第27話  ラルカの言葉

「ねぇ、おばあ様。何でお母様がロイル家の後継者なの!?可笑しいでしょ?」


「そうは言っても、私が生んだのはあの子だけだし……。

 私とサランの子供なのに、魔法の力も受け継がなかったし、見た目はサランに似てるから~モーリスもそうね。でも、あなたが全部持っているから良いわ」


 イサベルは微笑んで言った。

 アウグステの祖母、イサベルは奇跡の力を持っていた。

 公式ではないが、時間を遡って、死んだ人間を生き返らせて、現代に連れ帰ったこともあるらしい。

 他にも、サントスに巣食っていた魔物を浄化したりして、その功績は大きく、奇跡の力の持ち主として、サントスでは初めての聖女として敬われている。

 アウグステの母、ロクサーヌはイサベルの生んだひとり娘である。


 アウグステは母が、エル・ロイル家の次期当主として、光の神殿に認められているのが不服でならない。

 夫が三賢人の一人だからと、神殿のことは全く無頓着である。

 お気に入りの若い神官を館に連れ込んで子供まで作っていた。

 事態を重く見た神殿側は、三年後に兄のモーリスが成人するのを待って、ロクサーヌは、妹のナターシャ共々銀の森の追放を決めている。

 いくら、父と母が大神官と聖女でも、神の系譜の者が夫以外の者と契るなど許されるものではない。


「一緒に連れてる猫ちゃんは、なあに?」


 アウグステと同じ銀の髪、銀色の瞳のイサベルが言った。


「おばあ様には見えてるのね……ラルカっていうの。神の眷属よ」


「あら、あら、もう神族はいないと思ってたわ」


「闇の神を捜してるの……ラルカと……後の二人はおまけよ」


「闇の神? それで……」


「おばあ様!?」


 イサベルは、何か思い当たるような様子を見せた。


「何か知ってるの? おばあ様」


「お前は気が付かないのね」


 イサベルは、意味深なことを言ったが、黙ってしまった。


《闇の神は、大山脈の向こうの地で、天に帰ったんだよ》


 ジェダイン・オアシスからここまで、黙っていたラルカが口を開いた。


『その前に、アストリッドとアルフォンソを銀の森に帰らせるぞ』


《駄目だよ、もう遅いよ。まぁ、少しは僕が手を貸さないと、アウグステは勘違いで突っ走るって、良く分かったけどね》


『オアシスの……ハロルドのこと……知ってたんだな!知ってて、行かせたのか?』


《次は、大山脈の向こうだからね》








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