第28話  北の地へ

『どうやって行くんだよ!?大山脈は人の力では越えられないぞ』


 アウグステは、ラルカに向かって言った。


《僕の力で、行けるよ》


『だったら初めから、手を貸せよ!!』


 怒るアウグステ。


 アストリッド達に合流するために、神殿を出ようとした時に、イサベルが追ってきた。


「アウグステ!!」


「おばあ様!?どうしたの?」


「これを持って、お行きなさい」


 見た所剣だ。

 鞘を通しても凄く磨き上げてられてるのが分かる。

 魔力が感じられた。


 鞘に彫りこまれた花でこれが西域の護り剣、テセウスだという事が分かった。


「『テセウス』はね、魔法鍛冶師が先の大賢者様への愛しい思いも込めて作ちゃったらしいのよ。だから、恋愛ごとにはパワーのある剣なの」


「??」


 アウグステには、イサベルの言う事が謎である。


「それからこれが、ゼナの花よ。ディハルド神のシンボルの花」


 イサベルは大輪の花を、一本だけアウグステに渡した。


「モーリスも間抜けではないけれど、やはり、ロイル家はお前が継いだ方が良いみたいね。ロクサーヌの件が終わったら、それとなく三賢人に接触してみるわ」


「おばあ様!!」


「気を付けて、行ってらっしゃい」


 アウグステは、イサベルから、剣を包む布も借り受け、背負う形でサントスの神殿を出た。



 ♦♦


 待ち合わせの場所を決めてあったわけではないが、程なく、キサナド、アストリッド、アルフォンソと合流することが出来た。

 二人とも、買い物で持ちきれないほどの荷物を持っていた。


「これから、寒い所へ行くのでだろう!?毛皮は必須だな」


「キナサドの所為か!」


 アウグステがキサナドを睨むんだ。


「猫ちゃんが、運命托生って言ってるのを、我らも視てたんだよ」


「一緒に水晶を覗かれてたんですよ~~」


 アルフォンソの、堂々の言いプリに横でキサナドが、涙ぐんでいた。


「キサナド様も、一緒に行くでしょう!?」


 アストリッドのその言葉に驚く三人。


「いや、僕は光の神殿に戻らないと……三賢人様に今回のお知らせとアウグステ達が北の山脈を越える旨を知らせないと……」


 アストリッドは涙ぐんだが、そんな事で絆されるキサナドでもなかった。


「アストリッド、行かないのなら、さっき買ってやった毛皮は返してくるぜ。お前さん用の特注品なんだがね」


 アルフォンソは、またお金にモノをいわせて、アストリッドを釣ったようである。

 アストリッドは、毛皮の方がキサナドよりも高かったようで、それきり愚図ることは無かった。


 キサナドとは、サントスの街で別れた。

 郊外まで歩いて移動して、ラルカの魔法で一瞬のうちに大山脈の向こう側にいた。



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