第14話 体育祭の準備編②
さて、今日は体育祭の競技のどれに参加するかの確認だ。これに関しては実際に競技してもらって判断しようという話だった。
競技科目は100メートル走、200メートル走、1,500メートル走、バスケットボール、バレーボール、卓球、そして男子は野球、女子はソフトボールだった。
ちなみに野球に使うボールは軟式だ。硬式はさすがに危ないだろうっていうこと、また野球部の独壇場になってしまうということが名目上の理由だった。
でも野球部はどっちのボールだろうが独壇場だと思うんだよね。大きなケガになりにくいから軟式なのかねぇ、と僕は思った。
運動系の部活をしてる人はまずメンバー入りで決定だ。補欠枠はないのか!? と僕は心の中で叫んでいた。
「競技時間が
先生の注意が入る。僕にとっては無情な発言だ。やっぱりそうなるか、どうしたものかねぇ。去年は100メートル走に強制的に入れられたんだよなぁと思いだす。
なんで僕は100メートル走に参加なの? と去年の体育祭の作戦を考えた人に当時、聞いてみたこところ「勝っても負けてもそんなに差が開かない種目だから」とのことだった。被害を最小限にとの采配だった訳だ。僕は納得するしかなかった。
「まずストレッチして身体をほぐしてからするように! ケガするなよー」
先生の指示もあったのにケガしたら元も子もないもんねと思った。僕はストレッチを念入りにしていた。実は僕はこのストレッチがやたら得意だ。
180度足を横に開いてお腹をべたっと床につけ、そのまま開いていた足を閉じてそろえることもできる。両足を前後に180度開いて、そのままべたっと地面に座ることも全然平気だったりする。いわゆる身体ぐにゃぐにゃ人間だ。
「ケガしにくくなるからやっとけ」
と小さい頃、父さんに言われて続けていたら、僕の身体はぐにゃぐにゃになっていた。小さい頃の訓練ってすごいね!
少年野球をレギュラー入りになるくらい頑張っておけばよかったなと思う。でも喉元過ぎれば熱さ忘れるっていうし、次に後悔するのはたぶん1年後の今頃なんだろうけどね!
そう思えば過剰な後悔しなくても良さそうだと割り切った。できることをするしかない。せめてみんなの足をひっぱらないように頑張ると決めた。
「
と話しかけてきたのは
「僕はストレッチだけは得意なんです」
「ほうほう。ケガもしにくくなるから良いって聞くよね」と東海林さんはにこにこしている。
「ですです。お相撲さんもケガしないようにって股割りよくしてますもんね」
前田さんもやってきた。
「五十嵐君、身体やわらかすぎ。なんでそんなにやわらかいの!」
何がツボに入ったのか分からないけど、前田さんは笑い転げる。前田さんのオモチャに、僕もとうとう仲間入りしてしまったのかどうなのか。
「ストレッチが競技で役に立つということはないんですけどね」と、僕はため息をつく。
「ヨガには役に立ちそうだよねぇ」と東海林さんは真面目な顔をして話す。
「確かにヨガは身体やわらかいとよさそうなイメージですよねぇ」
「健康にもいいみたいだしね~」
僕と東海林さんは軟体人間が得になりそうな競技を考えた。けれど体育祭の競技のなかでは活躍できそうなものはなかった。
「まぁ、とりあえず色んな競技を試して一番可能性がありそうなものを探してみるところからだね」
と前田さんはやたら前向きだ。そういえば前田さんはソフトボールが好きだって言ってたっけ。運動系が実は得意なのかなと僕は考えていた。
ストレッチは終わりにして、徒競走のタイムをまずは計るとのことだった。走るのはやっぱり基本なんだなーと思った。
「100メートル走!」
「200メートル走!」
「1500メートル走!」
と走る科目は全員が全てこなした感じだ。そして走った結果は真ん中辺ではあるけども、僕はビリから数えた方が早かったのは公然の秘密だ。
僕の記録は丸裸にされ一目瞭然になった。前田さんは結構速い。というか僕より圧倒的に速い。東海林さんはそこそこで、かろうじて僕の方が速いくらいのタイムだ。
「五十嵐君も
と前田さんは冷静な判断をみせた。僕も心から(ごもっとも!)と思ってた。
本日の体育祭のお試しはここまでだ。1500メートル走がなかなかにきつかった。体育祭までにちょっと体力作りしないとダメかもだね~なんて思ってた。
でも
なんであんなに高スペックなのに、東海林さんが絡むとあんなにも残念な人になるんだ!? 蓮野内君の七不思議に登録したいと僕はぼんやり思ってた。
◇
別の日に行われた競技科目のお試しはバスケットボールだった。僕はいつも通りケガをしないために、ぐにゃぐにゃになるストレッチを黙々としていた。
これで運動の準備は完了だ。いつでもいけますよ! 運動で活躍できなくても、せめて気合だけはね! やる気はある。運動系なんて気合の
そういう人たちには勝てなくても、拾える勝ちは確実に拾っていく。僅差であればこそ、小さくともその大きな差を生むのは気合いだと僕は勝手に思っている。
根性論はわずかな違いなら、勝負の結果を大きくひっくり返す力があると思っているので僕は大好きな訳だ。
でも歯が立たないレベルの戦いは根性論ってあんまり出る幕がないんだよねぇ、と拳を高々とあげて気合が入りまくってる蓮野内君の様子を、僕はぼんやり眺めるのだった。
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