--ハッピィハロウィーン--

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((▼w▼))

「また会いに来るよ、約束だ」


 あの夜、仮面を被った少年がにっこり笑って頭の上に手を乗せてきました。

 そしてお祭りの日が訪れます。


「さあ、キミの出番だよ」


 その大きさから村人に気味悪がられ、ひとりぼっちだった私にお仕事をくれた彼のために、私は夜闇を照らしました。




「今年もよろしく頼むぞ、相棒」


 またお祭の日。

 立派な青年が仮面の向こうでニヤリとしながら私の頭をポンポンします。

 まったく、まだまだ子供っぽいんだから……。そうやって悪態をつきはしましたが、悪い気はしなかったので私はより一層人々を明るくしました。


 


「今年はいつもよりたくさんの人が集まった。きっとお前のおかげだな。きっとイイ祭りになる」


 いつもより実りの良い特産品は多くの人々に喜ばれたと、仮面の男は教えてくれました。

 豊作は私のおかげなんかじゃありません。頑張ったのは彼とその仲間達です。


 ……まあ、こっそり仲間達が立派になるよう力を分けはしましたが、その程度のものです。




「オレもそろそろ身体にガタがきててな、引退が近いかもしれん。でもお前さんのことは息子たちにしっかり伝えてあるから安心だ」


 少年の時と比べて大分オッサン染みた仮面の彼は随分太ったものです。もう少し痩せないと健康に悪そうですが……昔に比べて縦にも横にも大きくなった私が言えた義理ではありません。


 代わりに――あなたも老けたわね――と伝えたら、可笑しそうに笑っていました。



 あなたが年をとったら、私も年をとる。

 それでいいと思っていたのに――。



 そして、その日はやってきました。




「……そろそろお別れのようじゃ。なんとも名残惜しいものじゃがな」


 すっかりおじいちゃんになった少年が、私に会いに来てくれたのもずいぶん久しぶりです。

 まだまだ成長している元気な私とは違い、彼はもうヨボヨボで今にも枯れ果ててしまいそう。


 私はそれが悲しい。

 できることなら、あなたとずっと、いつまでもこうしてお話がしたいのに。



「この齢になってようやくわかる。お前さんは特別じゃ。きっと大地の神様が遣わした精霊に違いない」



「儂も直に大地へ還る。そうなれば大地の神様にも会えるじゃろうから、その時はひとつお願いをしてみようかの」



 私の気持ちを察してくれたのでしょう。

 素顔の彼が、震える細い手を私の頭の上に置きました。


 まるで、初めて出会ったあの夜のように。



「また会いに来るよ、約束だ」



 彼が約束を破った日は一度たりともありません。

 あの日と同じ約束を、あえてもう一度。

 

 その意味を理解した私は、彼との約束を守ることを誓いました。

 彼が会いにきてくれたのはあの日が最後です。





 ――あれから何百回の祭りが行なわれたでしょうか。


 私の成長は緩やかにはなりましたが、いまだ留まるところを知りません。

 けれど、人々に怖がられることはなく、むしろより注目される人気者です。お祭に来る人は大きな私を見て驚いたり喜んだりしてくれます。


 ただ、残念ながらお話しできる人はいませんでした。あの人は私を特別だと言いましたが、きっとあの人も特別だったのですね。


 

 ――ああ、会いたいなぁ―― 

  


 何度目かわからない想いを口にした、その時でした。




「遅くなってごめんなさい。ボクも会いたかったですよ、ピカピカ光る大きなカボチャさん」



 

 すぐ傍から、確かにそう聞こえました。


 急いで目を向けると、そこに居たのは仮面をつけた見知らぬ子供だけ。


 ――いいえ、いいえ違います――


 姿形は異なるけれど、私にはわかります。

 だって私とお話してくれたのはあの人だけです。声が聞こえるのも、明るく照らしてくれたのも。


 こんな幸せな気持ち(ハッピィハロウィーン)にしてくれるのも、あなただけなのですから。



「トリック・オア・トリート?」(いたずらか、それともおもてなしか?)

 


 その問いならば選ぶまでもありません。

 ずっと、ずっと昔からどう答えるかは決まっているのですから。


 よーく聞いてくださいね?

 

 せーーのっ、

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