第10話 闇の神、ディハルド
ラルカは、賢人ティマークの頭の上で、思い思いのことをしていた。
ティマークやザラは、気が付くでもなく、むしろアウグステが固まってたことにおかしいと思ったようだ。
ただ、ユリウス大神官が、ぼんやりと何かが見えているようで、しきりにティマークの頭上を指差していた。
《僕は、心が綺麗な人にしか見えないんだ。三賢人はユリウス神官しか、信用できないなぁ》
『なんてことを言うんだ!! この嘘つき神獣!!』
突然、アウグステが怒ったので、三賢人はビックリしてしまった。
「これ、アウグステ、賢人様の前だぞ!」
「失礼しました、父上」
《僕は、天上界から来た神の眷属だよ。敬って欲しいのになぁ……》
ラルカはティマーク賢人の頭の上で、尻尾を上下に振って言ってきた。
《まぁ良いよ、アウグステ。この時代に伝わる、ディハルド神のことを聞いてみてよ。》
『闇の神のことか?』
ラルカはティマーク大神官の頭を降りて、三人の座る椅子の前に置かれている机の前まで下りてきた。
相変わらずユリウス神官は、その動きを目で追っていた。
「その神獣というのは、まだこの部屋にいるというのですか!?姫。」
「居る……お前たちに闇の神のことについて尋ねてみろと言ってる」
「闇の神!?北の大地に封印されていたディハルド神ですか!?」
ティマークが声を荒げた。
それに待ったをかけたのが、ユリウス神官である。
「ティマーク殿、闇の神ではなく正式には、静寂なる闇の神です。
創世にイリアス・エル・ロイルと共に地上に下りた一つ目と裂けた口の姿が恐ろしいと、後世には彫り物一つ、肖像画の一つも残っていませんが、書物の挿絵に彼の予想図が書かれてるだけです。
彼は、心優しき神だったはずなのです」
「そうね、西域にはディハルド神を祀った祠跡が、幾つか見られるわ。
人は最早、それが何であるかさえ忘れてるわね」
ザラ大巫女が付け加えた。
「何らかの方法で、北の地にいたディハルド神を見つけ、イリアス・エル・ロイルを召喚して、彼らを天上界へ返したのは、伝説の精霊使いです」
「そんな力の持ち主は、今はいないでしょう!?」
アウグステは、神のいない現代では魔法使いになることも大変なのだと知っている。
「謙遜ですな。姫が何をおっしゃいます」
ティマーク大神官とザラ大巫女の二人は、アウグステを囲んで笑い合った。
ユリウス神官は、複雑な顔をしていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます