第13話 作戦会議
あの後、地雷ちゃんから俺に話しかけてくることはなく。
もちろんだが、俺からもない。
話し相手がいないからか、誰かに俺のことを話していないみたいだし。
互いが互いに不干渉。
微妙な距離感のまま、地雷ちゃん遭遇事件から1週間が経った。
俺はその間、地雷ちゃんの言っていたことがどうも気になっていた。
自分に自信がなく、友達もいない。でも承認欲求はある。
……面倒な性格だな、地雷ちゃん。
自分に自信、か……どうやったら付くんだろうな。
そう思い、この1週間みんなに、どうやったら自信がつくか聞きまくった。
月乃「いつも明義に好きって言ってもらってるから!」
灯織「うんっ、あーちゃんとぎゅーしてるよ!」
瑞希「自信を持つ方法ね〜。好きな人とかできたらかわるかも〜?」
樹里「あ? 知らね、生まれつきだろ。……あと、アキが傍に……って、何言わせんだ!」
亜金「ありのままを受け入れてくれる、あなたがいるから」
土萌「じじじ自信なんて、めめめ滅相も……! ぁ、でも……褒められるのは、ぅれしぃ……でしゅ……」
明日花「はいっ、尽くしには信頼と実績があります」
……まったく参考にならなかったけど。
好きな人を作るって、他人がどうこうできるもんじゃないしなぁ……。
あ、でも……褒められるのは嬉しいって、土萌が言ってたっけ。
褒め、か。そういや、地雷ちゃんも褒められたいって言ってたっけ。
けど俺だけじゃあな……。
……なんで俺、地雷ちゃんのために頭悩ましてんだ。
やめやめ。地雷ちゃんとは顔見知り程度だし、俺が首を突っ込むことじゃないか。
「──明義、元気ない?」
「……俺が?」
朝飯を食べていると、月乃が心配そうに顔を覗き込んできた。
嘘、普通だと思うんだけど。風邪か?
月乃が前のめりになり、俺のひたいに手を当ててきた。
「んー……熱はなさそうだね。何か考えごと?」
「特に何も考えてないけど」
「うそ」
ひたいに当てていた手が、俺の頬を包み込む。
心配するような、見守るような……まるで聖母みたいな微笑みで、俺を見つめる。
「どれだけ明義と一緒にいると思ってるのさ。ちょっとの変化でも、ボクたちにはお見通しだよ」
「……はは。みんなには敵わないな」
「当然」
はぁ……これ以上は、秘密にするのも難しいか。
「……前に会った、地雷ちゃんのこと覚えてるか?」
「ああ、あの可愛い子。……なに、好きなの?」
ジト目で睨んできた。
ちょ、怖い。ジト目というか、飢えた獣みたいな眼光なんだけど。
「違う違う。好きとかじゃなくてさ……ほら、前に自信がどうとか聞いたろ?」
「うんうん」
地雷ちゃんが褒められ慣れてないこと。
そのせいで、自分に自信がないこと。
友達がいなくて、ボッチなことなど。
ざっくりと説明すると、月乃は「なるほどー」と腕を組んだ。
「だから前に、どうやったら自信がつくのかを聞いてきたんだね」
「そういうことだ」
「んぁ〜……難しいねぇ。ボクたちはいつも明義がいるから、そんなの気にしたことないけど」
だよなぁ。やっぱり誰かがいるのと、誰もいないのでは、前向きさが違うというか。
「てか、なんで明義が地雷ちゃんのこと気にしてんの? やっぱり好きなんじゃ……」
「そうじゃない。あいつ、俺以上のボッチだから、妙に気になるんだ」
「ああ、同族だから」
「同族言うな」
俺は仕方なくボッチなの。
あいつは普通にボッチなの。
似てるようで違うんだ。一緒にしないでほしい。
「まったく……明義は優しいんだから」
「気になるから手助けしたいだけで、優しくはないぞ」
「それを優しいっていうんだよ。普通は面倒事に関わりたくないから、無視するでしょ」
……そんなもんか。
でもそれ、気持ち悪くない? 頭の隅に引っかかるというか。
「んむぅ。別の女に肩入れするのは嫌だけど……でも明義が助けたいなら、ボクも手を貸すよ」
「ありがとう、月乃。……でもどうやって?」
「そだなぁ……」
腕を組んでうんうん唸る月乃。
俺も一緒になって考えるが……なんもいい案が浮かばない。
自信をつける方法、ねぇ……。
自信って、今までの経験から来るものだろ。
それをつけるって、かなり難しい気がするな。
結局、ご飯を食べ終わっても、洗い物をし終えても、学校に行く時間になっても思い浮かばず。
俺はスクールバッグを手に、玄関で靴を履いていた。
「じゃ、行ってくる。帰りはいつもの時間になるから」
「あーい、行ってらー……ん?」
「月乃?」
黙り込んで、どうした──
「あ!」
「うおっ」
きゅ、急にでかい声出さないでくれ、ビビるから……!
「思い付いたっ、自信をつける方法!」
「え、マジ?」
「うん! 天才的なボクに掛かれば、余裕のよっちゃんだよ!」
不安だ。そこはかとなく、不安だ。
本当大丈夫なのか……?
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