第37話 プレゼントと不良グループ三度(みたび)②
僕の提案を信じて、自分のポリシーを曲げてくれた5人だ。僕はその期待に応える必要があるだろう。
「こうなったら蓮野内君の予定を調べるべきだと思います。なんでもできる蓮野内君は予定が詰まっている可能性が高い。でも蓮野内君のフリーな日を調べます。皆さんがここまで変わってくれたんです。頑張ります」
主に前田さん頼りで、と心の中で僕は呟く。頭さげてでも、使えるものはなんでも使う。ここまできたら総力戦だ。
「蓮野内君の予定がフリーな日が分かったらお知らせします」
「じゃぁ、あたしの連絡先を教えておくよ」
と名乗りをあげたのは以前は金髪でピアスしていたリーダー格の女性だった。蓮野内君のために一番大変身していた女性だ。名前は
「分かりました」と僕はのメールアドレスを交換する。
「じゃぁ、他の方への連絡は、水島さんからしてください。基本的には水島さんたち5人で相談して行動してもらうからです。でも蓮野内君のことで何か問題がおきたら連絡してください。僕が動いたからといって、蓮野内君が話を聞いてくれるか分かりません。どちらかというと、僕の話は蓮野内君に聞いてもらえない可能性の方が高いです。でも、できる限り協力します」
計画がうまくいくか
でも本当に髪型や服装、お化粧その他諸々まで東海林さんのように変えてくれるとは思ってなかった。男性陣だってそうだ。水島さんたち5人が自ら変わってくれたのだ。それに応えるのは
「あとは近況ですが、蓮野内君は東海林さんにひどいことを言ったので、東海林さんから口もきいてもらえない状態です。だから最近はいつも1人で燃え尽きたかのように真っ白です」と僕は現状を伝える。
「大丈夫なのかい、その状況は?」と水島さんは蓮野内君を心配する。
「あまり良くない状況だと僕は思います。でも水島さんたちからすれば絶好のチャンスだと僕は思っています」
「ふむ?」
水島さんたちは話が分かってないようなので、ざっくり説明することにした。
「東海林さんは水島さんたちを紹介することをきっかけにして、蓮野内君と話題を作り仲直りしてもらう。水島さんたちは東海林さんから蓮野内君に紹介してもらうチャンスを得る」
「誰も損はしないお前なりの提案って訳か?」と水島さんはニヤリと笑う。その質問を聞いて
「僕という人間が分かってもらえてるようで、非常に嬉しいです」と僕は答える。
「あんたのそういう思考回路、あたしも案外嫌いじゃないね」と水島さんはぽつりと呟いた。
「誉め言葉と受け取っておきますね」
と僕はにっこり笑ってそう答えた。以前のままなら、水島さんたちを紹介されても蓮野内君にはデメリットしかなかった。
でも以前は東海林さんを『あいつ』呼ばわりをしていた水島さんは『東海林さん』と呼ぶように変わっていた。姿が変われば言葉も変わる。言葉が変われば態度も変わる。態度が変われば雰囲気も変わる。そこまで変わればきっと周りの人も変わってくれる。人間そんなもんだと僕は思う。
何が変わるかは人による。
でも、水島さんたちはいい方向に変わりそうだと思った。何を根拠に? と言われると勘としかいいようがない。でもいい方向に変わるように僕も応援しよう、と思うくらいに変わってくれたのは間違いない。僕自身が周りで変わった最初の人というだけのお話だ。
「じゃぁ、蓮野内君の予定が分かったら連絡しますね!」
「「「「「おう!」」」」」
水島さんたちが見えなくなった後で東海林さんは
「人間ってあんなに変われるんだね……」と呆然とした様子で呟いた。
「まずは形から。あとは水島さんたちのやる気次第ですね!」と僕は頷く。
「あんなに変われるくらいやる気があるなら、うまくいくといいね」って東海林さんは微笑んだ。
「どうなるかは水島さんたち次第ですけどね。できる限り僕は応援するつもりですよ」
「蓮野内君にあんな真っ白でずっといられると調子狂っちゃうしね」
と東海林さんは困った顔をしている。
「そうですよね。なんかよく分からない文句を言ってくるくらい空気を読めないのが本来の蓮野内君ですよね」
「そうそう、まったくもってそうなのよ」
なんて2人で笑ってた。
そして聞かないといけないことがあった。そうだったと僕は思い出した。
「あと……東海林さん連絡先、よければ交換してくれませんか?」
「いいよ! メールアドレスと携帯番号も教えちゃうね!」
「ありがとうございます!」
そのあと東海林さんを家に送り届けた。東海林さんの連絡先もゲットできた。家について、寝る前にメールで
『また明日学校で会いましょう。おやすみなさい』
と東海林さんにメールした。ドキドキしながら返信を待った。
『今日はありがとうね。また明日、おやすみー』
と、いつもの調子が思い浮かぶ東海林さんから返信があった。短いメールのやり取りだ。でも改めて見るとなんだか嬉しくて、眠りにつくまで僕はなんだかニヨニヨした顔が止まらなかった。
◇
翌日、学校に向かって歩いていると
「おっはよー、五十嵐君!」といつものように東海林さんが後ろからチョップして現れた。
「おはよう、東海林さん」と僕も声をかける。
「今日の目標は前田さんから蓮野内君のフリーの日を聞きだすことです。協力してください」
「協力もなにも私が聞いたらすぐ教えてくれると思うよ?」
「そうなんです?」僕の額には『マジか』とマジックで書かれてるに違いない。
「そうよ?」と東海林さんはあっけらかんと話す。
東海林さんが聞いてくれたところ5日後の9月28日ということが分かった。結果として前田さんの情報網がむちゃくちゃ広いことが分かった。その情報を水島さんにメールで送信した。決戦は9月28日だ!
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