29話 メイドさん達事件を解決しました

「おいおい、もう片付いてんじゃねぇかよ…。」


あら?紅竜姫のみなさんかと思ったらドイルが来ましたね。その後ろから紅竜姫の皆さんと…あぁ、やっぱり衛兵じゃなく近衛ですね…。


「一応全員殺してはいませんのでご安心ください、誘拐された皆さんも無事に保護してあります。」

「奥の方に捕まっていた人達も見つけました!」


カーラも自分の仕事をしっかりこなしたようですね。それにしても認識阻害に関して言えば私でも追えるかどうかといったところでしょうか…例の子爵の後ろから来たことに気付けないとはやりますねカーラ…。


「ご協力感謝します。その様子だとお気付きですかね…?で、どちらに?」


障壁を解いたお嬢様たちの方を向くと近衛の皆さんが走って行きました。傅いて口々に無事を安堵する事とひたすら謝罪しています…。ヴィル様は苦笑いしながら窘めていますね…。


「で、ドイルはどうしてここに来たの?」


「あぁ、これに関しては国からの指名依頼と俺の個人的な用が重なってたもんでな。ギルドに着いたら姐さん達が来て事情を聴いて一緒に来たんだよ。」


ドイルは紅竜姫の皆さんを「姐さん」と呼び特に戦斧の師匠であるキリアさんを師匠と呼びます。


「そうなの。個人的な方はやっぱり…」


「今回は手掛かりがありそうだ。なんてったってあの子爵は旦那様の領の後釜だからな。」


ドイルがいつになく険しい表情で例の子爵を睨みつけます。彼はSランクとしての依頼をこなしながら国内外を飛び回ってあるモノを探しているのです。


「そう…何か手掛かりがあればいいわね…。」


「ありがとよ。てかあの近衛がすっ飛んでった先のって…。」


「見たままよ。私もマックスに言われて納得したけどよく見るとオーウェンに似てるもの。」


「だよなぁ…。出来る事なら俺自身が決着を付けたいところだがこれでアイツも終わりだ。ようやく旦那様の仇が討てた…。」


ドイルの目にうっすら涙が浮かんでいます。彼がアカデミーを中退した理由は彼を拾ってくれた貴族があの子爵の策謀で失脚、ご夫妻はそのまま亡くなられ私達より1つ年上の令嬢が行方不明となりアカデミーに居続けることが出来なくなったためです。

そして学園長の知己でもあった王都のギルドマスターが彼を預かってSランクまで育て上げたという経緯があります。そしてドイルの目的はその令嬢を探し出すこと。


さて。私達も帰るとしましょうか。



――――――――ここからマリン目線――――――――――


ドイルさん達が乗り込んできたのを確認して私達は障壁を解除した。これでやっと帰れるー。


「僕もどうやら迎えが来たようだ。マリン嬢今日はありがとう。面白い物も見させてもらったしね。僕も魔導具が好きだからいずれゆっくり語り合いましょう。」


ヴィル君がにっこり微笑んでくる。まっぶしい…イケショタの微笑みはちょっとした兵器だよ…。それにしてもさっきの会話が妙に引っかかるんだよなぁ…




『ウィンチェスターのスピンコックなんて久しぶりに見たよ』




ん!?この世界でウィンチェスター式は私が開発した最新型でそもそもコッキングって概念が浸透する前のはず。その最新型の!?

私が何かに気付いたのを察するとヴィル君がいたずらっぽく自分の口に指を当てて「しーっ」と微笑みながら。


「いずれゆっくり語り合いましょう。」


私があっけにとられていると護衛の兵士と思われる人達が走ってきた。


「でn…坊ちゃまご無事でしたか!?申し訳ありません、やはり我々が護衛に着いていれば…この失態の責任は命をもって贖わせていただきます!」


oh…なんかすごい物騒な事言ってるよ。


「気に病む事はない。私は見ての通り無事だし恐らく国家魔導士級でも抗えないであろう強力な魔導具が使われたようだ。それに今は捕まっていた皆さんの保護を優先するように。」


「「「ハッ!」」」


ヴィル君は私と話している時と打って変わって貴族モードだ。指示を出したら騎士の皆さんがすっ飛んでった。辺りを見回すとカーラが救出した他の人の護衛や従者も合流してそれぞれの無事を喜びあっている。アイラさんもお付きの人と合流できたみたいだね。


「それではみなさん、本日はお疲れかと思いますので聞き取りはまた後日とさせていただきます。お手数ではございますが連絡先をお教え願えますでしょうか?」


騎士の人たちが率先して動いて聞き取り、ドイルさんや紅竜姫の皆さんは犯人を縛り上げて護送の準備をしている。いつの間にかヴィル君もいなくなっているって事は先に引き上げたのだろう。

聞き取りを終えた人たちも騎士の護衛が着いた馬車でそれぞれ引き上げていく。


「マリン様、カーラ様今日は本当にありがとうございました。それと知らなかったとはいえ数々の非礼をどうかお許しください。」


アイラさんとお付きの人が深々と感謝と謝罪を述べてきた。


「気にしないでいいよ、それに私さっき言ったよね?あくまで私たちは当主が偉いのであって私達自身は偉くもなんともないって。それにきっと同級生になるんだから仲良くしてほしいな!」


そう言い聞かせてもまだおどおどしてるアイラさんを押し切る。


さぁ、なんかとんでもない事になったけどみんな無傷だしめでたしめでたし。お家に帰ろう!

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