第25話  闇の神?ハロルド

 アウグステは、マーシカとアルフォンソにハロルドの居場所が分かったことを伝えた。


「もう、分かったのか!?」


「油断してたんだろ。向こうに魔法使いがいなかったのが幸いだったな」


 アルフォンソの後ろから、アストリッドが小さな声で話してきた。


「気を付けてね……アウグステ……」


「ああ……」


 いつもの覇気がない。

 拍子抜けのアウグステである。

 だが今は、それ所ではなかった。

 一刻も早くハロルドのいるオアシスに行く必要があった。

 何故か、ラルカは同行を拒んだが。


 アウグステは、風の奥方の痕跡を上空から辿り、小さなオアシスを見つけた。


 粗末な小屋が、ポツンと建っていた。

 アウグステがその中へ入って行くと、薄茶色の髪の男が銀色の縄で椅子ごとグルグルにされていた。

 五人の兵士が、薄茶色の男に近付こうとして、動けずにいた。

 風の奥方が、ハロルドを風の縄で捕縛して、兵たちの動きを止めていたのだ。


「お前が、ハロルド・カットラーか!? 17年前に何があった。」


「何だ!? お前は!! 何者だ!? どうして、此処が分かったのだ!! 此処は、カットラー族長一家に伝わる秘密のオアシスなのに!!」


「お前には、ロイルの加護を持つ者の存在を知らないようだな。

 地上にどんな未練があって来たんだ!! 納得して天上界に帰ったはずだろ!!」


 アウグステは、ハロルドに怒鳴った。

 ハロルドは、キョトンとしていた。

 アウグステが、一方的に怒っていた。


「待て。待て。何のことか分からないぞ」


「五月蠅い!! お前は、闇の神のディハルドと取引でもしたのか!?」


「何を言ってるか分からんが」


 風の奥方の圧倒的な力を前に、ハロルドをはじめ兵士たちはガクブルだった。


「ディハルド神と取引でもして、オアシスの統一でも目指したのか!?」


「だから、その神とは何だ!? 俺は大国ヴィスティンの王族だぞ。

 オアシスの一つや二つ、手に入れたくらいで神殿の介入は無いだろう!!」


 アウグステは、これ以上の追及を止めた。

 彼は違う。そう悟ったからだ。

 ラルカがついて来なかったはずだ。


 アウグステは、近くまで来ていた騎士団の騎士隊長に、この場所を教えてジェダイン・オアシスへ戻った。

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