第4話 明日乃が倒れた!?(異世界転生のお約束始まります)
「あ、あなたは、誰ですか?」
俺はもう一度聞く。
目の前に現れた黒髪の美女、体が透けているのできっと神様の関係者だろう。
「私は神の代行者、我が主が眠りに着く間、この地を管理するもの。そして、あなた達が悩んだ時に手助けするようにとも主から命じられています」
黒髪の美女は無機質で無感情そうな口調と声質でそう告げる。おかっぱのショートカット? ボブカットっていうのか? なんか、仕事のできるOLさんみたいな格好の人だ。
「主にもそう言われました。秘書の様だと。なので、主は私の事を、
俺の心を読んで真面目な顔でそう言う『
俺は呆気にとられて、言葉を失ったが、倒れた
「秘書子さん、
俺は慌てて、
それに対し、秘書子さんは冷静に、というより無感情に、
「倒れた理由は魔法のせいです。あなたは何もしなくても大丈夫です。30分ほどしたら目覚めるので、食事や睡眠で回復します」
と、本当に聞いた事だけを答えてくれた。
「なんで、魔法が使えて、なぜ倒れたのか、理由も教えてくれないか?」
俺はあまりにも不親切な解答に、少し苛立ちながら、聞きたい事を並べる。
「神が魔法を使えるように作った世界なので魔法が使えます。倒れた理由は、魔法の原動力となる『マナ』、我が主曰く、『MP』というものが体内にあり、それが尽きたので倒れました。2人とも『レベル』が低いので、魔法の使用は避けるべきと助言します」
本当に聞いた事しか答えてくれない機械みたいな人だな。
とりあえず、
そして、布団がわりになるか分からないが、大きな葉を集めて
気づいたら、秘書子さんは消えていた。まあ、聞いたことしか教えてくれないみたいだし、必要になったらまた呼ぼう。
一段落して、折角、火のついた焚き火が消えない様に薪をつぎ足し、
とりあえず、薪と、柱になりそうな長い木の枝、屋根になりそうな大きな葉を集める。バナナの葉やヤシの木の葉が結構落ちていて、大きな葉が確保しやすいのはありがたい。
秘書子さんが言ったとおり、だいたい30分くらい経ったところで、
「大丈夫か?
俺は心配して、手に持った資材を地面に放って、
「ああ、りゅう君。ごめんね。急に倒れちゃって」
横になったまま、俺の方を向いて、弱々しい声でそう言う
「それより、体調は大丈夫か? お腹すいたか? 何か食べられそうか?」
俺は心配過ぎて矢継ぎ早に質問を繰り返す。
「まだ、クラクラするけど、大丈夫。確かにお腹空いちゃったかも」
「なんか、神様に聞いた話だと、俺たちのレベルが低いから魔法を使うと、体の中にあるマナとかいう魔法の素が尽きて倒れるらしい。だから魔法は使わない方がいいらしい」
俺は目を覚ました
「神様、来たんだ」
「いや、神様じゃなくて、神様の代行? 秘書子さんとか言う神様の部下みたいな人がでた」
「秘書子さん? 変わった名前だね」
とりあえず、バナナが満遍なく、全体真っ黒になるくらい焼いてみた。
「こんなもんでいいのか?」
俺はそう呟き、バナナをとりあえず全部、焚き火から取り出し、ひとつを剥いてみる。
熱いので、枝をフォークの様に使い、白い身の部分を取り出す。よく焼けてはいるようだ。
「いきなり食べちゃダメだよ。ちょっと舐めてみて、舌がピリピリしたり、少し経って体調が悪くなったりしなければ一応大丈夫かも?」
俺が、バナナを食べようとしたところで
言われた通り、白い果肉をぺろりと舐める。丸焼きなので、皮の焦げが少し残り苦みはあるけど、特にしびれはない。というか、甘くないし、バナナの味がしない。
少し待つ間に、もう一つ、バナナの皮を剥いておく。
特にしびれたり、吐き気がしたりするようなこともないのでひとかじり。
問題なさそうなので、今剥いたもう一つのバナナをさっき食べたヤシの実の殻をお皿にして
「バナナというよりジャガイモだな。甘くないし、ちょっと固い。まあ、焼いたらほくほくになったから、ジャガイモのつもりで食べたら、結構うまいぞ」
俺はバナナを渡してそう言う。
俺の分のバナナの残りを食べて、もうひとつバナナを剥いて、
「うーん、確かにジャガイモだね。ちょっとだけ甘いジャガイモ? なんかお塩が欲しくなるね」
そう感想を述べる。そして美味しかったのか、もそりと草のベッドから起き上がり、ベッドに座ってもしゃもしゃとバナナを食べだす。結構いい食べっぷりだ。
「そうだな、落ち着いたら海水で塩を作るといいかもしれないな」
俺も同意する。塩がないとそのうち本当に味に飽きそうだし、体にも悪そうだ。
「その為にも、お鍋か、土器みたいなものが欲しいね」
と
そんな雑談をしながらバナナを食べる。
「
俺はその食欲が気になって声をかける。
「うん、ご飯食べたらだいぶ良くなったよ」
「とりあえず、魔法が使えるのはよかったね。となると、次にやるのは、『ステータス、オープン』」
「おおぅ、出たよ。ゲームみたいな画面が」
「何しているんだ?
俺は意味不明な行動をとる
「だってね、異世界で、魔法が使えるといったら、次はステータスチェックがお約束でしょ? あとはアイテムボックスと鑑定スキルとスキルチェックかな」
「それって、異世界転生の常識なのか?」
異世界転移する小説、というか雑誌や漫画以外の本自体をあまり読まない俺はそう聞く。
「まあ、そうだね。何冊か異世界転生ものの小説とか、悪役令嬢とか貴族とか、ゲームの世界に転生しちゃう小説とかは読んだけど、とりあえず、これで何とかなる感じ? 文芸部にそう言う小説が大好きな子がいたから借りて読んだこと結構あるんだよね」
俺は何をしているのか分からず、
なんか色々試行錯誤して、一段落したのか、
「りゅう君、とりあえず、ステータスオープンと鑑定と簡単な魔法やスキルはあるみたい。そしてチートスキルは残念ながらなかったよ。あとアイテムボックスも」
「???」
「とりあえず、ステータスオープンって叫んでみて」
と俺に言う。
「す、ステータスオープン?」
俺も言われるがまま叫んでみる。ちょっと恥ずかしいので小さい声で。
「なんだこりゃ?」
俺が叫んだとたん目の前に子供のころにやったゲームのような画面が広がる
名前:りゅうじ
職業:ノービス
レベル 5(ステータス合計25)
ちから 6
すばやさ 6
ちりょく 3
たいりょく 6
きようさ 4
信仰心 低
HP 6
マナ/レベルアップに必要なマナ 25/25
スキル使用枠/スキル習得可能枠(0/25)
スキル
①生活級 なし
「これがステータスウインドウだよ」
俺の反応を見て、
「それと、鑑定で、相手のステータスも見えるみたい。りゅう君、私の方を見て「鑑定」って叫んで私を鑑定してみて」
「鑑定」
俺は
すると、俺の周りのステータスウインドウ? が消え、
名前:あすの
職業:ノービス
レベル 4(ステータス合計16)
ちから 2
すばやさ 3
ちりょく 6
たいりょく 2
きようさ 3
信仰心 高
HP 2
マナ/レベルアップに必要なマナ -3/16
スキル使用枠/スキル習得可能枠(10/16)
スキル
①生活級 火起こし(10)
「体力の数値低いな」
俺は思わずつぶやく。
「仕方ないじゃない。向こうの世界じゃインドア派だったんだし。でも、知力はりゅう君より高いよ?」
「で、多分、さっき魔法を使ったから、生活級ってところのスキルに『火起こし(10)』ってスキルがついていて、後ろの(10)っていうのはスキルを覚えるのに必要なマナと唱えた時に消費するマナかな? で、スキルを覚えて魔法を使っちゃったからマナが20減って-4。それで倒れちゃった感じなのかな? で、多分だけど、バナナ食べてマナが1回復して-3って感じ?」
「すごいな、
俺は思ったことをつぶやく。
「ゲーマーじゃないよ。りゅう君と子供のころ少し遊んだくらいだよ。どちらかというと、友達に借りた異世界転生ものの小説の知識かな? 大抵の小説ってこんな感じだから」
と
「
俺は尊敬の念も込めてそう言う。
「で、見た感じ、ちょっと問題なのが、マナっていうの? これ、さっきのりゅう君が話していた、秘書子さん? って人の話だとMPだって言っていたんでしょ? でも、これ、たぶん、ロールプレイングゲームでいうMPだけど、経験値もスキルポイントも兼ねているっぽいね」
と難しい顔で言う
俺は何を言っているのか分からずに、
「どういうこと?」
と聞き返す。
「つまりね。レベルアップするのも、魔法を使うのも、スキルを覚えるのも、この『マナ』っていうのを使うみたい。だから変に、魔法を使うとレベルアップもスキルの取得もできない。つまり魔法は使っちゃダメってことね」
「ああ、秘書子さんもレベルが低いから魔法は使うなって言っていたけどそういうことか。で、神様が最初に言っていたレベルアップっていうのは、この島にいる動物や、他の島にいるかもしれない魔物を倒すとこのマナが増えてレベルを上げられるってことだろうな」
俺は
「たぶんね。ちなみにりゅう君、マナがレベルアップできるくらいあるからレベルアップしてみたら? たぶん、魔法で使っちゃうより有意義だと思うの」
そして、レベルアップを意識すると、ステータスウインドウとは別に、メッセージが出るウインドウが開き
[レベルアップしますか はい/いいえ]
こんな文字が表示される。
俺が『はい』の場所をさっき、
そして、わざわざ叫ばなくてもいいんだな。ステータスウインドウとか。意識しただけで開くし閉じるし動くと。
名前:りゅうじ
職業:ノービス
レベル 6(ステータス合計36 (前回+11))
ちから 9
すばやさ 8
ちりょく 4
たいりょく 9
きようさ 6
信仰心 低
HP 9
マナ/レベルアップに必要なマナ 0/36
スキル使用枠/スキル習得可能枠(0/36)
スキル
①生活級 なし
なんかステータスが増えたみたいだ。
「なんか、まんま、昔のRPGのゲームだな。もしかしたら、これって夢の中でゲームしているだけなんじゃないか?」
俺はこれらを見て、あまりの現実身のなさにそう言ってしまう。
「もしかしたら、そうかもしれないけど、そうじゃなかったら、変なことして死んじゃったら GAME OVER りゅう君ともう会えなくなっちゃうのは嫌だよ」
「そうだな。俺も、この世界が現実ではなく夢だったとしても、
俺はそう言って、心配そうに俺の顔を覗いていた
「うん、夢かわからないけど、二人で一生懸命生きようね」
そう、俺ひとりじゃないんだ。
俺はそう決意し直すのだった。
次話に続く。
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