20話 お嬢様とメイド見習いとアカデミー

「ちょっとティア聞いてないんだけど!?」

お嬢様とカーラが異口同音に訪ねてきます。


「あー、ごめん。もしかして行っちゃいけないヤツだった?」

ルーティは事情を知らないからしょうがありませんね…


本当は入学式でネタバラシして驚かせるつもりだったんですが…。当然ながら二人以外のバルドフェルト家の皆さんは知っています。よく考えたらあれだけの大所帯で今までよくバレなかったですね…。


「今日はその打ち合わせも兼ねて私とマックスが同行したのです。よく考えてもみてください?私はお嬢様付なので当然として実力はあるとはいえ護衛はマックスより適任がいると思いませんか?」


「確かに…。マックスの隊は割と若い人多いし護衛についてくるならもう少しベテランの小隊がつくもんね…。」


マックスの隊は王都に来たこともない若手が多いのでたまに連れてきていざという時に緊張しないよう慣らすという名目でもありましたが本当の目的はマックスがアカデミーに打ち合わせにくるというのが本命です。


「私はマックスと学園長のところに挨拶してきますのでルーティにあとは任せてもいいかしら?」


「いいわよ。今日は二人が最後だしそう来ると思って交代の受付がそろそろ来るはずだから。」


マックスには学園長室に直接来るようにことづけを頼んで私は先に向かいましょうか。


「それではお嬢様とカーラ、また後程。」


おそらく昼頃になるのでルーティに食堂で待ち合わせという事を伝えて私は学園長室へ。




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~マリン目線~


「まったくティアったら!ほんとに入学式まで知らなかったら恥ずかしい目に遭うところだったわ!」


今は私達だけだからいいけど入学式で来賓やらいろんな人達の前でカーラと二人で叫ぶところだったよ…。それにしても成績といい今回の臨時講師といいティアってホント優秀なのね…。


「発端はマリン嬢のお付きで在学中は王都にいるであろうと聞いた上層部がそれなら臨時講師させてみてもいいんじゃないか?というのが発端だったようです。学園長もバルドフェルト閣下をご存じでしたので打診してみたところ二つ返事で閣下がOKを出したと聞いています。」


「お嬢様は関わる項目がないからいいかもしれませんが私はモロに侍従コースなので生きた心地がしないのですが…」


そういえばそうだね。私は基本的に魔導士コースで選択も魔導具を中心に取るつもりだからティアともマックスとも会う機会は少ないけどカーラはコースそのものが被ってる。


「そこは安心していいですよ。ティアは上の方の学年を担当する予定なのでしばらくはお二人とカチ遭うことはないです。流石に成績優秀者で講師といえど身内の授業を受け持つのはあらぬ誤解を招きますので…。」


さすがにそうだよね。でも臨時講師ってことは…


「はい、もしかすると授業のアシスタント的な感じで関わる可能性は十分にありますね。その際は成績を付けるメインの講師が別にいるというのが条件ですが私の授業で手伝ってもらうつもりです。ちなみに私は一年生の担当になるので気は抜けないと思いますよ♪」


マジか…。他の先生なら少し手を抜いてもいいかと思ったけどティアがいるなら手は抜けないね…。



そんなことを言いながら当日の受付場所・受験教室の場所の確認、当日の流れを説明してもらった。


「まだ待ち合わせまで時間があるので敷地内を見て回りますか?」


それはいいね、満場一致で承諾。


「うーん…じゃあどこから回ろうかしら…。とりあえず遠い順から行くと寮からかしらね?」


お、それはちょっと気になってた。なんせ5年間の大半を過ごす場所だからねぇ。いくら収納鞄があるって言っても必要なものとか確認しておくのは大事。


「在学中は整理整頓も学ぶために生徒の収納鞄の寮での使用は禁止されております。まぁあまり出回ってないモノですしよっぽどの規格外でもない限りは収納力はあまりありませんしね。私でさえちょっとした部屋くらいしか入りませんし。」


超絶規格外でごめんなさい…カーラの視線が痛いけど私の容量は黙っておこう…。そうなると尚更見ておかなきゃ。


「あとマリン嬢は第一寮の固定ですがカーラ嬢は第一・第二寮のどちらかを選べます。」


「そうなんですか?ここでこの話をするのもアレなんですが普通選べるのって貴族の方々では?」


普通はそうだよね。そういえば王都に着いた時にマックスがそんな事言ってたなぁ。


「はい。今でこそ【第二寮】と呼ばれておりますが私達が入学した当時は【平民寮】と呼ばれておりました。私達が最高学年に上がった年…つまり全学年に一般生徒がいる状況になってからそう呼ばれるようになりました。」


あれ?確か在校生の扱いに身分の差はないんだよね?


「そうですね。しかしどうしてもそういった人はいるもので私たちが入学した時の事務方のトップがバリバリの貴族主義の方でして…。」


あー、なるほど。表向きはそうなってるけど制度が変わった直後だしそういう人も少なからずいたって事ね…。


「講師・事務問わず当時で半々と言ったところでしょうか…。それで教員宿舎として使われていた二階建ての古い建物をティアやマックスといった一般枠の生徒にあてがったのです。一緒に入学してきたユーリ卿をはじめとした自分の家の者がそういった扱いを受けることに納得がいかなかった数人が在学中に待遇の改善を成し遂げたのです。ちなみにその事務方のトップは半年後にクビにされ南部領に帰ったと聞いています。」


南部領はバリバリの貴族主義の人が多いって話だからね…。あれ?でも半年でそうなったって事は第二寮に住まなくても良くなったんじゃ?


「当時の第二寮入居生徒は30人ほど、第一寮の定員もカツカツだったというのもありますが、皆ここでいいと言って聞かなかったのです。」


ほえー、ティア達にしては珍しく意固地になっちゃったのかな?


「まぁ行ってみればなんとなくわかりますよ。あの寮の子たちはなんというか…鬼気迫るものがありますから。」


とルーティ先生は苦笑いしている。そんな学校以外の生活で鬼気迫る生活ってどんな生活してるの…?とアカデミーの本棟を抜けグラウンドを大きく迂回して歩いていくと第一寮が見えてきた。ほんとにここの敷地って広いなぁ…


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