第3話
スマホの真っ白な画面に「アカウントが存在しません」の黒文字だけが映っている。またフォロワーがアカウントを消した。もう何回こんなことがあったか覚えていない。
少しは仲良くなれた人もそうでもない人も、皆アカウントを消していく。新しく作成された病みアカの寿命は精々一週間がいいところだった。
病みアカで女を探し始めて一ヶ月が経ったが、僕は未だに誰ともセックス出来ていないし会えてもいない。部屋の中が徐々に汚くなっていた。うねった陰毛が落ちている。
別に何の努力もしていないわけではない。ゆかりさんの言う通り髪は暗めの茶色に染めたし、好きでもない煙草を三日に一度は吸うようにしていた。フォロワー数だって常に一桁。
『煙草辞めないとって思うんだけど、どうしても辞められない。』
入力してツイートボタンを押す。適当な漫画の一コマをアイコンにした「ユウ」というユーザーのツイートとしてタイムラインに追加された。
煙草とスマホを持ってベランダに出る。虫の死骸と葉が落ちている中、煙草に火を付けた。味の良し悪しは相変わらず分からなくて、臭さと煙たさしか感じない。
未だに肺に入れたことのない煙を吐きながら罪悪感を感じる。こんな僕を眞由華先輩が見たらどう思うのだろうか。都会に染まったと笑うだろうか。案外大丈夫でしょとからかってくるのだろうか。
煙草を置いてヘアゴムを握ると、少しだけの罪悪感が消えていく。すっかりこのルーティンは僕に染み付いていた。
ポケットの中でスマホが震えた。画面にはDM通知が表示されている。よく来る怪しい勧誘かと思ったが、送り主は唯一アカウント作成当初から僕をフォローしてくれている「愛」というユーザーだった。
『ユウさん、初めまして。相談したいことがあります』
思えば愛さんとはリプライも交わしたことがなかった。愛さんのアカウントはたまにメイク用品ブランドのリツイートをしているだけだから、どんな人なのか何も知らない。二百近いアカウントをフォローしていたが、フォロワー数は二十しかいなかった。
『初めまして。何でしょうか』
『敬語じゃなくて大丈夫ですよ。私の方が年下だと思うので』『東京に住んでいるんですよね?』
『まあ』
曖昧な返信をした。赤の他人におおまかにでも個人情報を知られているのは怖いことだ。推測出来るようなツイートをした僕が悪いのだけど。
『タバコ吸わせて貰えませんか。未成年だから買えなくて』
すぐに返ってきた返信は中々にサブカルだった。呼吸が浅くなったことを自覚する。汗の滲んだ指で画面をスワイプした。
『すぐ買えるようになりますよ』
『今すぐにでも吸いたいんです』『何年も待てません』
多分愛さんは女性だし、一六とか一七とかの未成年なのだろう。彼女がゆかりさんの言うバカマンコなら、これはまたとないチャンスなのだと思う。
じゃあ、会いますか。そう送れば恐らく愛さんは来る。そういう危うい人だと思った。
この一ヶ月、何も出来ていない自分に内心ではほっとしていたのだ。ヤリモクなんて僕に出来るわけないと高を括っていた。
いざどうにかなってしまいそうになると、鈍い恐怖が僕を蝕んでいった。煙草吸うなら見られちゃいけないね、って言えばホテルに連れ込めてしまうところまで想像出来てしまう。僕の指先一つで、全てのお膳立てが完了してしまう。
一切素性の分からない相手とセックスなんて出来るのか、これは悪いことではないのか。不安の中に眞由華先輩への想いとか声とかキスの味とかが混じって気持ち悪くなった。
酸っぱいものを抑えながら、手首ごとヘアゴムを握った。馬鹿みたいに早かった心臓が少しずつ落ち着いていく。僕の中には眞由華先輩との記憶だけが残っている。また会いたい、振り向いて欲しい。僕はそれだけだった。
左手で右手首ごとヘアゴムを握りながら、右手でメッセージを打つ。
『吸いますか? 一緒に』
そう送る。心臓の形が明確になる。メッセージはすぐに返ってきた。
『ありがとうございます! お願いします!』
脳の中が熱い。チンコは熱く勃起している。ヘアゴムが触れている手首までもが熱い気がして、気持ち良かった。
× × ×
午後二時。待ち合わせ場所のコンビニがある路地に入った瞬間、一気に空気が重たくなったように感じた。車一台がぎりぎり通れるくらいの細い道を、三階建てくらいの建物が囲むように建っている。
ここは本当に東京なのかと疑ってしまうくらいに陰鬱な場所だった。つい数分前まで電光掲示板やビルが並んでいたのに、急に別世界のように雰囲気が変わっている。
やっぱり騙されたのかも知れない。真っ先にそう思った。愛さんとのDMを開き、三日前の会話ログまで遡る。思わずため息が出た。
『愛さんが未成年なら、捕まらないようにしないと駄目ですね』
『親に知られたら終わりです』『こことかどうですか?』
添付されたURLを踏むと、ホテル・オブリージュという古臭い感じのラブホのサイトに飛んだ。
これが送信されてきた時、正直愛さんを怪しんだ。急にDMをくれただけでも相当ご都合的な話しだったが、ここまで露骨だと何か危ないことに巻き込まれるのではないかと思ってしまう。確かに最終的にはホテルに行くよう上手く誘導しようとは思っていたが、相手から誘われるとどうにも不審に感じられた。
『ここラブホじゃなくて、私でも入れるんです』『Q&A見て下さい』
サイト内Q&Aのページには、「一八歳未満でも利用出来ますか?」という質問があった。回答は「当ホテルは風俗営業法の定めによるホテルではございませんので、一八歳未満のお客様でもご利用頂けます」。
こんなに胡散臭いことを堂々宣うラブホは中々見つけられないだろう。普通は建前だけでも未成年の利用は禁じるだろうし。
こんなにお誂え向きの場所をパッと送れる愛さんはやっぱり疑わしかった。会わない方がいいのだろうか、とも思った。強面のオッサンに囲まれたらどうしよう。そもそもこのホテルってそういう取引とかに使われたりするのかも。心配しだしたらキリがなくて、もう断ってしまおうかとも考えた。
それでも目の前にヤれるチャンスがあるという誘惑には勝てなかった。どれだけご都合的で怪しさたっぷりでも、相手が女でラブホにさえいければワンチャンあるのだから。もし騙されていたのなら全力で逃げればいい。その時はそう思って『じゃあここにしましょう』と返信した。
その結果がこれだ。思ったよりアングラの香りがする路地に棒立ちしながら嘆く。
今からでも帰ってしまおうか。いやでも、これを逃すといつ眞由華先輩に会えるか分からないし。考えが纏まらないまま、その場を意味もなく歩き回る。
手の中でスマホが震えて取り落としかけた。バクバクと鳴る心臓に手を当てながら通知を見る。愛さんからのDMだった。
『すいません、ギリギリになっちゃいますけどもうちょっとで着きそうです』
辺りを見渡したが、見渡しが悪すぎて二メートル先の建物以外が確認出来なかった。愛さんが見える位置に来る時、もう僕は逃げられない。そう思うと頭の中が急激に冷えていった。
『どんな服着てますか?』
通知にはそう映されていた。身体は硬直して動かない。服装を教えてもヤバそうだし、教えなかったらそれはそれで怒らせてしまいそうだった。数秒が長く感じられて息が詰まる。
近くで小石が踏まれる音がして、思わず「ひっ」という声が出た。振り向けない。都会ならここで人生が詰んでもおかしくないと思った。
「……トモさん?」
掛けられたのはアニメで聞くような萌え声で、少なくとも強面のオジサンではなかった。ゆっくりと身体を声の方に向ける。
「愛、さん?」
後ろに立っていたのは、僕より身長が二〇センチは低いであろう童顔の女の子だった。薄いピンクと黒が基調のワンピースを着ていて、真っ黒の小さなハンドバックを抱えている。長い黒髪はツインテールに結われていて、根本には明るいピンクのヘアゴムが付けられていた。おまけに小さな黒いリボンまで付いている。
「DM返して下さいよ、もう。違ったら恥ずかしかったです」
愛さんはそう言ってはにかむ。普通の女の子だった。地雷系の服を着ているだけで、極めて普通の女の子。
「……すいません」
「敬語じゃなくていいんですよ。その方が落ち着きますから」
右手首のヘアゴムを指で転がした。ずっと抱いていた緊張が、何かへと変わっていく。
部屋は案外広かった。黄のかかった照明、光沢のある茶と白のダブルベッド。枕元に置いてある電動マッサージ機が悪目立ちしている。安っぽい机の上には灰皿があって、未成年が利用できる場所じゃないことは確かだった。
「こういうとこ、初めて来た」
「茶髪なのにですか?」
「これは……ほら。大学デビューだから」
未だに愛さんが普通に女の子だったことが信じられなくて、上手く口が回らなかった。物珍しそうに部屋を見渡す彼女に現実味がない。
ワインレッドの椅子に座り、リュックの中から煙草を取り出す。いつもは惰性で吸うだけだったけど、今日は煙の味が恋しかった。
「煙草なんか、何で吸いたいの」
「どうしてでしょうね。吸ってみたかったんです。格好いいじゃないですか」
「退学のリスク背負ってまで?」
「もう高校辞めましたから大丈夫です。……あ、違いますよ。流石にタバコ吸いたくて辞めたわけじゃないですから」
そう言って対面に愛さんが座る。何も大丈夫じゃなかった。
「それより。今日ユウさんに会えたの、凄く嬉しかったんですよ。正直来てくれないかと思ってましたから」
「僕も思ってた。騙されて怪しい人が来るんじゃないかって心配で」
「何ですかそれー。ちゃんと下調べたくさんしたんですよ。中々見つからないんですからね、未成年でも入れるラブホテル」
とんとん、と彼女は煙草の箱を爪で叩く。煙草を吸う時点で駄目なのだから、ラブホなんてどこでもいいじゃないかと思った。
煙草を一本差し出すと、愛さんは少し間を開けて受け取った。表情からは何の感情も読み取れない。彼女は煙草を唇の真ん中に咥えて、どうやって吸うのかと言わんばかりに首を傾げる。詳しい年齢は分からないけど、年相応な感じの幼さがあった。
ライターを渡し、吸って吐くだけだよと顔も見ずに言う。さっきまで有耶無耶になっていた罪の意識はまだ消えていなくて、縋るようにヘアゴムを見た。
何度かライターを使おうとする音がして、数瞬の合間の後に激しい咳込みが聞こえる。愛さんが苦しそうに胸を抑えていた。
「大丈夫⁉」
慌てて立ち上がり、少しの躊躇を振り切って愛さんの背中を擦った。彼女の背中は小さい。ブラの紐がうっすらと感じられて、下心を見透かされたような気分に思えた。
「大丈夫……なんですげど。不味すぎまぜんか。煙たいだけじゃないですか」
「僕も美味しくはないと思う」
「じゃあ何で吸ってるんですか……」
セックスするためだよ、とは言えなかった。まだ咳が止まらない愛さんの背中を擦りながら、机の上で煙を止めない煙草を殺す。
すいません、と言い愛さんはベッドに横になった。仰向けで深呼吸をする彼女の胸が上下している。
「はー。タバコってやっぱり不味いんですね」
「やっぱり、って。元々味には期待してなかったの?」
「……ユウさんもこっち来ましょうよ。ふかふかですよ?」
軽く顔をこちらに向け、愛さんはぽんぽんとベッドを叩く。微妙に会話が噛み合わないのが気持ち悪く感じた。言われるがままにベッドの端に座る。
数分が無言のまま過ぎていく。外からクラクションの音が何度も鳴った。
「ユウさん」
とん、と背骨の辺りに小さな手が当たる。愛さんは体勢を変えていないのに、声が急に近くで聞こえたようだった。
「ごめん。体調、どう?」
小さな声でそう返す。抑えても抑えても溢れてくる罪悪感とか色んなものが邪魔だった。
「……あたしね、先輩にレイプされて学校行けなくなっちゃったんですよ。最悪でした。馬鹿みたいに痛いし、三人ともブサイクなんですもん」
彼女も小さな声でそう言って、軽く両腕を僕の腰に回す。気付いていなかったが、腕には無数の傷跡があった。木を傷付けた時に出来るような線が痛々しく映る。リスカ痕はやけに僕の心を不安にさせた。
「あの日がずっと夢に出るんです。とにかく、とにかく気持ち悪くて。だから何ていうか。ヤリモクですよ、あたしも」
「あたしも、って。そもそも話しの繋がりが」
「そもそもヤリモクじゃなかったら、あんなあからさまな誘い乗ってくれないと思いますけど。……私だって、正直誰でも良かったんです。ユウさんのツイートがちょっと気に入ってただけですよ。タバコなんか口実です」
ボロボロの腕が僅かに震えている。自分でも理解の出来ないことだったが、それでも僕のチンコは全然収まらなかった。
「上書きして欲しいだけです、あたしは。あの人達とのセックスが夢に出ると本当死にたくなるんですよ。他の人とセックスしたら何か変わるかも知れないんです。抱いて下さいよ。男の人って好きでしょ、こういう楽な女」
どこが楽な女なんだよ、と思う。腕には大量のリスカ痕があって、重いトラウマ持ってて、完璧な地雷系だ。それでも僕は彼女とセックスがしたいと思った。彼女とセックスをしてヘアゴムを貰って、眞由華先輩に会いたいと願った。
振り返ると、彼女は笑っていた。痛々しくて見ているのが辛い。
右手首を握る。抱いている感情の名前なんか分からないまま抑え込んだ。
照明を暗めに落とす。ワンピースの脱がせ方が分からなくて、愛さんに自分で脱いで貰った。その様子は妙に滑稽で、緊張が幾らか解れた。
愛ちゃんの下着は上下ともに黒でレースが付いていた。パンツを脱がせ、彼女の性器を触る。自分のモノはチンコと言えるのに、女性のモノを性器としか言えないのは何なんだろうかと思う。
パンツを脱ぎ、放る。枕元の箱に二枚入っていたゴムを付ける。少しサイズは大きかったが、何とか根本まで降ろせた。こんな状況でも愛さんはヘアゴムを外していなくて、やっぱりヘアゴムって神聖なんだと頭の片隅で思う。
愛さんが「ゴムなんてしてくれるんですね」と言った。一瞬ヘアゴムのことかと思う。
チンコを彼女の性器に擦り付ける。水音がした。手の平を置いている彼女の脚は少し震えていた。怖くないわけがないよな、と他人事のように思う。
しばらく挿れる所が分からなかったが、チンコを擦り付けている内に穴に引っかかった。
「……いい?」
「聞いてくれるだけ優しいと思います。……どうぞ」
ちぐ、という濡れたモノが潰れる音。僕のチンコが肉を掻き分けていく。チンコはどんどん熱くなりながら愛さんの中に入っていった。愛さんが濁音の付いた苦しそうな声を出す。
「……動いて、いいですよ」
返事はせずに目を瞑る。ゆっくりと腰を動かした。
愛さんの中は熱くて、性を強く感じられた。チンコが出て入る度に根本が膨らむようで、これがセックスなのかと思う。贅沢過ぎるオナニーと言えば聞こえは悪いけど、イけそうな感じのあるこの行為は確かにセックスでオナニーだ。セックスとオナニーは同じもので、セックスはイケない行為だけどオナニーはイける行為。セックスはオナニーに内包されているものなのではないかと、腰を動かしながら思った。セックスは贅沢なオカズなのだろうか。
どのくらい同じことを繰り返していたか分からない。急に全身が熱くなって、頭の中が快楽と熱に支配される。頭が爆発しそうなくらいに熱くてぐちゃぐちゃだった。その熱をどうにか逃さないといけなくて、僕は全身を使って動いた。意味の分からないシュールさだけど、気持ち良さがそれに勝る。
愛さんの声も、性器同士が接触する音も、自分の息の音も聞こえなくなった。ただ快楽に全てが食われて、熱が僕を埋め尽くしていた。眞由華先輩のヘアゴムと、愛さんのヘアゴムが交互に頭でチカチカ光っている。
急に身体が軽くなって、全身から熱が抜けていった。チンコが震えている。身体は重くて、愛さんの息は荒くて、頭の中が酷く水平だった。
よろけるように身体を後ろに引く。ゴムの中には精子が多く出ていて、相変わらずてらてらと気持ち悪いフォルムだった。
「……イっ、た?」
ゴムを見ながらその現実を噛み砕く。虚脱感、達成感、精子。そういうのがチンコから垂れてきている。
「ユウさん」
「愛さん、僕」
「嫌。こっち見ちゃ嫌です」
愛さんは布団で顔を隠していた。彼女の声はワントーン高くなっている。ズボンを履いていないことが場違いに思えた。
「私、ちょっと泣いちゃって。酷い顔だと思うんです。……気が付いてましたか?」
いつ泣いていたのか、僕には全く分からなかった。ただセックスというオナニーに夢中で、愛さんのことなんて見る余裕なんてなかった。
「ごめんなさい。ちょっとだけ怖いです」
「……ごめん」
「あたしも、ユウさんも。二人共自分勝手だっただけです」
互いに何も言えない時間が続いた。空調の音とたまに愛さんが鼻をすする音だけがこの空間にある。動くとこの空気が壊れてしまうように思えて、ただじっとヘアゴムを見つめることしか出来なかった。
「今日は、先に帰ってくれませんか」
彼女は静かにそう言った。返す言葉なんて一つも持っていなくて、無言のまま服を着る。
最低なことをしてしまったのは分かっていた。セックスが出来たとはいえ、相手が泣いていないことに気が付かないのは最低だ。その後ろめたさはどれだけヘアゴムを握っても消えなくて、胸を圧迫している。
リュックを背負う。……最後に、彼女からヘアゴムを貰わなければいけなかった。まだ愛さんは布団の中で、結われたままの髪が覗いている。ぎゅ、と右手首のヘアゴムを握った。
「あの。ヘア、ゴム。貰えないですか」
「……はい?」
愛さんが不思議そうに低い声を出す。顔は見えないけど、きっと困った顔をしているだろう。当たり前だ。文脈も何もあったものではなくて、自分でも意味が分からないと思う。
「違う。不純な理由とかはなくて、ヘアゴムを貰わないと今日のことが無くなるから。僕なんかとしてくれたのに、それを無かったことにしたくなくて」
「何でヘアゴムなんですか?」
「一番。一番ヘアゴムって丁度いいやん。貰っても罪悪感がないけど、女の人に一番触れているものってヘアゴムだから」
「変なの」
それだけ言って、彼女はごそごそと布団の中で動く。傷だらけの腕が布団の腕に出てきて、そっと黒いリボン付きの明るいピンクのヘアゴムが置かれた。手にとる。確かな存在感があった。
「……ごめん。ありがとう」
「その代わり、また会って下さいね。お話しして下さい。ちょっとしたしょうもない話しなんかでいいです。あたしがセックスした人は普通の人なんだって、もっと思わせて下さいね」
「うん。また、今度」
愛さんからは何の返事もない。静かにドアノブを回し、廊下に出る。
手の中には確かにピンクのヘアゴムがある。現実味のない達成感とうねる罪悪感が僕を包んでいた。
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