第2話  幻

 今日はの午後の授業の教授は、厳しいことで有名なセルグ師である。

 その代わり、セルグ師の授業に最後までついていければ、一流の証のロイル姓が貰えるとまで言われているのだ。


 聖なる光の神の子孫である、アウグステ・エル・ロイルには関係のないことだ。

 だが彼女は、何故かここに居る。

 屋敷にいると、兄には目障りなのだ。

 兄のモーリスには銀色の髪も瞳も、ロイル家の者なら受け継ぐべきものが、何も無かった。魔法の力さえ……

 灰色の瞳と、金色とも銀色言えぬ、不思議な色の髪の色。

 だが、顔は父親にソックリであった。



 彼が5歳の時にアウグステが生まれたが、その時には既に時代の当主として神殿に認めさせていた。

 アウグステの魔法を見るたびに不機嫌になるモーリス。

 不満を爆発させたモーリスが、アウグステに手を上げた時に、両親や神殿の神官、巫女たちが話し合って、彼女を学び舎に入れたのである


 以来十年、誕生日ごとに両親が会いに来てくれるだけだ。


 今日は水の魔法の授業だった。

 精霊呼びの呪文を何人かに唱えさせていた。

 アルフォンソは、抜かりないと言っただけに、綺麗な呪文で精霊を呼んだ。

 彼女は頭脳明晰だったが、努力家でもあった。

 アストリッドの番になった。

 彼女はチラリと、アウグステの方を見た。

 目が助けてと訴えている。


 アウグステはわざと目を逸らした。


 案の定、魔法が得意ではない、アストリッドは頭から水を被っていた。

(精霊を怒らせたな……)

 他の皆は笑っていた。


 ここで、アウグステの名が呼ばれた。


「みんなに、手本を見せてやりなさい」


 セルグ師は言った。

 かなりご老体で小柄なのに、がっしりした体格は衰えていない。

 そんな事を考えながら、リドムの樹を見た。


 リドムの銀色の葉が一年中枯れないことから、銀の森と呼ばれる所以の樹。

 キラキラ光るリドムの葉とは、違った光の影をアウグステは見つけたのだった。

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