第33話 アヴィンの生い立ち
「え……?」
アウグステは、ラルカの言葉に驚愕した。
『ワハハハ!!その喋る猫は、預言もするのか!?
そうさ、俺はこの国を統一したら、大山脈を越えるんだ』
『お前、親は? ここに一人でいるのか!?』
『フン。親なんざ、村を去る時に俺を此処へ置いてったよ。俺は、大岩の力と同調が出来たからな。お袋は俺を生むと死んだ、親父は村を出て行った。十歳から俺を育てたのは、この岩のイアンだ』
『イアン!?』
アウグステは、ラルカの方を向いて言った。
《イアン・ディハルド。ディハルドの名前の一つだよ。神は、五つ名前を持ってるんだ。能力者が全ての名前を知ってると、神を召喚出来ると言われてるね》
ラルカは説明する。
《彼は、ディアルの名も名乗っていたね。彼は、ディハルドの名を三つは知ってるんだ。ディハルド神の名前は、南の地方にはほとんど知られてないから、アウグステ、気を付けて》
『分かっている……アヴィン、神の力は偉大だ。人の手には余る者だろう!?』
『フフフ……面白いことを言うな。お前も能力者のようだ。どうだ!? 俺と手を組んで、世界を手に入れようじゃないか』
アウグステは、複雑な気持ちになった。
『なら、俺の仲間になりたいようにしてやる』
そう言うと、アヴィンは宙に浮いていたアストリッドとアルフォンソに向けて、
火球を投げつけた。
アウグステの風のシールドの方が遅く、2人は地上に落ちる羽目になった。
驚いたことに、地上でアヴィンがキャッチしたのはアルフォンソで、アストリッドは
ラルカが地上すれすれで拾ってくれた。
『綺麗なお姉さん、お名前は!?』
『あ、アルフォンソ・ライナス……』
『結構。お嬢さんには、あの銀髪美女さんが俺の言う事を聞いてくれるまで、この岩に捕らわれていてくれよ』
『なに!?』
途端に岩の一部が動き出し、アルフォンソを閉じこめてしまった。
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