第3話  神獣、ラルカ

 リドムの葉の間にチラチラと見えた、銀色に光る毛並み。

 アウグステは、直ぐにその木に向かって走り出した。


《夢で見た神獣だ!!》


 アウグステは、そう直感した。

 アウグステがクラスの輪から飛び出したので、アストリッドが直ぐに後を追ってきた。

 その後をアルフォンソが……。


『待て!! お前は私の夢に出て来るラルカだろう!?』


 古代レトア語で、話しかける。

 神獣は、アウグステの後ろから着いて来た、人間を見て木の高い所へ移動していく。


 後ろから、アストリッドと、アルフォンソがついて来ているのに気が付いて、アウグステは舌打ちをした。


「これは、私の領分だ。ついて来るな!!」


 そう言うと、風の精霊を呼んで、華麗に樹の上まで飛んで行った。


「アウグステ~~」


「ここは、下で待とう」


「アルなら、上に行けるわよね?」


 アストリッドが涙目で言った。


「行けるが、そうしたら、アウグステは更に上に行くだろうな」


 アストリッドをたしなめるように言ったが、自らの力とアウグステの力を思い知らされていた。


 アルフォンソの家は、大陸屈指の共和国ヴィスティンの豪商だった。

 本来なら、銀の森の学び舎と並ぶ、名門のアルテアの王立学院に入学している所だ。成金の親がお金を出せば誰でも、学び舎に入って、魔法使いになれるというデタラメを信じて、ここに放り込まれたのだ。確かに、学び舎の学費は高い。

 神殿で、魔法使いとして見出されて、学費が免除になっている子もいるが……。

 だから、アルフォンソは、人一倍勉強をした。

 でも何もしないで、いつも気怠そうにしているアウグステには、何一つ勝てないのだ。


 彼女はエル・ロイル家の娘だ。仕方のないことなのだ。


 この世界は、魔法使いは血統で決まることが多い。

 それでも、精霊使いが少なくなってきて、呪文が確立されてきた現在。

 以前よりも、魔法使いの門戸は幅広くなったとはいえ、一流になるのは狭き門である。


 アルフォンソは、アストリッドの黒髪を撫でつつ溜息をついた。

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