第12話  ヒントを掴んだぞ!!

「ドーリア王国の王都は、今のヴィスティン共和国の首都だよ。

 そんなことも知らなかったのか?」


 朝食の席でのことである。

 ヴィスティン共和国出身のアルフォンソに、言われてしまった。

 アウグステは、口を滑らせたことを激しく後悔したが、後の祭りである。

 アストリッドが、興味ありげに首を突っ込んでくる。


「アウグステ、ディナーレに行くの?」


「行かないよ。ディナーレに何があるのかと思ってね」


 アルフォンソとアストリッドは、ポカンとした。


「ロイルの姫が何を言ってるの? 三大神殿の一つの中央神殿があるでしょう? 新しいとはいえ、百年は経ってるわ。三振りの神剣の『ダイナス』があるところよ。」


 ヴァーレン皇国出身のアストリッドに、説明されてしまった。


 なぜ、忘れていたのか分からない。

 きっと、古い書物を読み漁っていたから、ちょっと現代のことを忘れただけなのだと、アウグステは自分を納得させた。


「ディナーレ出身のアルフォンソ。

 ディナーレには、ロイルの神殿以外の神殿はあるのか?」


 アルフォンソは、溜め息をついた。


「アウグステ、ヴィスティンが共和国制になってから約百年たつが、その前が王国だったのは知ってるね?」


「そりゃ……」


「王国が解体された原因は、国王一家が隠れて、魔王信仰をしていたからだよ」


「魔王?」


「この大陸に残った魔族を、王家の者が密かに匿って、百年前まで生贄を出してたということさ。さすがに神殿も怒って王家は断絶。その時に聞いたのだけど、闇の神と少し混同され形跡があったらしいんだ」


「形跡?」


「父の知り合いで、ディナーレの市長が、調査で祭壇に入った時にむせ返るような香りの『ゼナ』という西域の花が供えられていたそうだ」


(ゼナの花!!) 

アウグステはヒントを掴んだ気がした。


「王族はどうなった!?」


「もう、百年だぞ。直系の王子はヴァーレン皇国で独身のまま死んだと聞くし、当時の王は、砂漠に逃れたと聞く。こんな事を聞いてどうするんだ!? アウグステ 」


 アルフォンソは、アウグステをジッと見た。


「いや……」


 アウグステはアルフォンソから目を逸らした。

 言葉少なに朝食を食べ終え、アウグステは自室へ戻った。


 今日の授業は、一日抗議だったから、寝てるフリをして行程を練れば良い。


 消灯時間になって、二刻程が過ぎアウグステの部屋の窓が開けられた。

 華麗に、風に乗って空を飛ぶアウグステの姿があった。


 西に向かっている。


 その後を追う影が二人分あることに、アウグステはまだ気付いてなかった。

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