第15話 褒めて──
◆
「……来たわよ」
ホントに来た。
放課後。約束の公園で待っていると、地雷系ファッションに身を包んだ地雷ちゃんがやって来た。
前はピンク系だったけど、今日は黒系。
チェーンも結構付けてるし、闇が深そうな印象。
まだ羞恥心が残ってるのか、頬がほんのり赤い。
いや、これもメイクの力なのか?
でもそのおかげで、見た目は闇深そうなのに、初々しさがある。
なんと言うか……グッとくる感じだ。
この間は一瞬すぎて気付かなかったけど、意外にも耳にがっつりピアスを付けていた。
結構エグいというか、派手なピアスだ。
主張の激しいトゲ状のピアスや、チェーンピアスも付けている。
そっか、学校だと髪で隠れていて、見えないんだな。
だから気付かなかったのか。
じっくりと観察していると、地雷ちゃんは恥ずかしそうに身を捩った。
「な、何よ。そんなにじっと見てきて」
「あ、すまん。やっぱ似合ってるなと思って」
「かっ……からかわないで」
からかってるつもりはないんだけど。
まあ、男の俺が言っても信じられないか。
特に俺、地雷ちゃんからヤ〇チン認定されてるし。
と言うことで、ここで女の子に出てきてもらいましょう。
「月乃」
「あーい!」
にょき。俺の後ろから出てきたのは、元気いっぱいの月乃。
突然の登場に、地雷ちゃんは目を見開いた。
「え、ぁ。な、何……!?」
「前に会ったろ。月乃だ」
「そ、それは覚えてるけど」
いきなり第三者が現れて、動揺している地雷ちゃん。
けど月乃は関係なく、ずずいと地雷ちゃんに近付いた。
月乃って俺以外の同い歳に会うのは初めてだと思うんだけど、距離の詰め方がエグいな。
これも、持って生まれたコミュ力故か。
「こんにちは、地雷ちゃん!」
「こ……こんにちは……って、地雷ちゃんって呼ばないでっ」
「えー、可愛いと思うけど」
「むぐっ」
月乃の直球の言葉に、地雷ちゃんの口角が少し上がる。
その隙に、月乃が地雷ちゃんに近付いて手を取った。
「近くで見ると、本当に綺麗な顔してるね。整ってる顔が、メイクで際立ってる。髪色も、ピアスも、服も、とっても素敵だよ」
「え、あの、その……」
「目元の涙袋、それってメイクで作ってるの?」
「こ、これは自前で……」
「嘘っ、こんなくっきりあるの!? いいなぁ、羨ましいなぁ……!」
月乃は、キャッキャと褒めて褒めて褒めまくる。
多分これ、わざとじゃない。素で褒めまくってる。
そういやうちの子たちって、俺以外と接したことってなかったかも。
誰かと話せるのが嬉しいのか、マシンガンのように言葉が出てくるみたいだ。
それに対し、褒められ慣れてない地雷ちゃんは、終始おろおろしている。
どう反応していいのか困ってる感じだ。
「地雷系ファッションってネットでしか見たことなかったけど、近くで見ると本当に可愛いね。ふわふわのフリルとか、スカートとか、めっちゃいい感じ。いいなぁ、いいなぁ。ボクもやってみようかなぁ」
「……あ、の……う、うち、近くだから……メイクとか、してあげられる、けど? ふ、服は合うか、わからないけど……」
「マジ!?」
地雷ちゃんの言葉に、月乃は目を輝かせてこっちを見た。
無言で伝わる、行きたいオーラ。
月乃が行きたいなら、俺が止めることはできないな。
「いいぞ、行ってきて」
「やったー! 地雷ちゃん、行こ!」
「だ、だから地雷ちゃんって呼ばないで……うわっ……!」
月乃が地雷ちゃんを引っ張っていく。
地雷ちゃんも驚いているけど、嫌そうではない。
こうして見ると、昔から友達だったみたいに仲良く見える。
……あ、やべ。帰り遅くならないように言うの忘れてた。
あぁー……まあ、迎えに行けばいいか。メッセージ送っとこ。
月乃に帰る頃に迎えに行く旨をメッセージで送り、俺も公園を後にする。
てか、地雷ちゃんもこの辺に住んでたんだな。意外とご近所さんだったか。
さて、帰って宿題でもして待ってるか。
……そういやら月乃のやつ……課題は終わらせたんだよな……? 後で泣きを見ても知らないぞ。
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