第11話  旅支度

 創世の昔に聖なる光の神、イリアス・エル・ロイルと対なす神として地上に下りた

 静寂なる闇の神、イアン・ディハルド・ディアル


 彼は主に、夜に砂漠を旅する人々に深く信仰されていた。

 砂漠を有する古王国のドーリアの王都、アスタナシヤには、大きな神殿もあり彼を祀る祠には、夜に咲く大輪の花ゼナが、一面に植えられていたという。


 つまり西域で、信仰されていた神なのだ。


 だが、次第に聖なる光の神の教えが西域にも伝わるようになると、ディハルド信仰は廃れていった。

 アスタナシヤの神殿は閉じられ、ディハルド神は僅かな信者と共に、北の大山脈を越えて行った。

 その後のことは、不明だが封印された姿で見つかったのだ。

 しかも、封印が解ける寸前で、彼はその仕打ちに怒っていた。


 そんな時に、最強の精霊使いの少女が、イリアス・エル・ロイルを召喚して、ディハルド神と対峙させた。

 結果、イリアスの説得に応じたディハルドは、共に天上界への帰還を承知したのである。


「こんな所か?」


 アウグステは、自分で調べた資料を皮紙に書き写した。

 神殿の古い図書室に入れてもらって、ディハルド神のことを出来るだけ自分で調べてみた。

 ラルカの言う事だけでは信頼が出来なかった。

 いくら、自らも神の眷属だと名乗っていてもである。


 出来るだけ、自分の目と手で調べたかったのだ。


《気が済んだ?》


 ラルカは、光の神殿からアウグステの部屋まで、ついて来たのだった。


『取り合えず、西域か!? このアスタナシヤの神殿は、今どうなってる!?』


《さあ!? 僕は知らないよ。でも、二百年くらい前にドーリアは滅ぼされてるよね》


 アウグステは、さっと血の気が引いた。


「初っ端から、つまずいてる~~」


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