第6話
おじいちゃんちの
「うん…うん、ごめんねママ。うん、これからは気をつける」
スマホは川遊びの最中に、うっかり落としてしまったことになっていた。
ママに嘘をつくことには、少し罪悪感。だけどいい機会だし、あわよくばスマホ卒業できないかな、と画作している。
最近八尺様は元気が出たのか仲良くなって遠慮が無くなってきたのか、おじいちゃんがいない時には家の中にも入ってこれるようになった。
それに見られなければ大丈夫なようで、耳元に受話器を当てる恵実の後ろで静かに待ってる。覆い被さるように壁に手を付いているから、そこだけ影になっていた。
受話器を置くと、チン、と鈴を鳴らすような音がする。恵実は振り返って、八尺様に「お待たせ、八尺様」と笑って手を繋いだ。
八尺様が先に寝転がって、その上に恵実も寝転がる。八尺様を敷布団みたいにしているけど、八尺様も楽しそうなので多分大丈夫だ。
不思議なことに、最近は八尺様の顔が鼻まで見えるようになった。目元にかかる髪を退かしても目はみえないのに。でもきっと、これも時間の問題だろう。
「あ、ねぇ八尺様、明日は私おじいちゃんと一緒におばあちゃんのお見舞い行ってきますね」
「ぽ ぽ ぽ」
「すぐ帰ってきますよぉ。どうせあと一週間はここにいるし」
「ぽ」
ショックを受けたように八尺様の口がポカッと開いた。恵実は「ん?」とパチパチ目をまばたきさせてから、八尺様の開いた下唇をプルプル弾いて遊ぶ。
すると八尺様の口がクワっと大きく開いて、恵実の手をぐわりと食べた。
「は、八尺様?」
「ぽ」
恵実が戸惑っているとまたカポっと八尺様の口が開く。恵実がそっと指を抜けば、また不意打ちのように指先を噛まれて思わず「わっ」と声を上げた。
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