第4話 キス

 再び先生と合流する。

「先生、2人で飲んで大丈夫なんですか?」

そう言うと先生は

「大丈夫でしょ。みんな帰ったし。」

と軽い返事。

私は自転車をおし、先生は隣を歩く。

近くにお洒落すぎないバーがあったので

そこに入った。


カウンター席で隣同士で座る。

「酷いなー。俺は2件目行く気だったのに帰っちゃうんだもん。」

「いやいや、私も行きたかったけどみんな帰るって言ってたから…」

なんて話をしながらお互いお酒はすすむ。


カウンターには私たち2人。

そしてカウンターの後ろにはテーブル席が4宅ほどあり、1宅に4〜5人の男女のグループがいた。


お酒がだんだんとすすむと私たちの会話も「先生と保護者」の会話ではなくなっていた。

先生の元カノの話とか悩んでいる事。

そして気づけば私のことを名前で呼ぶ先生。

しかも「ちゃん」付け。

ハッキリ言って気持ち良かった。

離婚してから恋愛をしてこなかったわけじゃない。

彼氏がいた事もあった。

けれど、先生からの好意はドキドキしたし

私にトキメキをくれた。

先生は私の5歳下、という事も初めて知った。


先生にドキドキして欲しかった。

意識して欲しかった。

私は私の知っている恋愛テクニックを使う。


カウンターの椅子はクルクルと回るような椅子だった。

最初は隣で話しているだけだったが

少しずつ椅子を回し体を先生の方に向けて話を聞くようにした。

自分の話をするよりも相手の話を聞く。

うんうん、頭を傾げながら相槌をうつ。

時々ツッコミを入れてボディタッチをする。

先生も体をこっちに向けていた。

膝と膝が触れるか触れないかの距離感。

たまに意識的に膝をあてる。

お手洗いの後はさりげなく練り香水をつけて

近づいた時に甘い匂いがするように仕込む。


お店を出る頃には私たちは「いい感じ」になっていた。

別れ際、「キスがしたい」と言われた。

心の中では「私もしたいー!」と思ったがもちろんそんな事は言わず。

「えー。でもマズイですよー。」

「キスは好きな人としなきゃ。」

なんて全く困ってない顔で答えて焦らしてみる。

「俺は好きだよ。〇〇ちゃんは俺の事好きじゃないの?」

「えー。好きだけどぉ」

「じゃあいーじゃん。しよ。」


私たちはお酒の勢いもあって、いい歳をしてるのにもかかわらず道端で何度もキスをした。

ただ私は妙に理性も働いていて周りに人がいない事を確認もしてもいた。

「離れがたいなー。

でももうダメだよね。家で子供待ってるもんね。

また連絡するね。」

先生はそう言って帰っていった。


私はキスの感触を思い出しながら頭がフワフワした状態で自転車に乗って帰って行った。

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