いつまでも・・・

 忙しくても楽しい、充実した2年だった。

 タローの映画は予告が流れ始めると映画界をざわつかせ、そしてとてつもないヒットをもたらし、あっという間に世界中に配信された。それは日本ブームを呼び、日本には経済効果をもたらした。

 タローもルイもKAZUKIも時の人となった。『凛』ブランドも世界中からオファーが来た。それでも綾は広めることに首を縦に振らなかった。しかし、綾以外の人が綾を取り囲み説得にあたった。綾はそれを楽しんだ。そして仕方ないというふりをしてセカンドラインを認めた。ブランド名は『凛 action』。それは綾が建てた「S・G actionビル」での販売とネットのみの販売とした。そこは綾は譲らなかった。ブランドコンセプトはいわゆるカジュアルエレガンスで、現代社会に即した性別を問わない商品だった。マークやMOTOKOそして舞彩は企画をこっそり進めていたのだ。綾はそれには驚いたが、時代の流れには逆らえないと心の中では嬉しく想った。

 MOTOKIは映画の衣装監修をしっかりと務め、ハリウッド店の店長になった。そしてそのハリウッド店にはビューティサロン『凛』も併設した。丁度KAZUKIも拠点をハリウッドに移したので、それと同時に並木の片腕である宅麻も渡米。ハリウッド店の店長となった。

 そして、旅行会社の岸は映画『東の出る国』に伴う日本旅行の豪華パックを一手に打ち出した。大嶋と大門はもっとすごかった。旧西園寺邸を買い取り、東京では珍しいオーベルジュの店に改築した。この店の名は『橙(ダイダイ)』社名に由来している。お店のコンセプトは〝体の中からきれいになってもらう〟で、自然の素材と和の美しさを取り入れ、目でも舌でも楽しめる木村の新しい店となった。もちろんここへの予約は岸が牛耳った。

 2年前、大嶋はタローの映画の話を綾に聞いた直後、綾ファミリーに極秘メールを送っていた。おかげでタローの映画には多額の寄付が寄せられた。

 さらに面白い話がある。大門の嫁であるジャネットと、ジビエの料理人納富の奥様葵さんがタッグを組み、マナー教室や英会話教室、ワイン教室等々を近くのホテルや納富の店『not to wastw』などで開催しているという。

 父はまだ元気にオーストラリアで過ごしている。そして子供たちの活躍を応援してくれている。


「綾さん、音楽家の話が来てますよ?」

「巧、音楽家は私は受けないから大嶋君に話してみて。彼に任せる。」

「わかりました。」

「綾さま、次回アートスペース展示候補の10名の面接お願いします。」

この『綾さま』と呼んでいるのは、肇の次女の沙耶である。まだ大学生だが「SG actionビル」でアルバイトをしている。綾のいないところでは沙耶は綾のことを『魔女』とか、『おばけ綾』とかと言っている。付き合えば付き合う程に若くて、物事の見極めが凄くて、判断が早くて、全て自分の思うようにしてしまう。まさしく魔女だと叫んでいる。

「沙耶ちゃん、あなたはみんなに会っているのよね。あなたの意見をまとめておいてくれる。私が面接した後に読みます。」

「はーい、ありがとうございまーす。」

いい目を持っていると綾は認めてはいるがまだまだ学生気分で仕事をしている。でもこの新人発掘の展示場のメンバー選出は、いずれは沙耶に任せるつもりだ。だから、これからは綾の意見と沙耶の意見が合った人物のみ選択しようと思っている。


 新しいことを始めれば、新しい人とコトが生まれる。綾は今を楽しんでいる。

 そして綾は相変わらず美しい。


「巧~まだー?」


                                    完













と紗季ちゃん

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