第36話  奇跡の力  

『そろそろ、アルが限界だな。どうしようかなぁ』


 アウグステは独り言ちた。

 チラリと、アストリッドとラルカの方を見て言った。


『ラルカ、天界には内緒だよ?』


「アストリッド、お前は目を閉じててくれると有難い。」


「何をする気なの!?」


「神殿が禁止してる、ま・ほ・う・。アルを早く助けたいだろ!」


 アウグステは、アストリッドにウインクをした。

 アストリッドは、うんうんと首を縦に振る。


《どうするの!?未来の大悪党をどう成敗するの?》


『アヴィンは、五年前に死んでるよ、未来なんてない』


 真実をアヴィンに突き付けた。

 そして、言った。


『風の奥方、結界を作って、ルシーガ、浄化の火を』


 アヴィンに向かって、そう言い放った。

 アウグステに襲いかかろうとしたアヴィンは、風の奥方の結界にからめ捕られた。

 そして、上位の火の精霊のルシーガによって、清めの火で焼かれることになった。

 辺りにはアヴィンの叫び声がこだまする。


 アウグステは、大地に向かって祝福の言葉を唱えていった。


 やがて、浄化の火で焼かれてる、アヴィンの身体から大きな石の様な結晶が出て来た。

 アルフォンソを閉じこめていた岩が割れた。

 粉々の中になった大岩の中に、結晶は戻っていった。

 大岩の下には、十歳くらいの男の子が、傷だらけで倒れていた。


《奇跡の力だね》


『天界にも、神殿にも内緒だよ!!』


《イリアス・エル・ロイルの子孫はすごいね、聖女、イサベル・ルースティリアの力を受け継いでたんだね》


『おばあ様とおじい様しか、知らないんだ』


 アルフォンソは、フゥと深呼吸をして倒れ込んだ。

 アルフォンソのもとに、駆け寄っていくアストリッド。


『ラルカ。これで、アヴィンが大山脈を越えて来る事は無いな』


《そうだね。君には天界の記録さえ変えてしまう力があるんだ……。

 でも、ディハルド神は本当に天上界から地上に下りてるんだよ。》


『それは……大体気がついて来たよ……』

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