23話 お嬢様とメイド見習いと受験

見学から一週間、ついに受験当日が来た。臨時講師という立場上ティアとマックスは帯同できず、アカデミーから護衛と馬車が来ることになっている。


「「行ってきまーす」」


行ってらっしゃいませとティア・ゼノさん・マーサさんに、門番をしていたマックスに気をつけてな~といつも通り軽く送り出されてアカデミーに向かう。


「よっぽどのことが無ければ大丈夫と言われてもやっぱり緊張しますねぇ…。」


カーラが珍しく緊張しているようだ。


「気にしすぎると普段の力の何割も出せなくなっちゃうからティアが真顔で試験官やってるよりは怖くないって思えばいいんじゃないかな?」


「あ…確かにそれならほとんどの事は怖くなくなりますね!受験勉強の時に目の前で見てる時の無言の圧力が凄かったです!」


よかった、いつもの調子に戻ったようだ。私はそうでもないけど確かにティアの無言の圧力凄いもんねぇ…。練習問題は結構難しめに作っていたらしくいつも通りに解くことが出来れば落ちることはないとの事。ティアの時は簡単すぎて逆に難しく考えすぎて苦労したって言ってたかな?

合格の基準は学科の成績と面接。入学条件にはある程度の魔力を持っていることが条件になるため面接の時に魔力のコントロールも見られるらしい。


「あとは緊張しすぎて魔力のコントロールをしくじらないようにしないといけませんね!」


そんな事を話していると帯同の騎士さんが


「そういえば見送りに来ていたのはティア嬢とマクスウェルかい?彼らに教えてもらっていたのならまぁ大丈夫だろう。今の上級学年からは凄く羨ましがられるだろうね。」


見学の時もそうだったけどやっぱりあの二人は有名人なんだねぇ…。


「私は小さいけど貴族家の三男でね、彼らの二年ほど先輩にあたるんだが平民枠で入学して他の貴族家の者に負けない…むしろぶっちぎった成績を叩き出したし寮の事でもかなり目立っていたからね。彼らの同級生に現王陛下のお孫様…第一王子殿下もいらっしゃったんだが何とかギリギリのところで主席の座を守ったらしい。」


あ、ティアは総合で次席って言ってたけど総合の主席は殿下なんだ。もしかして一応気を使ったのかな?


「恐らくそうだろうね。他の貴族には一切手加減してなかったようだが…。」


騎士さんも苦笑いしてるよ…。ていうかよく考えたらユーリ兄様にも手は抜かなかったんだ…。まぁ昔から知ってるしそこで抜けばすぐにわかっちゃうからしょうがないか。


「私もこういう形で受験生の護衛につく事があるが今まで見た中では君たちが一番リラックスしているようだし安心して受けてくるといい。」


騎士さんと雑談をしているとアカデミーに到着した。この人はこうやって毎回受験生の緊張を解してあげてるんだろうね。


午前の筆記試験中は特に困ることもなく自己採点だとほぼ正解していたから主席とまではいかなくても結構いいところまで食い込めるんじゃないだろうか?カーラは8割くらいといってたから割と上位に入れるかな?


午後の面接ではよくある諮問と扱える魔法の実演、とりあえず全属性の初級魔法を展開しては消すというのを見せたら目を丸くされた。発動はできるけどそれを綺麗に消すというのは結構技術が要るから当然だね…あ、こういう時はこれを言わなきゃと思っていたのが言えた!




「私何かやっちゃいましたか?」




チート系主人公のお決まりのセリフが言えたので私は満足だ。カーラもティアに仕込まれただけあって所作が綺麗だとかなり褒められけどティアの名前を出した途端試験官が苦笑いしたらしい。まぁ悪い事ではないから大丈夫だろう…多分。


無事に試験が終わり帰りの馬車に乗ると緊張していたのか眠くなってきた…。あれ…?カーラも寝てるし騎士さんも寝てる…?

もしかしてこれまずいやつなんじゃ…?


そして私は意識を手放した。

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