第8話 アウグステの憂鬱
学び舎の宿舎に帰ると、アストリッドはアルフォンソと共に、アウグステの部屋の前で待っていた。
「夕食、抜きになったでしょう!?あたくしの部屋に国から送って来たお菓子があるの。食べましょう……」
アストリッドは、甘えるように言った。
「要らない。食欲が無いんだ。悪いが、今日は休むから早く、自室に引き上げて欲しい。アル、頼むよ」
アウグステは、アストリッドの肩を抱いて、アルフォンソの方へやった。
そして、自室に入って鍵をかけ、二重に結界の呪文をかけておいた。
この結界を破れるのは、アルフォンソでも難しいだろう。
アウグステが、ちょっと本気を出せば、ここに居る生徒たちなど軽く吹き飛ばせるくらいの魔法の力はある。
でも、学び舎の一生徒としては、「魔法の力を使い過ぎないこと」
が、教授たちとの約束であった。
力づくで出来ない事が、もどかしいこと思うことが多くなってきた。
神殿に、学び舎の教授に、はては友人にまでも、監視されている気分だった。
《ラルカの奴。何処に行けというのだ……》
♦️
「アストリッド、アウグステの気持ちを考えたことはあるのか?」
上等な絹の寝間着に、上質のガウンを羽織っているアルフォンソが言った。
「何よ!?」
「アウグステは、エル・ロイル家の姫だぜ。我々とは見えているものが違うのかもしれない。
今までだって、君の一方的なお誘いに、嫌々ノッテくれてただけなのさ」
「アル!! 言い過ぎよ!!」
アルフォンソは頭から、水を被っていた。
魔法が苦手なはずのアストリッドは、時々思いがけない力を発動した。
*
それを知らないアウグステは、ベッドに入っていた。
直ぐに眠り込んでしまった。
神獣のラルカが、待っていたのかもしれなかった。
《やぁ、神殿に行って来たんだね》
ラルカが夢に現れた。
『あんな未来を言われて、確かめたくなるだろ!? 光の神は失われて久しいが、
この世界の神殿の力は、お前の言うほど弱くないし、世界の安寧を願って作られた、魔法剣や神剣の分身だってあるんだ。』
《神剣……模造品だよね……》
『アフレオスが模造品だっていうのか?』
《人の手で作り上げたものだよ。イリアスの
『伝説の、タナトス・リーア(大陸の名を冠した大巫女)と大賢者、オルランド・ベーカルの時代に納められた、魔法鍛冶の天才と言われた、ライアン・ロイルの作だぞ』
《イリアスの力を分散させすぎたんだ》
アウグステは何も言えなくなってしまった。
『闇の神って、何処にいるんだよ?』
《さあ!?》
アウグステはカチンときた。
『もっと、確実な情報を持って来てから来い!!』
叫んで目が覚めた。
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