第4話   神獣の言葉

 アウグステが飛ぶと、神獣は二度三度場所を変えて姿を現した。

 その度に、アウグステは追う羽目になる。


『お前と、鬼ごっこをする気はないんだぞ!!』


 木の天辺まで行って、猫型神獣は笑みを浮かべた。

 アウグステはこれ以上逃げられないように、神獣より高く宙に浮いていた。


「凄いわ!! アウグステが宙に浮いてる!!」


 アストリッドが声を上げて言った。


「風の精霊を操るのが、とても上手なのだろうな」


 アルフォンソやアストリッドの周りに何事かと、クラスメイトが集まってきた。

 神獣のラルカがそれを見つけて、


《もっと、上に行こうよ》


 と、アウグステを促した。

 そのまま、一人と一匹は、肉眼では見えない程、上昇していった。


『本物のラルクか?』


《そうだよ。やっと、会えたね。ロイルの姫》


『その名で呼ぶな!! 不愉快になる』


《でも今回、君が選ばれたのはロイル家の者だからだよ》


 アウグステは、あからさまに不機嫌な顔になった。


《綺麗な顔が台無しだな。せっかく、おばあさま譲りの顔してるのに》


『こんな顔で生まれたかったわけじゃない!! ついでに、エル・ロイル家にもね!!』


《困ったな~ 僕は、いっしょに旅をしてくれるように頼みに来たのに》


 神獣は言った。


『旅って、闇の神が地上に降りたって話か? それは神の領分だろ!?』


《神は、もう人間界には干渉しない。ってのが、今の天上界のルールなのさ》


『散々干渉しまくりで、子孫まで残していく神のいうことなんか聞けるか!!』


 アウグステは、思わず本音を言ってしまった。

 ラルカは笑っていた。


 樹の下ではアストリッドが泣きじゃくっていた。

 アストリッドは、自分が魔法が苦手なことよりも、アウグステに近付きたいと思う気持ちの方が強かった。

 可愛い巻き毛のアストリッドは自分の黒髪が大嫌いであった。

 闇を匂わすような黒髪。


 アストリッドは、古王国のヴァーレンの貴族、候爵家の出身である。

 八人兄弟の五人目で、母親が流れ星を見てから、アストリッドを宿したことを知ったのだった。この子には魔法の力あるかもしれないと信じて、学び舎に送られたのだった。

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