第32話  謎の少年、アヴィン・ディアル

 アウグステ達は、北の山へ向かって飛んだ。

 確かに、山の頂上には大きな岩があったのであろう。

 だが、大きな岩は粉々に割れていた。


「どういうことだ!?」


「ディハルド神の力が奪われてるのか?」


「……」


 アウグステ達は、疑問を口にしていた。


『神の力だから、強大なんだろう?ラルカ』


《そうだね、イリアスと対なす神として、地上に下った神だからね。

 神族としても、格が高いよ》


『そうなんだ。力を封印していったというのに、この有様はどういう事だ?』


《封印を解いた者がいるんだよ。気を付けて。近くにいるかもしれない》


 アウグステ達は、周りを警戒した。

 アウグステは自分で飛んでいたが、アストリッドとアルフォンソはラルカの力で浮かんでいた。


 砕け散った岩の周りを旋回していた時だった。

 地上から、火の玉が飛んで来た。


「!?」


「キャー!!」


「おい!?」


 突然のことに、三人はビックリした。


 見れば黒髪、黒い瞳の十五歳くらいの少年が、こちらに向かって魔法の攻撃をしてきた。


『やめろ!!私はお前の敵ではない。話がしたいだけだ』


 アウグステが、古代レトア語で少年に話しかけた。


『うるさい!!俺の言う事を聞かないと、お前たちもぶっ殺すぞ!!』 


『私は、南から来たアウグステ・エル・ロイルだ。お前の名前は何というんだ?』


 アウグステが少年の手から放たれている火球をかいくぐりながら、少年に近付いていく。


 驚いたことに少年も飛んだ。


『何しに来たんだ!!』


『ディハルド神の痕跡を辿ってここまで来たんだ』


『遅かったな。ディハルドの力は俺が貰ったぜ。俺が封印を解いたんだからな』


 少年は不敵な笑みを浮かべる。


『お前の名前は!?』


『アヴィン・ディアルだ』


 その名にラルカが反応した。


《アウグステ、気を付けて。彼が後に大山脈を越えて、行軍して来るんだ。南を戦火の海にする張本人だよ》

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る