して麻布とか作りたいね。さすがに葉っぱの服じゃ、新しく仲間が増えたらお互い恥ずかしいし」
と
そうだな。女の子に葉っぱの服で暮らさせるのは可哀想だ。
「探索とかして色々探さないとな。というか神様に聞けばいいのか? さすがに島の構造とか何があるかくらいわかるだろ?」
俺はそう
「あ、神様と言えば、1日1回お祈りしなくちゃいけないんじゃない? ついでだからそのあたりお祈りしておこうよ」
思い出したようにそう言う
言われてみれば、お祈りしないと、神様の力が回復しないとかいっていたし、力が回復しないと仲間も増やせないっていってたしな。
やっぱり原始的な世界には人手が一番欲しい。二人だけだとやれることも限られるし。
とりあえず、二人で神さまにお祈りをする。
「うん、日課のお祈りも終わったし、残りのバナナも焼いて食べよ? お腹空いたよね?」
「そうだな、お昼ぐらいに食べたっきりだったもんな。夜ごはんということでまた焼くか。というか、今はいいけど、将来的に毎日バナナとヤシの実のジュースじゃきつくなるだろうな。海に言って魚をとったりとか、川とか泉も探したりしないとダメだな」
俺は、すでにバナナの味に飽きているので魚を取ることも考えないといけないと思いそう言う。
そして水もある程度使える環境にしないと、
「お水欲しいね。顔とか洗いたいし、というか歯磨きしたい。昔の人みたいに木の枝とか噛んで歯ブラシ作ればいいかな?」
「確かに歯磨きはしておかないとな。原始人は虫歯で死ぬこともあったらしいし。本当かどうかは知らないけどな」
「うそっぽいけどちょっと怖いね。虫歯」
俺の虫歯の話に
とりあえず、川探しと動物避けの柵作りが急務だな。
「りゅう君、バナナ焼けたよ」
「ああ」
俺と
裸でも暮らせるくらいの南国のような気候なのは助かるな。とりあえず、夜でもたき火が無くても凍え死ぬことはなさそうだ。
やっぱり水と、水を沸かす鍋代わりになるものが欲しいな。
そうこうしているうちに日も暮れて、あたりは真っ暗に。
これ、たき火が無かったら本当に自分の手も見えないくらいに真っ暗になってしまうんじゃないか?
「たき火の火を絶やさない方がいいよな? オオカミと熊とかでたら真っ暗で対応もできないだろ?」
俺がそう言う。
「そうだね、初日で何が起こるかわからないから交代で寝る?」
現代人は電気の光に慣れ過ぎていたんだな。本当に真っ暗な世界なんて今まで、言われてみると味わったことがないかもしれない。
「それじゃあ、
俺は
「私はいいよ。さっき少し寝られたから。りゅう君も寝ないと明日倒れちゃうから先に寝てね。あとで交代するから」
やっぱり交代で寝られるくらいの仲間が欲しいな。できれば仲良くできる奴な。
そんなことを考えながら、
「3~4時間くらいしたら起こしてくれよ。といっても時計がないから分からないよな」
俺は時計の無い世界に苦労しそうだと思った。
「あ、ステータスウインドウに時計あるよ。それとアラームもついているから5時間寝ちゃっていいよ」
「マジか?」
俺は小さい声でステータスウインドウを呼び出すと確かに時計がついていた。時間は20時を示している。しかも本当にアラーム付きだった。
「なんか、サバイバルなんだか、リアルなんだか、ゲームなんだかよく分からない世界だね」
「そうだな。ゲームの要素にがっかりだが、まあ、時計があるとないとじゃ全然違うし、まあ助かるけどな。じゃあ、5時間寝たら代わるからな。なんかあったらすぐ起こせよ」
俺はそう言って、自分のシェルターに入って横になる。明日の朝1時にアラームをセットして。
「りゅう君」
「なにかあったか?」
俺は慌てて寝ぼけた頭のまま半身を起こす。
「ううん、何も無いよ。ただ、寂しくなっちゃった」
そう言って
「もう少しで交代の時間だからちょっとだけ一緒にいよ? 焚火も薪入れておいたから当分消えないだろうし」
そう言って甘える
ステータスウインドウの時計を開くと1時前。5時間弱寝たのか。
「少しだけだぞ。
俺はそう言って
「うん、私が寝るまで隣にいて」
そして何かを求めるように俺を見つめ少し口を開く。
☆☆☆☆☆☆
時間は朝の2時過ぎ。
俺は、
結局、一緒のシェルター寝るんだったらシェルター二つ作った意味なかったな。
まあ、明日以降は別々に寝るだろうし。今日は仕方ないか。
それと、やっぱり二人とも何かがおかしい。この耳のせいか、普段と違う行動が目立ちすぎる。今度神様に会ったら、聞かないといけない事案だな。
火の弱くなったたき火に薪を足してから
何度か往復し、十分な薪が集まったので、たき火の前に座り、ぼんやりと火を眺める。
やることもないので、昼間に
確かにこのやり方だと長いひもは作れないな。
俺は何本かひもを作るとそれを結んで長くする。
これは結構、大変な作業だな。
作業の面倒臭さのわりにひもの長さはなかなか伸びない。
二時間ほどそんな作業をしていると、カサっ、と遠くの藪がこすれ合う音がする。
なんだ? この新しい耳のせいか? いつもより遠くの音が聞こえて、嫌な気配を感じる。
何かいる!?
俺は自分の横に置いておいた槍代わりに先をとがらせた長い枝を持ち立ち上がった。
次話に続く
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