神獣が教えてくれた未来 ~乙女たちは闇の神を捜すために旅立つ~

月杜円香

第1話  神獣の夢 

 アウグステは、毎夜同じ夢を見ていた。

 ほんのり銀色に光る白く長い毛並みの猫と話す夢だった。

 猫は、古い言葉の古代レトア語を話し、学び舎で魔法学を専攻していたアウグステと会話が成立したのである。


 猫は自らを神の眷属、神獣ラルカと名乗った。

 神の眷属である猫は言う。闇の神は天上界へ帰ったはずだが、17年前に地上に降りた様だ。


《ずっと、君に語りかけていたよ。だって、君は……だからね》


 そこで夢は、いつも終わった。

 言いたいことは、分かる。

 私が……


 と、アウグステが思いかけて、咄嗟にベッドから離れた。

 間髪を入れずに、ドアが開いてベッドの上に黒い巻き毛の女の子が飛び乗って来た。


「アウグステ~~」


「アストリッド、よく見ろ。ベッドはカラだぞ。少し遅かったな」


 長身のプラチナ色の短髪女が言った。


「アストリッド!! アルフォンソ!! 毎日毎日、私を起しに来るのは止めてくれと言ってる!!」


「なぁぜ!?」


「何故って……」


 言いかけて、アウグステは困惑してしまう。

 アストリッドのあまりにも無邪気で、純粋な緑色の瞳に見入られると、何も言えなくなってしまうのだ。


「アル!! アストリッドを止めろよ」


 アウグステは、アルフォンソを見て言った。

 プラチナの髪を右分けにして、耳にかけてる凛々しい男装の麗人だ。


「ワタシは、アストリッドを愛してる。彼女の望むことをしてるだけだよ」


 アウグステはベッドに座って大きく溜息をついた。

 長く伸びた銀色の髪が顔の方に垂れて来た。

 それを手でかきあげると、大きな欠伸をした。


 アストリッドが、アウグステの長いストレートの銀髪にブラシを入れていく。


「流石に、エル・ロイル家の直系の血ね」


 後ろで大きな三つ編みをすると、アストリッドが大きく息をつきながら思った。


 (また余計な事を……)

 とアウグステは思う。


 この瞳と髪のせいで、どれだけ生きるのが面倒だとアストリッドは分かっていない。

 憧れさえ抱いてる。

 自分は、古王国の貴族の出身なのに。


「今日の魔法学は、セルグ師の実習だよ?」


 アストリッドに言ってやると、途端に彼女は顔が歪んだ。


「アルはどうなんだ!?」


「抜かりない」


 アルファンソは正々堂々と言った。

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