ビデオラブ

梅緒連寸

⬜︎

そう。なら、観るよと答えて電話を切った。

パソコンの電源を入れ、海外の動画配信サイトにアクセスする。

ふしだらで露骨な広告をいくつも飾り立てたページには無数の男たちの裸体や痴態が並ぶ。

電話の相手は私の従兄弟だった。彼が言った手順通り、「日本人」「細身」を意味する言葉や、その他いくつかのタグを検索フォームに打ち込めばその動画はすぐに出てきた。

かつてそれは、女のような唇の色をした男だった。長い髪が美しく風が吹けばそこからほのかに香水が香り、それなりの服を着れば本当に女のようにも見えた。

私の父がどのような性癖だったのかはその男を人知れず囲っていたことからそれなりに推察もできるが、あまり気のりはしない。女のような男を抱いて喜ぶことは、私には解るものではない。

再生ボタンを押す。少し読み込み時間をかけたあと、スピーカーから妙な調子のフュージョンがBGMで流れてくる。随分音量設定が大きい。電子的な音の洪水の隙間を掻い潜って、苦痛に満ちた呻きが微かに響いている。

画面には大げさな器具にがっちりと両手両足を固定されたかの男が、屈強な男数人に取り囲まれ代わる代わる犯されている。同性との性行為の経験は無い私にも、その動きは決して快楽を誘うようなものではなく、ただひたすらに男たちが好き放題やりたくてその孔を使われている、当人にとってはおそらく大きな痛みと苦しみを伴うものなのだろうと解る。

男は口枷をされており、息をするのもその隙間からようやくといった有様だった。視線は朦朧としていたがカメラが顔近くに寄ると、その大きな眼から涙をボロボロと溢し長い睫毛で収まるはずもなく頬を伝い首に流れやがて肩や鎖骨の当たりに流れていく。

助けを求めているような眼の色が、大人の腕ほどもありそうな器具が持ち出されたのを目にした途端ガラリと変わる。

逃げ出そうとしているかのように縛り付けられた体ごと台をガタガタと動かしていた。当然逃げられない。しかしこういうのはだいたい演技の内に入るものなんじゃないか?と想いながら私は成り行きを見守る。

幾人もの手で押さえつけられ、まるでお決まりごとのようにその器具は男に力任せに挿入されていく。

紅い筋が流れだす。くぐもった絶叫。ああ、これがどこまで茶番劇なのかはわからないけれど、今流れているこの血は本物なのだろう。


「面白いものを見たんだよ」

従兄弟は笑いを抑えきれないような声で、電話越しの私に語っていた。

つくづく不謹慎な男だ。だけど、まったくこれは。確かに。笑えてしょうがない。

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