第2話 試験

2話 試験


初日から4か月経ち、8月となった。


毎日の訓練はハッキリ言って、めちゃくちゃきつかった。


体力づくりのための基礎トレーニングの筋トレや対人戦の格闘訓練を主に行ってい。


始めの頃は筋肉痛の痛みにすごい悩まされ、様々な訓練を行っていた。


そのおかげなのか、全員たくましくなってきた。


俺も初日よりも体重も少し増えた。


また、2か月ほど前から、銃を使った射撃の訓練も行われ、本格的になってきた感じがする。


こういった訓練にはクラス基準で何かと点数がつけられ、ここの訓練所で各訓練の点数を総

合してランキング付けされている。


また、各訓練の点数もランキング付けされ、ロビーの掲示板に張り出されている。


ランキングは4クラスの上位50人のみされており、俺達Bクラスでは13人がランクインしてい

る。


その中でも2位は、初日の登山レースで負けたエヴァことエヴァ・デイビスがランクインして

いる。


俺は11位にランクインされており、Bクラスでは三番目ではある。


1~4位は四天王なんか呼ばれており、10位までの人たちはここの訓練所では神扱いされてお

り、俺はギリギリ神になれなかった。


まあ、でも十分な順位ではあるだろう。


「掲示板の前で何してんだ?速く行こうぜモモ」

 

「ああ、すまねえ。今行く」


今日は教官から指定された部屋の講堂に行くように指定されており、ベベに呼ばれ、俺は掲

示板から離れ、一緒に行くことにした。


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講堂でケンとビルと合流して4人で話していると時間となり、コンゴウ教官が入ってきた。


「全員いるな?なら、話を進めていくぞ」


そう言うと、コンゴウ教官は映像を空中に出してきた。


俗に言う最新技術の空中ディスプレイだ。


そこには"旗取り"とでかでかと書かれていた。


「今から一週間後に別のクラスと対抗戦として"旗取り"を行ってもらう。対戦するクラスは

クジの結果からDクラスとなっている。これから、一週間の訓練は行うことになるが、クラス

内での話し合いや訓練を行う時間を取るためその間に作戦を考えるように」


Dクラスとの対抗戦か、訓練目的のちょっとしたゲームって感じだな。


少し楽しそうだな。


「そして、対抗戦で勝ったクラスは商品としてケーキが支給される」


「「「ケーキ!!」」」


講堂内にいた人は全員が驚き、何かしらのリアクションをしただろう。


俺も驚いた。


ケーキなんて食べたことがない。


この中で食べたことがある人の方が少ないだろう。


それぐらいの料理がまさか食べられるなんて、これは勝たなければ。


「詳しいルールは各自に送るためしっかりと見とくように」


そう言うと、コンゴウ教官はディスプレイを操作し始めた。


すると、リングに通知が来た。


リングを操作すると空中に画面が出てきて、調べたり、連絡したりと色々できる。


リングは言うなれば現代の携帯であり、身分の証明でもある。


異世界人は魔法で変身できる者もおり、そういった対策としてこのリングが使われている。


このリングの中には個人の上方が多くあり、交通機関といった物や、中央の街に入る際など

の身分証明が必要の際に提示する必要がある。


このリングには脈を測る機能もあり、リングを取ったり、脈が無くなった際にリングの機能

がなくなる。


そのため、リングを取ることは禁止されており、事故で取れた際には中央で様々な申請を行

う必要があり、面倒らしい。


特に軍人などの戦地に行った人たちは特に厳しく、リングを失うと死人判定され、偽物と判

断されることもあるといううわさがある。


今の時代には命と同じくらい大事なものであったりする。


俺は操作して通知の内容を確認する。


内容は主に今回行う"旗取り"のルールが書かれている。


「なあなな、なんて書かれてんだ?」


ケンが俺の画面をのぞき込んできた。


それに合わせベベとビルも見てきた。


「お前らなあ、自分達のでみろよな。まったくなあ」


まあ、しゃあないな。


他二人はともかくケンは頭が少し弱いし。


「何々、まあ色々と書いてるけど、要は森の中で自分達で旗の場所を決めて、それを取り合

う。旗を取れば勝ちというシンプルなルールだな」


えーっと他には


「俺達には各クラスに一人模造品のナイフと、打つと赤外線をだす拳銃を10丁ずつ支給され

るみたいだな。それを相手に当てると、着ているスーツが反応して死亡判定することになる

。死亡判定は脱落で、すぐにエリアから出なければいけにみたいだな」


とりあえず、ルールはこんなところだな。


「なる、他にはないのか?」


「あとは、ナイフの判定が甘い時には死亡判定ではないみたいだな。その代わり、スーツに

静電気のような電流が流れるみたいだぞ」


まっ、とりあえずこんなところか。


「一通りみたな。これから昼食の時間までは初のクラス内での話し合いの時間とする。それ

とコレは厳密な"試験"でもある。今後の順位にも関わるということを忘れないように」


教官はその一言を残して補佐とともに講堂からでっていった。


という事で話し合いが始まることになるが、まったく始まらない。


話し合いの司会がいないからだろう。


誰かがいきなり司会を買ってでるなんては難しいだろう。


「始まんないな」


「まあ、いきなり前にでて話すなんて難しいだろ。さすがに」


「そうだよな、しゃあないか」


べべはそう言うと立とうとした。


「えっ、べべやんのか?」


「このまま時間が経つのはもったいないしな」


俺にはできないことをできる、ベベをすげえなと思っていると、前の席から


バンッ!!


大きな音ともに一人が立ち上がった。


そして、先ほどまで教官がいた場所まで来た。


Bクラスで一番の成績のエヴァ・デイビスだ。


「食べたいか?」


ん?


「ケーキが食べたいかぁー--?」


いきなり大声でエヴァは叫んだ。


クラス全員の頭は?で埋まっているだろう。


「食べたいのか聞いてるんだ。食べたいかぁー?」


あきらめずにもう一回大きな声で聴いてきた。


「「ぉー」」


何人か小さいが問いに対して答えた。


「声が小さい」


それでも納得しなかったらしい。


すると、


「「「おー」」」


人数も増え先ほどよりも大きくなった。


「もっと」


「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉー--」」」」」」


俺含め全員が声を出し答えた。


「なら、私についてこい」


エヴァは自身の拳を握り上に振りかざした。


それに答えるようにクラス全員が立ち上がり、


「「「「「「おぉぉぉぉぉぉぉー--」」」」」」


声をだした。


Bクラスのリーダーが決まった瞬間である。


俺はベベに顔を近づけ


「ドンマイ、ベベ」


「いや、エヴァさんがやるなら文句ないだろ。それにしてもあんな人だったんだな」


「それな、初日に話した時なんか冷たくあしらわれたのに」


確かに驚きだ。


紫色の混じったショートヘアーで目が鋭く、クール系って感じで、キツイ印象がある。


実際ケンは初日に声をかけて軽くいなされたらしい。


だが、今目の前にいるにはそんな想像とは真逆で目をキラキラさせてすごく明るい感じだ。


「とりあえず、今全員で話すとごちゃごちゃになると思うから、ランキング付けされた上位

5人に集まってほしい」


色々考えていると、進行が進んでいた。


「おっ、モモちゃん呼ばれたやん」


「ああ、じゃあまた」


俺は3人と別れ、前へと向かった。


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「とりあえず、全員お互いの事は知ってるでしょうから、自己紹介はいいでしょう」


先ほどのままエヴァが進行していく。


それぞれと連絡先を交換し、


「とりあえず、メールからルールを軽くまとめたから目を通して」


エヴァからルールについてのまとめが送られてきた。


俺が読んでいない内容のところもまとめられていた。


何々、読んでない部分はと


・一日、24時間行う


・旗の場所はそれぞれ事前に指定したエリア内できめておく。


・それぞれのクラス全員にはナイフと無線、ゼッケンが支給される。それぞれクラスの色で

統一されている。


・脱落時には無線の音声と全身への電流が流れ、すみやかに戦闘をやめる。


・脱落者は支給された物を袋にまとめその場に放置する。乱戦時には邪魔にならないように

離れてから行う。


・脱落後には無線の電源は落とされる。


・危険な攻撃の禁止

目突き、口,鼻や耳に指を引っ掛ける、噛みつき、局部への攻撃、髪を引っ張る

喉への攻撃や首絞め、崖や坂での突き飛ばし、グラウンド状態での頭へのキック

相手の後ろからの脊椎や後頭部への攻撃(ナイフや銃での攻撃はあり)

危険な角度での投げ技


・それぞれのクラスにポイントがあり、そのポイント内であらかじめ配られらた資料から食

べ物などを申請する。


・ルールを破ったものにはペナルティを課す。


なるほど、資料の画像を見る感じクラスの色でしっかりとそれぞれが区別されていて、わか

りやすいな。


無線の電源の有無もわかりやすいし、なり変わりはできなさそうだ。


まあ、そもそも4か月もありゃあ、名前はともかくクラスの奴の顔ぐらいはわかるか。


「大体目は通した?これをクラスに送ろうと思うんだけど大丈夫そう?」


特に問題はないだろう。


わかりやすくまとめられているし。


他の人もそう思っているのか誰も答えない。


「大丈夫そうね。じゃあアレン君全員に送れる?」


「ああ、問題ない」


そう言われアレンという男はリングを操作し始めた。


アレン基"リアム・アレン"は渋い感じの男で同い年には見えず、大人っぽい。


実力も高く、Bクラスではエヴァに次、全体では8位の成績である。


俺達Bクラスの兄貴的な存在で人望が厚く、クラス内の連絡先を全員分持っていてもおかしく

ない。


かくゆう俺達4人もアレンの連絡先を持っている。


「じゃあ、アレン君に任せて私たちは話を進めていきましょう」


「その前にちょっといいですか?」


一人が手を挙げエヴァに尋ね始めた。


「んっ?いいわ」


エヴァは相手に手を向けた


「いや、いつもはあまり他人と関わろうとしないじゃないですか。こういったことのまとめ

はいつもアレンさんとかベベさんとかがやっていたのにどうして今回は?」


そう、その通りだ。


今までのこういった団体の訓練は基本リアムが、たまーにベベがまとめることが多く、エヴ

ァはそう言ったことをしなかった。


また、よく訓練を一緒にするメンバー以外とは関わろうとはしてこなかった。


おそらくBクラス全員が驚いただろう、エヴァのこの行動に。


「あなたはケーキを食べたことはある?」


「えっ!いやないですけど」


「他の人は」


誰も答えなかった。


俺も食べたことがない。


俺達は生まれてから少し経って戦争が始まった。


基本的には食べ物の支給などがあったが、そんなに色々なものが支給されたわかではない。


特に甘いものなんて、砂糖、飴やキャンディーなどのお菓子がほとんどで、たまにチョコが

支給されたくらいだ。


そんな中でケーキを食べたことがある同年代などほとんどいないだろう。


「そう、食べたことないわよね。私もないは」


エヴァを拳を前に出しさらに続けた。


「だから、食べたい。大人が言うには、生クリームという白くて甘いものに覆われたフワフ

ワしたものにあの甘い苺が上に乗っている贅沢なスイーツなのよ」


ケーキの味を熱弁し始めた。


「だから、絶対に食べたいの。だから私はDクラスに勝つ。その為なら全力でやる」


目をキラキラさせてそう答えた。


「そっ、そうですか。でもまあ、理由はどうであれエヴァさんが指揮してくれるなら心強い

ですね」


男は納得したようだ。


まあ、実際この訓練所で2位の実力者が引っ張ってくれるんだ、すごい心強いだろう。


「そうだよな向こうは10位以内が3人言うけど6,7,9位だし、いけるんじゃないか」


他の人も同調してきた。


まあ、そんな簡単な話でもない。


「さあな、Dクラスは50位以内は15人で4クラス内で一番多いい。実際に測らないとわからな

いが平均は向こうのほうが上じゃないか?」


「バトラー君の言うとおりね。そんなラクにいく相手ではないと思う」


「んっ」


少し調子に乗っていた男は少し引きつった。


「でも、だからこそここで話あって行こうというわけよ。だから、頑張っていきましょう」


「はっ、はい」


そして、とりあえず5人での話が進んでいった。


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「で、どうだったんだモモ?」


昼食になり、いつものメンバーでご飯を食べていると、ベベが聞いてきた。


「何が?」


「わかっているだろう、さっきの話し合いだよ」


「あー、まあ流れとか、ポイントの使い道は大体決まったな」


「へー、結構決まってんだな」


「ああ」


その他に各々の役割も決まっており、俺は敵情視察をすることになった。


「夜までに色々調べんといけないから、お前らも色々手伝ってくれよな」


「もちろん」


「おっけ」


べべとケンはそう答え、ビルも頷いた。


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次の日の夜、エヴァは会議室を一つ借りて、今後についてで話し合いをするらしく集められ

た。


俺はそれまでに敵の50位内の人の事を中心に色々調べまとめ、会議室へと向かった。


ガチャ


中に入ってみると、既にエヴァとアレンがいた。


「じゃあ、そろったことだし始めましょう」


「他には?」


「人数が増えるとまとめるのが大変だから、この3人で色々やってくことにするわ」


「まじか」


「ええ、だからあならもまとめ役手伝ってもらうからね」


「はい」


まあ、しゃあないか、これは。


「それじゃあ、コレ俺がまとめた分」


俺は今日までにまとめた分をエヴァとアレンに送った。


「中々調べてるな。やっぱり警戒するのはガットか」


"ガット・パピヨン"は6位でDクラスでの一番の成績。


根が真面目でDクラス内では人望があり、おそらくまとめ役となるだろう。


「いや、でもそれよりこのマスティフ君の方がやばいんじゅあない?」


「俺もそう思う。ランキング自体はガットの方が上だけど、格闘訓練の成績はここじゃ今の

ところ一番だし、体格もやばい」


アレンはガットに注目しているが、俺とエヴァは"マッド・マスティフ"に注目している。


「"マッド・マスティフ"愛称は"マシュー"は伸長が190cmで体格もよくて、その天賦の才をいか

んなく発揮して一番の成績を収めている。まとめといったリーダーシップはガットの方があ

ると思うけど、最強はマッドだと思う」


「そうね。一人でごちゃごちゃにされるかもしれない」


「確かにそうだな」


そして、他にどんなのがいるのと敵の戦力を俺たちはまとめていった。


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敵の戦力をある程度まとめ、今後の流れや作戦の事も話し合っていくと会議室の使用時間が終

わりそうになった。


「まっ、とりあえず今日はこんなとこかしら」


「そうだな」


二人がそんな話をして会議が終わりそうになった。


「でも、まだ少し時間あるし。じゃあ軽く雑談でもする?なんか色々考えるの疲れたし」


雑談って。


この数日で少しエヴァのイメージが変わっていったな。


「まあ、別にいいけど。話すこと特にないぞ」


「そうだな」


アレンも同様なようだ。


「それだったら、目標とかは?」


「目標?」


「そう、ここにはある程度何かあるでしょ?それを知って親睦を深めましょう」


「目標か。俺はまあ、偉くなって中央で仕事をすることだな。その為に上位の成績で卒業し

たいな」


アレンはそう答えた。


「なるほどね。私は自分の生まれた故郷を見ること。それが一番できる場所だからココに来

た」


エヴァも答えた。


それなりの理由があって、訓練兵になったと思ったが、それが理由だったのか。


「それで、バトラー君は?」


「んー、明日を迎えることかな」


俺は少しカッコつけて答えた。


「どういうこと?」


あたりまえだが、通じなかった。


「今って、ずっと戦争やらが起こってて、この何年間今日という日が繰り返されて明日が一

生来ないみたいなんだ。だから、俺は明日を迎えたい」


ようは戦争を終わらせたいってことだ。


「なるほどな。そいつは大変だな」


「でも、それが一番だよね」


二人も俺の遠回しに言ったことの意味を理解したみたいだ。


少し恥ずかしい。


これだったら、普通に言えばよかった。


ガラガラ


俺が少し恥ずかしがっていると、扉から教官が入ってきた。


「おい、お前らもう時間だから戻れ」


時間を確認してみると、予定の時間より少し経っていた。


「わかりました」


エヴァが返事をして、俺らは会議室を後にした。






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