ネット心中

ネット心中

女1「きれいなところね。こんなところ初めて来た」

女2「そうでしょ？　だから、心中するにはうってつけだと思ったの」

女1「誘ってくれてありがとう。やっぱり一人で電車に飛び込んで死ぬより、二人で海に飛び込む方がいいわ。最期くらい誰かと一緒がいい」

女2「……ごめん。実は私、あなたと一緒に死ぬつもりないんだ」

女1「えっ？　どういうこと？」

女2「ここの村ではね、津波が起こらないように毎年、海に生贄を捧げているの。本当は私が今年の生贄なの。でも、私はまだ死にたくない。だから、あなたが私の代わりに死んで」

女1「嫌。なんで私が生贄になんてならないといけないのよ」

女2「あなたが死ねば10万人の命が助かるの」

女1「そんなのただの迷信でしょ？」

女2「迷信なんかじゃない。実際、生贄を捧げなかった年の次の年には必ず津波が来たのよ。ほら、15年前の津波がその証拠よ」

女1「……私が可哀想だと思わないの？」

女2「思わない。だって、あなた自殺志願者なんでしょ？　電車に飛び込んで人に迷惑をかけて死ぬぐらいなら、海に飛び込んで人のために死んでよ」