第34話  村を襲撃

「そうだな。手始めに俺を此処に捨てた村の奴らから、襲ってやるか」


 アヴィンは、十五歳には見えない悪人面で、山の下の集落を見た。


『おまえ……本当の年はいくつだ?』


 アウグステがアヴィンの聞いた。


『十七だが?関係があるのか!?』


『神の力を、こんな風に使うな』


『お前のような、力を持っている奴が来るのを待ってたんだ』


『ここから、動けないからだろう?』


 アウグステは、低い声で言った。

 アヴィンは、図星をさされたようだ。


『動けないんだろ? ここから。力は使えるかもしれないけど、この大岩の近くから動けないんだ』


『お前の風の精霊の力で、俺を浮かせろよ』


『大地の力で、縛られてるんだよ。大岩の封印を解いたお前は、この地に縛られてるんだ』


『ディハルド神と大地の約束だ。大岩に力を封印していったディハルド神が、神の破壊的な力を悪用するする者は、此処に閉じこめる契約があるみたいだ』


 アウグステは、砕けた大岩の下の方に魔法陣のような文字を浮かび上がらせた。


『ディハルド神は上級の神だぞ。その神の力を破壊や戦いに使うな。

 ディハルド神だって、おまえにそのために力を与えた訳じゃないんだろ?』


『イアンは、俺に力をくれたんだ!!だが、どうやっても山を下りられねぇ……』


『お前が、ディハルド神の心を汲む者なら、離れられただろうな。

 でも、お前は村人たちへの復讐を誓った。だから、お前はここから動けないんだ』


『うるさい!! お前なら、知ってるはずだ。この状態を何とかしろ!!』


 アヴィンは、凄んでアウグステを睨んだ。


『岩に閉じこめられたお姉さんの命は、あとわずかだぜ。岩の中に空気なんてないからな』


『く……』


 アウグステは、持っていたゼナの花をアヴィンに渡した。


『これはゼナの花と言って、ディハルド神のシンボルにもなってる花だ。

 多分、その花が咲いてる間は自由になれるはずだ」


 アヴィンは、引っ手繰る様にアウグステから、ゼナの花を奪い取ると飛んで山の麓へ下りて行った。


 山の麓では、あちらこちらから火の手が上がっていた。


「アウグステ!!」


 アウトリッドが心配そうに寄り添ってきた。


《良いのかい!?アウグステ。彼に力を与えてしまって》


『アルの方が大事だよ。それに……』







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