第5話 あんたがそれ言います!?
「ふあ……」
しばらくして、側近君が目を覚ました。
勝利を確信しているからか、一挙一動がわざとらしいほどに優雅だ。それがいちいち癇に障るけど、ここでキレてしまっては俺の器というものが小さく見えてしまう。大人になれ俺……。
「おはよー、よく寝てたねぇ」
「はい! 間宮英二、ただいま起床いたしました!」
とはいえ目覚めからこれなのだから、どうしようもない。俺はこんなやつに負けたのだ。確かに無知の状態で戦ったとはいえ、悔しいことに変わりはない。
彼を見ていると、ふと目が合った。憎たらしいほどの笑顔を浮かべると、彼はこっちに近づいてくる。
「いやぁ、やっぱり俺のほうが強かったな」
「く……当たり前だろ」
「そうだ、素直に負けを認めるのはいいことだぞ」
そう言うと、彼は高らかに笑った。それはもう大げさなくらいに。防音設備が行き届いてなかったら隣町まで聞こえていたんじゃないかってほどに。
そこに妹ちゃんもノッてくるんだからもう大変だ。騒音のデュエットなのだ。たまったもんじゃない。ってかこれ絶対に外にまで声漏れてるよな。
「部長も見てましたか! 私の勇姿を」
「んー……」
話を振られた部長だったが、即答はしなかった。少し考えた後に、部長の小さな口が開く。
「いや、睡眠に強いも何もないでしょ」
「「あんた(あなた)がそれ言います!?」」
珍しく側近君と息が合った。
だが、本当に部長がそんなことを言っていいのか。あの部長限定とびきりイエスマンである側近君でさえこう言うんだぞ。え、この部って睡眠を研究する部だよね。いや、今はまだ同好会かってそんなことはどうでもいい!
「だってさー、自分がぐっすり眠れればいいじゃん? 競う必要はなくない?」
「一理ありますね!」
「おい」
さっきまで煽り散らかしていたくせにまた手のひら返しか。それならこれをやった意味ってのはなんなんだ。
どこかやりきれない敗北感を抱きながら、今日の部活は終了となった。
……この部を理解するにはまだレベルが足りないらしい。
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