episode.4 接触注意!すり鉢の恐怖!
悪路を例えた言葉シリーズ、第二弾。
前回は”そろばん”――――今回は”すり
ここまで「ゆきぐにドライブ!」を読んでくれたみなさんなら、なんとなくどんな道路か察しがつくのではなかろうか。
ちなみにわたしは、そろばん道路よりもこの”すり鉢”道路の方が怖い。
*
――ズッ。
AM7:20。家の玄関を出た瞬間、新年早々に足を滑らせる。
夜から早朝にかけて凍った雪が、日が昇って溶け始め、スケートリンクになっているのだ。
「…………」
正月休み明けの初出勤。色々と覚悟を決めて出てきたのに、早くも帰りたい。
*
「……まじか」
ここを行くのか。
目の前に広がる、車線が半減した道路を見て絶句する。
家を出てすぐの、住宅街の小路。距離にして数百メートルほどしかない道路だが、ここを抜けないと幹線道路に出られない(=職場にも行けない)。狭いけれど、地味にいつも交通量の多い通り。そんな道があなたの家の周りにもあるだろう。
もともと道幅が広くないこの通り、雪が降ると恐ろしいことになる。本来対面通行のはずが、車1・5台分しか無くなっている。それもそのはず、道路の両脇が雪でかっちかちに固まり、道路の縁に向かって緩やかにカーブを描きながら高くなっているのだ。
横から見た形は、まさに――――”すり鉢”。
スケートボード競技で空中一回転する時に使う、お椀状のコースのようである。
車が走っていいコースではないことは確かだ。
向こう側から来る車が、30度くらい傾きながらヨロヨロと進んでくる。悪いことに路面は凍結。つるつるすべすべのすり鉢型道路である。ちょっとアクセル加減を間違えると横転すること間違いなし。
――よくもまあ、こんなに綺麗にすり鉢型になるものだ。
これからここを通過する恐怖を忘れて感心してしまう。
そして信じ難いことに、なんとここは通学路の一部。今は小中学校ともに冬休み中なので、歩行者が少ないのが幸いだ。
大きな車やトラックはすれ違えないから、どちらかが道を譲る。(この辺の空気の読み合いに関してはさすが雪国ドライバー。みんな上手い) 道に入る手前で止まって車を待ったり、人の家の敷地にちょっと入って避けたり。パッシングやクラクションを駆使して譲り合う。
すれ違う時は、緊迫の一瞬だ。車と車の距離が10㎝を切るときもある(ああ怖い)。きわどい時はお互いにミラーを折りたたみ、ナメクジもびっくりするようなスピードですれ違う。歩行者がいれば、歩行者にもにも気を遣わなければいけない。
みんな、神経をすり減らしながら運転しているのだ。
――どうでもいいけど”すりばち”ってポケ〇ンの技名にありそうだな。
現実逃避気味のわたしは、30度傾きながら、そんなことを思った。
【ゆきぐにマメ知識】
*
雪国にしかない物といえばこれ。道路沿いにある、雪を流すために作られた水路のこと。側溝のような見た目だが、川から引いた水がごんごん流れている。夏場や普段は蓋がしてあるが、使いたいときに自分で開けて雪を捨てることができる。
みんなここを開けっ放しにして雪かきをしているので、ボーッと歩いてると蓋が開いてる流雪溝に落ちる。
使用料は自治体によって異なるが、一冬1000~3000円くらい。
☆★予告★☆ 次回、ついに最恐道路現る!?
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