第4章 試練のプレゼント大作戦

第28話 東海林さんの誕生日①

 夏祭りも終わって寂しくなったなと思っているうちに二学期が始まった。そして慌ただしい新学期を僕たちは送っていた。


 けれども、忘れてはいけないイベントがある。前田さんから仕入れた情報によると東海林しょうじさんの誕生日、それは9月7日なのだ。


 僕は色々と東海林さんの誕生日プレゼントを考えた。いくら悩んでも良いものは思いつかなかった。いっそ東海林さんに欲しいものを聞いて贈ろうかと思ったレベルだ。


 けれども、それはあまりにもどうなんだろうか? と悩んだ。そして悩んでいるうちに、もう明後日は東海林さんの誕生日という訳だ。どうしたもんかねと椅子の上で身体を伸ばす。


 おしゃれなものって考えるとなかなかに難しかった。装飾品店を今まで散々歩き回って考えてきた。


 ブローチなら制服につけるのは無理でも、鞄とかにつけてもらえるんじゃないか? そう考えた。けれども、お店に行って値段を見てびっくりした。結構お高いのね。


 じゃぁ、ネックレスはどうか? これも見えないおしゃれと考えるならありだろう。けれども、学校にネックレスをつけてくる東海林さんが、どうしても想像できなかった。ブローチ以上のお高い相場をみて、これもないなと却下した。


 これは……!


 っていう東海林さんに似合いそうな可愛いピアスもみつけた。これにしようかなって思ったんだけど、うちの学校は校則でピアスはアウトだ。


 東海林さんが無理してピアスをつけてくる可能性を考えると、それはまずいと自分の考えを却下した。あとは予算の問題だ。良いものはお高かった。


 指輪は高校生ではなぁと思うし指のサイズも分からない。ブカブカで親指に無理やりつけている東海林さんを想像して却下した。


 髪飾りはどうかと考えた。これもお高い。僕の資金力のなさを考えれば悩ましい。夏祭りで割とすっからかんだ。バイトという選択肢もとるべきだったかと今更ながら後悔した。


 けれども、バイトを考える時期がもう遅いというか、後の祭りだ。3ヶ月くらい前からバイトするべきだったかと考えても、結婚指輪じゃないんだからと思って自分の思考を止める。3ヶ月前は中間テストで蓮野内君と戦わないと行けない時期だった。


 そのあとは本を読みたくて仕方なかったし。体育祭の自主訓練を休んでいたら、あの連帯感と勢い、そしてクラス別優勝はなかっただろうと思う。


 そう考えれば、ぼんやり過ごした夏休みが悔やまれる。短期バイトでがっつり稼ぐべきだったのか? 人生のやり直しを僕は神様に要求したい。でもまぁ、人生のやり直しがポンポンできたら、神様に祈ることなんてなくなってしまいそうだなぁと僕は思った。


 これはもしかして詰んだかな、と僕は思った。予算はそんなにある訳でもないけど、色々みればそれぞれの商品の値段はピンキリだ。キリをみるなら現在の予算でも手が出ないほど高すぎるって訳でもない。


 そうなれば地味に足を使ってのローラー作戦しかないと思った。単純によさそうなものを探して歩きまくるだけだ。


 片っ端から装飾品のお店に入っては値段とデザインをみて悩んだ。デザインを重視すると単純に綺麗だと思うものはお高い。装飾品の専門店だからだろうか? シンプルなものは比較的安いけど、お高いものと見比べてみると何だかなぁと思ってしまって買う気になれない僕がいた。



 だからこそ反省も含め、翌日はお店の回る範囲を広げてみた。装飾店だけでなく、小物店まで含めて見てみるという作戦を思いついたのだ。


 小物はお安い物はめちゃくちゃお安い。お金がないとはいえ、100円ショップで買うのはさすがにまずいよなぁと思う僕。作戦次第でたくさん買って組み合わせれば、ありなのかな? と思う僕もいた。


 けれど100円ショップの商品をプレゼントとして買うのは、結局のところ後悔して買いなおす未来しか見えなかった。安物買いの銭失いになってしまいそうだと思ったのだ。文房具や日々の生活に必要になるものを買うなら100円ショップは最高だけど、プレゼントにするのはさすがに向かないかなぁとあきらめた。


 商品を買う目的が違うから、さすがにしょうがないかと考えた。東海林さんに贈るのはプレゼントだからなぁ、と考えて次はショッピングモールに足を延ばすことにした。


 片っ端から色々なお店に入って色々探してみた。けれどもこれだ! っていうものにはなかなか出会えなかった。僕の得意分野は本だから本を贈るという選択肢も考えた。


 考えたけど、迷いすぎて無理だった。まとめて10冊セットでプレゼントするっていうのも考えたけど、そこまでたくさん贈るのは東海林さんの時間をたくさん奪ってしまいそうだなぁと却下した。


 東海林さんならプレゼントしたら本を読んでくれそうだとは思う。だからこそ、この作戦は何も良いものが見つからなかった時の最後の手段に残しておこうと考えた。


 まだ時間はあるのだから、ぎりぎりまで探して考えようと思った。


 そう考え僕はプレゼントの品物を見て回る。ショッピングモールを端から端まで歩き倒した。欲しくても値段と商品との兼ね合いがプレゼント探しをより困難なものにしていた。


 ピンバッジも考えた。お値段は比較的お安いと思ったからだ。でもどこにつけてもらうか? って東海林さんになったつもりで考えると、なかなかに難易度が高いとも思えた。


 学校に通う時に使うバッグにつけてもらう? でもそうなると普段使いのバッグにはつけてもらうのは難しくなる。普段使いのバッグも知らない僕には、そのバッグにピンバッジが合うかどうかも分からない。


 仮に東海林さんがお高いバッグを使ってた場合は、ごみ箱行きになるんじゃないかと考えると怖くて却下した。


 それに……仮に喧嘩した時があったとして、贈ったピンバッジを外されようものなら立ち直れるかどうか分からないと僕は考えた。この考えに気づいた時、装飾品系は全て却下しようと思った。僕は小心者なのだ。


 そして贈るならいつ捨てられても分からない家の中で使うものにしよう、と後ろ向きな理由でプレゼントを探す僕がいた。 


 それでもあきらめず探し続けて見つけたのが、贈り物の定番な気もするオルゴールという商品だった。

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