飛べ飛べ女子大生

梅緒連寸

⬜︎

見られている。

大学に入ってから出会ったあいつに私は監視されている。

監視されているというのは朝と昼と晩を通してということです。入浴の時間を少しは使っているかもしれませんが私は到底知りえません。私は監視していません。

私があいつに監視されるようになったのは入学して3日も経っていなかったと思います。

はい、オリエンテーリングの後です。もしかしたらオリエンテーリング最中にも私を監視していたかもしれないですね。今考えたら。今考えても遅すぎる。私はとても不安なんです。監視されているから不安になるのは当然ですよね。

でもオリエンテーリングはみんなと仲良くなって楽しい大学生活を送るためにやるので私は完全に仲良くなりました。みんなと仲良くなります。なのにあいつは私を監視していた。私はとても不安になりました。オリエンテーリングはなにをしたかというと椅子を使った簡単な遊びですなるべくみんなと仲良くなりたいから監視されないようにぐるぐる回って椅子を座るんです。はい。でもあまり夢中になってはいけません。夢中になると心臓が強くドンドンとなります。椅子に座るのはなるべくでいいんです。心臓が強くドンドンとなりますからあまり夢中にならないように椅子に座るんです。椅子に座ることでみんなと仲良くなります。椅子を倒してはいけません。ええ。紳士的に遊ぶのがもっとも適したやり方なんです。

どうでもいいですね。

私はサークルに入りました。サークルは私を沢山の友達と貴重な経験に引き合わせてくれます。椅子に座ることが出来た人間はサークルのなかでもさらに上位のほうに食い込むことになります。この食い込みは水着が肉の間に食い込むのとはちょっと違って、いうなればステテコと経産婦のように密接で強く繋がっており離れることはけして無いのです。強い絆で結ばれた友人同士ですので。

そうしたらあいつの監視はますます強まり、季節は夏だったように思います。私はアパートの扉を完全には閉め切らない7.5部ほどの閉まり方で閉めて階段をおりました。隣の部屋の三好さんですが公務員です。赤ちゃんを産むそうです。髭がいつも伸びているんです。伸びた髭が私の部屋のベランダのところまで出てくるので私も流石に苦情をいれました。ええ。権利ですからね。冬だったんですけど。それでもいつも窓を閉め切っているとは限らないでしょう。

私はアパートの裏手に回って蛇口を回してバケツに並々と水を注いで蛇口を回して水を止めます。ここで気がついたんですが一度目は上手くいっていなくて、バケツに水が全然入っていなかったんです。それで再び裏手に回ったんですけど。回ったといってもバレリーナのようにじゃなくて。

でもあいつはそこからもう監視していたんです。もしかしたら24時間だったのかな。大家さんが病気なんです。だから朝から晩まで監視されている。

私は熱くなったアスファルトにバケツに並々と注いだ水を蛇口を捻ってアスファルトにまくのが一番好きなんですけど、そこでもあいつは監視を開始していたんです。だから私はいまでも蛇口を回すのが大嫌いになってしまった。まいたところがユラユラしているんです。ゆらゆらしているのを見ていると心臓もユラユラしてくるそうです。そして私がユラユラしているとこをあいつは監視していたんです。24時間監視していたんです。私は不安なのでこの先も大学生活を友達とたくさん送れるかどうか心配なのです。どうしたらいいでしょうか。なにかいい解決法はありますでしょうか。あまり心臓をドンドンならしたくはないのですけど。


「姉さん、大学の休学届け、出しといたから」


姉さんって誰ですか。あいつが姉さんなのですか。あいつに私は監視されている。

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飛べ飛べ女子大生 梅緒連寸 @violence_

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