第6話  光の神殿

「セルグ師、少し抜けてきます。光の神殿に急用ができました」


 アウグステは、地上に下りるとセルグ師に言った。

 その間にアストリッドが、アウグステの腕に手を絡ませて来る。


「アストリッド、放してくれ。ちょっと、光の神殿に用が出来たんだ」


「いや!!アウグステ、そのまま帰ってこないでしょう!? 光の神殿には、あの人がいるもん」


は、親と三賢人が決めたことだから、私の意思じゃないし私は奴のことなんて、なんとも思ってないよ」


 背の高いアウグステや、アルフォンソより小柄なアストリッドは、泣きじゃくりながらアウグステから離れようとしない。


「アル、頼む……」


「分かった。でも、お前少しはアストリッドに優しくしてやれよ」


「それを私に求めるなと言ってるだろ!!私は女で、アストリッドの気持ちに応えられるわけがないのに。そういうのは、アルの方が得意だろ!?」


 学び舎の中にファンクラブまである、頭脳明晰のアルフォンソである。

 一目で、ロイル家の姫であると分かるアウグステは、皆には近寄りがたい存在なのだ。

 そんな垣根を乗り越えて、慕ってくるのがアストリッドだった。


「ワタシは、自分の性別なぞ、気にしたことは無いぞ」


「それより、を回収してくれ!」


「はいはい、アストリッド、アウグステはまだ学生なんだ。まだ、魔法学見習いコースに分かれて二年だぜ。兄上のモーリス殿が当主の座に就くにしても、後、二年は私達と一緒だよ」


「本当に!? 本当に!? 直ぐに帰って来るわよね!?」


 と、アストリッド。


「当り前だろ。確かめたいことが出来たんだ。アストリッドが、腕を早く放してくれたら、早く帰れるんだ」


 アウグステがそう言うと、アストリッドはすぐに放れた。


 アウグステは、すぐさま風の精霊を呼び出して、銀の森最奥にある光の神殿に飛んで行った。


 この世界のほとんどの国が崇める神、イリアス・エル・ロイルの総本山。

 銀の森。

 その御神体の分身、神剣アフレオスを祀る光の神殿。


 ここは、三賢人と言われる地位の高い神官や巫女が中心になって、世界中に散らばる神殿の中枢になっている。


 当時は、ティマーク大神官、ザラ大巫女、ユリウス大神官が三賢人に選ばれていた。

 ティマークとザラは、年配でユリウスはアウグステの父だった。


 神殿には、神殿お抱えの予見師がいる。

 先代ほどではないが、故郷で隠される様に育てられていたキサナド・マーロウという少年が、神殿所属の魔法使いの手で見出されて、6年前に神殿へ来た。


 そして、アウグステは認めてないが、遠くエル・ロイル家の血を引くというキナサドと許婚家にされてしまったのである。

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