第24話  捕縛

「東のオアシスか……そこまでで良い。後はこちらで追跡する」


「まぁ、風の精霊を使うのですね?高位の精霊のようですね」


「まあな……休む場所と寝る場所を提供をしてもらいたい」


 マーシカは、族長の屋敷にアウグステを受け入れた。


「風の奥方に探させるのか?」


 とアルフォンソが言ってきた。


「そうだな、広い砂漠でも、東部のオアシスの限定的だ」


「守護の森の騎士も追ってるんだろ!?もし、そいつが闇の神に関係があったらどうするんだ?」


「ラルカに任せる。騎士より先に捕まえることが必要なんだ」


「そうか」


 アウグステは、アストリッドの異変に気が付いていなかった。

 ディナーレから、ほとんど喋らなくなっていたのだ。


 アウグステの魔法の力に、驚いているのかと思っていた。


 アウグステは、族長の館に入ってゆっくりすると、マーシカに頼んで水浴びをさせてくれるように頼んだ。

 アストリッドがついて来ると思ったが、アルフォンソにくっ付いていた。


 アウグステは、館の裏で裸になって、水を浴びた。

 火照った身体に、泉の水は気持ち良かった。


 旅用の服ではなく、動きやすい私用の服に着替えて、あてがわれた部屋に入った。


 集中できるように、部屋に結界を張った。


 部屋の中央にあった長椅子に座って、


「リザベータ、追えるか?」


 <承知ですわ。アウグステ様>


 アウグステの風の精霊が、窓から飛び出して行く。

 その時、ジェダイン・オアシスには突風が吹いた。


『ラルカ、ハロルドを見つけたら、どうするんだ?』


《さあ!?彼と話してみてよ》


『ラルカ!私たちをこんな所まで、連れてきておいてそれはないだろう!!』


《君こそ、おまけを二人も連れてきて邪魔だったらないよ……》


 銀色の猫型神獣は、大きな溜息をついて言った。


『無理やりついて来たんだ!! もう、帰せない距離だろ?』


《ディナーレの中央神殿に、駆け込めば魔法陣で返せたのに》


『でも、学び舎に通報されてしまいそうじゃないか!』


《キサナドが此処にいる時点で、学び舎にはバレてるよ》


 今度は、アウグステが大きく息をついた。


 その時だった。

 アウグステの脳裏に、風の奥方が捉えた視覚が入ってきた。


 <見つけましたわ!アウグステ様。名も無いオアシスです。僅かな兵だけですわ>


「流石に仕事が早いな、奥方。よし!捕縛してくれ。私も行く」


 アウグステは、立ち上がった。


『ラルカも行くだろ!?』


《僕は、此処で待ってるよ。行ってらしゃい》


 ラルカは、アウグステの座っていた長椅子に寝転んで昼寝を始めた。  





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る