第35話  アヴィンの秘密

『ラルカ、お前の言う未来は嘘張ったりだと分かったからな』


《何のこと!?》


『とにかく、お前の言うような未来は来ないってことさ』


《僕って、信用無いんだね~神族なのに~》


『じゃあ、天上界に帰ったら、創世神でも、光の神にでも言ってやれよ。

 ディハルド神は、人間界を満喫中だって』


《それじゃあ、僕の来た意味が無くなるよ。僕は、創世神様からの依頼で地上に来てるんだ》


 アストリッドは、岩に閉じこめられたアルフォンソの所に行って、なんとか出来ないものか、自分の知りうる呪文を試していた。


『~~~エイ!!』


「何やってるんだ!?アストリッド」


「アウグステ、早く助けないとアルが死んじゃうわ!!」


 アストリッドは涙ぐみながら、呪文を続けていた。


「落ち着け、アストリッド。アルは、大丈夫だ」


「どうして、そんなに落ち着いていられるの!?アウグステ!!」


「分かってるからだよ。全て……」


「麓の村は火の海だわ!!」


「そうだな……そろそろゼナの花が枯れる頃だな……」


 涙ぐむアストリッドに、うっすらと笑うアウグステ。


 程なく、引き戻される様に、アヴィンが山の頂上に戻って来た。


『何だよ!!水神の村に行こうとしたのに、戻しやがって!!』


『仕方ないさ!!ゼナの花は、この北の地には合わないんだ。南の暑い所で咲く花だからな』


『もっと、寄越せ!!』


『無いよ、おばあ様は一本しか持たせてくれなかったんだ』


『お前も、村人のように焼け死にたいか?』


 そう言うと、アヴィンは火球をアウグステに投げてきた。

 アストリッドを岩の陰に隠して、ヒョイと避けるアウグステ。


『おまえ……そろそろ気づけよ……お前は魔法使いでも何でもないんだろ? でも、推測するにディハルド神の残留思念が、お前を保護して来たんだ。そして、力が欲しいというお前の希望を聞き入れて、与えた。……どうやって……?』


『何を言ってやがる?』


『お前は、ディハルド神の思念から五つの名前を聞いたのだろう?』


 アヴィンは、黙っていた。


『思い出せ、その時を。ディハルド神を天に帰したイリアスを召喚したのは、稀代の精霊使いだぞ。ただ人のお前が無傷で出来たと思うのか!?』


『何?』


『私には、南の世界で聖女と言われる祖母の血が流れてるんだ。

 だから、お前の本当の姿が視えるんだ。人の姿ではない。衝撃で、身体が吹き飛ばされているぞ。十歳の時か?』


『だが俺は、成長してるぞ!!』


『お前の、人として残った記憶だ。実際のお前は、十歳で死んでいる』


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