第3話 飲み会

 お酒はたくさん飲めるけど、しっかり酔います。

学生の頃は忘れたい失敗もしました…

あと典型的に、飲むと甘えたくなりますね。

誰にでも、ってわけではないけれど自分に優しくしてくれて好感のもてる男性には甘えたくなります。

情けない話ですが。



 先生たちとの飲み会は大手居酒屋チェーンの一部屋を貸し切って行われた。

男性の先生3人に対してお母さん20人ぐらい。

私は若くして出産したせいか、周りのお母さんたちはみんな年上だった。

先生の近くにはキャプテン、副キャプテン、部長などのお母さんが陣取って喋っていた。

若い男性と話せるのが嬉しいようでそこの場から離れようとはしない。

私は外野から見ていて「先生たちも大変だな」と冷めた目で観察していた。

私はというと、先生と喋るわけでもなく近くのお母さんたちと子供の進路について喋ったり世間話をしたり。

普段あまり他のお母さんたちと絡んだりしないので仲良くなれて良かったな、とただの親睦会に満足していた。

しかし、もともと人見知りな性格のせいで雰囲気に疲れてしまった。

少し休憩したいと思い、トイレに行くがてら外の空気を吸いに出た。

9月の夜の空気は昼間と違って過ごしやすくなっていた。

風が吹けば気持ちが良い。

酔いを覚ますのにはちょうどいい。

ポチポチと携帯をいじっていると先生が1人、煙草を吸いに出てきた。

いつも笑っている、あの先生だった。


「あ、先生。お疲れ様ですー。

先生って煙草吸うんですね。」

「あ、お疲れ様です。

そうなんですよ。

子供たちに吸うな!って言ってる身だからあいつらの前じゃ吸えないんですけどね。」


なんて、何気ない会話をしていた。

喋っていて感じた事は

ノリがいい。

言ってしまえば

チャラい。

軽い。

だから生徒たちにも人気があるんだな、と妙に理解してしまった。

その流れで

「2件目飲みにいきましょーよー!」

「いこーいこー!」

なんて会話もした。


先生が1本吸い終わって2人で店の中へ戻り元の席へ戻る。先生と話したのはその時だけ。

そこから更に1時間ほど飲んでお開きになった。

「今日はありがとうございました!また飲みましょう!」

とキャプテンのお母さんが先生たちにご挨拶し飲み屋の前で解散。

先生たちは駅に向かい、お母さんたちも同じ方向に帰る人達とグループを作りそれぞれ帰っていった。

私は自転車だったので1人で帰る。

「お疲れ様でしたー!」

と言って自転車を5分ほど走らせたところで携帯電話がなった。

この時間に誰だろ?息子かな?

と思って画面を見ると、あの先生だった。

すっかり忘れていたけど、部活関係の業務連絡に必要でずっと前に携帯番号を交換していたのだ。


「はい。どーしたんですか?何か私、忘れ物しました?」

慌てて出ると先生は

「えー。だって2件目行こうって約束したじゃん。

今どこ?」


…え?や、行こうって言ったよ。確かに言ったよ。

でもそれは2人で、って意味ではなかったし…

え?待ってるの?わ、どーしよ。


「や、解散ってなったからもう帰るのかと思って。

え?今誰と一緒なんですか?」

「1人だよー。えー。行こうよ。飲み足りないよ。」

先生たちとの飲み会でさえ立場的に

先生、大丈夫なの?

と心配になっていた私は

2人でなんてもっと大丈夫なの?

と思ったが、普段子供がいて飲みに行くことなんて滅多にないから確かに飲み足りない。

そしてたぶん人気の先生から誘われた事に少なからず嬉しさも感じていた。

気づけば私は今来た道を自転車で戻っていた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る