第23話 ジェダイン・オアシス
「キ、サ、ナ、ドです。何度言えば覚えてくれるのですか!?」
ジェダイン・オアシスでアウグステを迎えてくれたのは、銀の森にいるはずのキサナドであった。
「名前など、どうでも良いだろ?予見で、先回りをしたのか!?」
「そうですね。ここへ来ることは分かってましたよ」
「なら、教えろよ。カットラー・オアシスの王は何処にいる!?ここじゃないよな!!」
「アウグステ、此処は元のドーリアの王族の住むオアシスですよ。少しは敬って下さいよ」
キサナドに言われて、アウグステは黙った。
「とにかく、母に紹介します」
「ああ……」
ジェダイン・オアシスは中規模のオアシスだ。
昔は、水源の安定しないオアシスだったが、族長の一族に水竜の祝福を受けた子供が生まれたことで、神殿に高額なお金を払って水喚び師に来てもらう事も無くなっていた。
四人はオアシスの中へ入って行った。
初老の女性が、アウグステたちを迎えた。
聞けば、この人がキサナドの母らしい。
「マーシカ・マーロウです、銀の森の銀の姫」
よくよく見れば、この人の瞳は銀色である。
ロイル家の血が入っているのは、間違えではないのだろう。
「母が先の予見師の最後の子供だったんだ。僕は末っ子で、ただ一人の男児だったから、匿われて育ったんだよ」
「おまえが、外でウロチョロするから、見つかるんだよ」
マーシカは、キサナドの頭にゲンコツを食らわせていた。
そして、オホホとアウグステの方を見て言った。
「カットラー・オアシスの王が17年前にすり代わっていた件ですね?」
「なんでそれを……」
「我々が、何もしていないとお思いですか?ソルティ・オアシスとラ・ムゥ・オアシスがカットラー・オアシスの制圧下になっていることはご存じですか?」
アウグステは、知らない。
ナムラ砂漠が、こんなにきな臭くなっていることさえ、知らなかったのだ。
「ハロルドという男は、実に巧妙に王家を乗っ取り、神殿にバレない様に二つのオアシスを掌中に治めました」
「何処にいるのか、分からないのか!?」
「私のカードには、砂漠から出ていないこと、何処かのオアシスに隠れていることしかわかりません。それも、東のオアシスです」
ハロルドという男は、元ヴィスティン王国の王、サウルがカットラー・オアシスに逃げ込んできた後に、現地の女性との間に儲けた子孫である。
自分は、本来は大国の王族のはずなのに、小さなオアシスに閉じ込められているのが、我慢が出来なかったようだ。
というくだりが、マーシカのカード占いから、導き出された。
彼女の占いはピカイチで、遠方から大金を積んで占って欲しいと来るぐらいだった。
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