第35話 誕生日と不良グループ再び⑤
話を聞いていた女性たち、
でないと、この男性2人にはなんのメリットも生まれない。その結果、話が違うだろって文句を言われる未来が見える。僕だって必死なのだ。
だから蓮野内君に不良グループの5人で会ってもらう訳だ。
「女性陣3人を2人の男性陣は様々な形で支援し応援する。48人もいる人気アイドルグループの女の子を推しているファンみたいなものです。ファンはアイドルの幸せを祈るもの、みんなそうは思いませんか?」
僕は迷っている5人に訴えかける。アイドルと言われた女性陣は、なんか戸惑いつつも照れている。でも応援されると聞いて照れてるってことは、ひょっとすると全く可能性がないって訳でもないのかな、と僕は思った。とはいえ男性陣は女性陣に気になる子がいるから、という本音は言えまい。言わなくていいから黙っててと僕は思う。ややこしくなるからね!
ここで大事なのは『みんなの利害は一致している』という一点のみだ。
「だからこそ、男性陣の2人には髪型をリーゼントから、ぶっちゃけお坊ちゃまと見間違うくらいでいいです。ギャップが良いという話もあるんです。お坊ちゃまな外見なのに、実は芯が通った男性ってカッコイイと思いませんか?」
という男性陣の推し路線も提案する。
この方々は突っ張って不良をしているのだ。芯が通っていないとできないことだろう。外見だけ変えて中身はそのまま、これもある意味ギャップ萌え? なのか? 謎だけどそこは黙っていることにした。
実際にこの提案をどう料理するかはこの2人次第だ。シェフにお任せコースと言っていい。まぁ、細かいことは美容室のマスター頼みだ! 丸投げだ!
「できれば今よく行ってる美容室じゃなく、おしゃれな美容室を探してカットしてもらってください。おしゃれな美容室のマスターに『リーゼントをやめたいんです。心を入れ替えたので、それに見合った髪型にしてください』って言いましょう。きっといい感じにカットしてくれますよ」
と僕は言っておいた。おしゃれが全く分からない僕がいうのもアレだなぁ、とほんとに思ったけどね! 分からなければ、おしゃれのプロに任せるのが一番だ。
でも今の髪型の路線からは絶対に変わってもらう必要がある。これは確定事項だと僕は思うからだ。
「髪型を変えてピアスも外したら、今度でいいですから僕に見せてください。そのあとで大丈夫な外見だと思ったら、みんなで蓮野内君に会いに行きましょう」
「「「「「お前に本当に任せて大丈夫なのか?」」」」」
と5人の不良の方々は不安に駆られた様子だ。
「あなた方がこの提案にのって失敗しても、何百万もの大きな損害がでるんですか? 被害がでるにしても美容室の費用くらいです。あとはそうですね。髪が傷むかもっていう心配がちょっとあるかもってくらいです。でも、それで今まで話したこともない蓮野内君と話すチャンスが
みんなが、なるほどと頷いてくれた。
「そして大事な点はもう1点あります。蓮野内君にあなたがたを紹介するのは、東海林さんの
蓮野内君と話ができるのは東海林さんしかいないと思うのだ。実際、ミツル君のお手玉の一件があってから、東海林さんと蓮野内君はぎくしゃくしている。というか蓮野内君は燃え尽きて最近はいつも1人で真っ白だ。それもちょっと改善できればと思うのだ。
「だから、この作戦には皆さんの協力がどうしても必要です。女性陣3人には蓮野内君と仲良くなるというメリット。男性陣2人にはファンとして女性陣3人を推して支援と応援することができるメリット。東海林さんと僕は平穏な日常を手に入れるメリット。7人皆がウィンウィンという訳です。いかがですか?」
まぁ、蓮野内君の都合はこの際、考えないようにしよう。デメリットは全て蓮野内君にかぶってもらうことになるんだけど、東海林さんに対する暴言の
「お試しってことなら、やってみる価値はあるかもしれねぇな」と不良の男性はおっしゃった。
「
「俺たちにデメリットがほとんどねぇってところが悪くねぇと思うんだ」と男性は疑問に応える。
「そうでしょう? この作戦で不幸になる人はいないんです」
蓮野内君以外はね、と僕は心の中でこっそり
「あたしはのってみる。蓮野内君と話ができるようになるならあたしは変わるわ!」
「「あ、あたしもお試しでなら!」」
「……みんなこの話にのるっていうなら俺も異論はねぇ」と疑問を
「じゃぁ、髪型と色を変えること、ピアスもはずすこと。せっかくだし制服もしっかりボタンをとめて着ちゃいましょう。迷ったら東海林さんを真似してください。たったそれだけですが効果は絶大です。うまくいく可能性は果てしなくあがります!」
「「「「「分かった。じゃぁ、お前に全て任せたからな!」」」」」
と声をそろえて不良グループの5人は帰って行った。5人が見えなくなったところで
「怖かったぁ」と東海林さんは泣きだした。
「ほんとにねぇ」と、またしてもガクガクしてる両膝の震えを両手で押さえる。
「あんな不良グループ5人とたった1人で話し合いできる五十嵐君って、ほんとに何者なの?」と東海林さんは泣き笑いで問いかけてくる。
「ただの本の虫が必死になっただけですよ。まだ結果は見えないですけど……巨大すぎる敵はこちらについた方が得だと思わせて、味方にしちゃうのが一番です」と僕は座り込んで大きく息を吐きながら、そう答えたのだった。
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