22話 お嬢様とメイド見習いと第二寮
え…?当時って事は在学中に建て替えたのかな?確かによく見るとなんか階ごとに壁の色が若干違うような…。
「アカデミーには職人系のコースもあるのはご存じですよね?メインはどうしても一般枠の子が多いからこちらに入る子が多いんです。それでティア達は毎年上に階を増築するという力業をやって現在のこの形になりました。」
そりゃ毎年新入生入るから部屋も足りなくなるだろうけどそこまでやる!?あー、でもユーリ兄様達が頑張っても卒業する頃にしか向こうの寮に入れなかったんだっけ?
「そうなんです。しかもここには魔物の解体場やら武器の整備場やら菜園やら洗濯場やら色んなものをこさえてさながら一つの屋敷のような感じになってます。」
「それはやっぱり平民差別が抜けなくて同等の扱いをされなかったからですか?」
カーラが質問する。
「嘆かわしい話ですけどね…先ほど話した事務方のトップだった方の差し金です。最初の頃授業のある時は本棟の食堂でご飯を食べれていましたがそれ以外はほぼ自給自足の試行錯誤だったらしいです。その名残が今もあって第二寮はほぼ自給自足です。」
なんでそこ残るの!?改善されたんなら食材とかは用意してもらえるんじゃない?
ん?まてよ…という事は自分たちでやってるのは食材の準備だけじゃなかったりする?
「察しがいいですね、第二寮生は生活の全てを自分たちでこなしています。こちらには官僚コースはいないので騎士・侍従・魔導士・職人・料理人の各コースの者がそれぞれの役割を担って生活すべてが実習と言っても過言じゃない生活を送っています。」
oh…だから「食材と建材には事欠かない」って言ってたのか…。
「確かに私達にとって卒業後はこんな生活になりますからね。私の場合はもう見習いとしてお屋敷の仕事もしていますし勉強を除けばあまり変わらないのかも?」
なるほど。もともと優秀だったらしいけどこの生活をずっと送ってればティアも超有能になって帰ってくるわけだよ…。
「あれ?ルーティ先生、こんなところまで来てどうしたんですか?」
寮生と思われる女の人が声をかけてきました。よく見ると左脚が魔導義足だ。
「こんにちわ、今度の受験生に敷地内を案内していたのよ。」
「そっかーもうそんな時期ですもんねー。こっちに来たってことはどちらかが?」
「まぁ選択できるから確実ではないけどこっちのカーラ嬢が候補といったところかしらね。あなたは4年生だったかしら?あらかじめ話しておくとティアのところであの子が直々に鍛えてる子よ。」
「え!そうなんですか!?ティア先輩から直接なんて羨ましい…。」
「ティアさんをご存じなんですか?」
「うん、私が新入生だった頃この寮にきてまだ人数も少なかったし色々教えてもらったわ。ちなみに私も侍従コースだからどこかで会うかもしれないわね。」
「そうだったんですか。その時はよろしくお願いします!」
「よろしくね。そういえばティア先輩のところという事は魔導具候のお家の方かしら?御覧の通り私も左脚でお世話になっております。」
ぺこりと頭を下げられる。ご丁寧にどうも…。私達としては世の中の発展の為にしている事だしそれが使命と思ってるからそこまで感謝されると少し照れるなぁ…
「いえ、ご存じの通りこの寮にいる者は皆平民か訳ありの貴族ですので…。その中でも私のように五体満足ではない者に生きる力を与えてくれた事は魔導具候だけではなく決して安くもない義肢の手術を受けさせてくれた各家の方には感謝してもしきれない一生かかっても返し切れない恩があるのです。」
あ、そうか…この寮の人たちはみんなティアやマックスと同じような境遇の人がほとんどなんだ…。それにしても二人もそうだけどこの人もどこか【覚悟】が決まっている感じがするなぁ…。
「あ、申し訳ありません。寮の見学にいらっしゃったのに立ち話をさせてしまって…。見れそうな部屋の準備が整うまで応接室でお待ちいただいてもよろしいですか?」
そういって応接室に案内されて待っていると紅茶を持ったさっきの先輩が入ってきた。
「どうぞ。ティア先輩には及びませんが…。」
そう言って流れるように綺麗な所作で紅茶をサーブしてくれた。
「おいしい…しかも動きが綺麗で音も全く立てない…。相当練習したんじゃないですか?」
カーラはやはりそっちに目が行くようだ。
「そうですね、聞いていらっしゃるかもしれませんが私たちは生活すべてが実習みたいなものですから。侍従は食事のサーブや掃除・洗濯、職人は建物や敷地・物品の管理、料理人は食事、魔導士は魔石や魔法で補っている物の管理、騎士は森に出て狩りや資材の調達といった具合にそれぞれが専門分野の業務を行っております。自慢じゃないですがそれが功を奏してこちらの寮生の専門科目の成績は総じて高いんですよ?」
そりゃ毎日やってりゃそうもなるよねぇ…。
準備が出来たようで寮内の案内をしてもらう。すれ違う人がみんな礼儀正しい…私達よりちょっと年上くらいなのにまるでベテランのような立ち振る舞いだ…。
私はこちらの寮に入る事はないらしいので先輩とカーラがメインで見て回ってるけど時々小声で何か話してる…のかな?その度にカーラが真剣な表情で聞いている。
見学が終わり待ち合わせ場所である本棟の食堂でティアとマックスと合流して料理を待っていると
「決めました。入学出来たら私第二寮に入ります。」
やっぱり先輩たちを見て思うところがあったのだろうか…。
「やっぱりそうなるか~。まぁある程度は入る前に俺かティアに聞けばいいし細かいところは入ってから周りに教えてもらいな~。」
ティアとマックスとルーティさんが苦笑いしてるけどこれもカーラの選択だ。私が口を挟むことじゃないけど同じ寮じゃないのはちょっと寂しいなぁ…。
「さて、ここまで見ておいて試験に落ちたとあっては笑い話にもなりませんので無理をしない程度に試験に備えましょう。ルーティ今日はありがとう、また来年からよろしくね。」
…とティアが締めてアカデミー見学は終わった。
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あとがき
とりあえずキリのいいところまで一気に書き上げました。正直試験に関しては特段面白いところもないので王都編はこれでラストにしようかと思います。
閑話を挟んで次回からはティアとマックスのアカデミー時代の話を書こうかと思います。どっちかって言うとここからがメインみたいなもんですw
そしてもう一つ小説を書き始めましたのでよろしければ読んでいっていただければと思います。そっちは正直思いついたままにろくなプロットも組まず書いているので今よりペースは遅めで短めに済まそうかと思っております。
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