第5話  神獣が教えてくれた未来

『なぜ、今なんだ?』


《彼がこの時代を選んだのか、だね!?この時代が一番神殿の力が弱くて、後の世で世界を握りやすいんだ》


 ラルカは言った。

 アウグステは、首を傾げた。


『神殿の力が弱いだと?』


《そう、神のいない今だよ。今までこの世界は、神殿の力が強くて、守護の森が各国を見張っていた。でも、これから先は神殿の力はもっと弱体化していくだろう。

 守護の森の騎士達だけでは、抑えられない戦乱が起きてしまうだろう……》


『本当に、そんな時代が来るのか!?』


《来るよ、今が最後の平和だよ。彼は以前、人に忘れられた存在だったんだ。人の世に下りたら、支配したいと思うのは当然のことだよ》


 ラルカは闇の神が、将来において世界を支配しようと考えていると言った。


《光の神、イリアス・エル・ロイルが世界中の人に愛されたようにね》


『愛されたのと支配するのは違うだろう?』


《これは、憶測だよ。まだ闇の神、ディハルドが地上に下りた原因は不明なんだ》


『だったら、これから戦乱の世が来るとは限らないだろ?』


《これは決まっている事実なんだ。でも、君なら止められるかもしれないよ。君は奇跡の力の持ち主、イサベル・ルースティリアの直系だから……。 それに彼は、純粋な乙女の言葉しか、心を開かないんだ》


 ラルカの言葉にアウグステは、現実味が無くて困惑していた。


《ねぇ、僕と一緒にディハルド神を捜しに行こうよ》


『そう言われても……私は学生だぞ……おばあ様の力だって、そこまで強く受け継いでないし……』


《僕のことが視えるのは、もう十分に魔力があるってことだよ》


 アウグステは、溜息をついた。


【アウグステ・ルースティリア・エル・ロイル】


 セルグ師が本名で、呼びかけてきた。


【今すぐに、皆の所に戻りなさい】


 頭の中に、直接響いてきた。


《無視できない、呼び出しだね。詳しいことは、また今夜夢で話すよ》


 ラルカは消えた。

 鮮やかな瞬間移動だ。

 アウグステは、上空からスーッと下りてきた

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